ニッカポッカでランウェイを歩く。職人がモデルの「作業服のファッションショー」

子連れママが作業服専門店に行く時代

若年層の建設業界への就職希望者は、減少傾向が続いている。建設業界の地味なイメージ、もっと言えば「キタナい、コワい」というイメージが根強くあることが一因となっているのは間違いない。

しかし、業界全体としてここ2~3年で作業服にファッション性が取り入れられ、作業服はおしゃれなデザインへと進化している。子連れママが作業服専門店に行く時代だ。イマドキのワークウェアをカッコよく着こなすのは、これからの職人の使命の一つと言えるだろう。

業界全体で作業服をスタイリッシュに着こなし、建設業界へのイメージを変えて、若者や女性にアピールできる。もともと機能性に優れた作業服は、独特の機能美 を備えることができる。

「カッコいいから入りたい!」と、若者があこがれる業界に変えていくことで、労働力不足の建設業界の未来を切り拓くことが可能だ。その発信の一つとして、あるイベントが企画された。

このほど、大阪市の花博記念公園鶴見緑地で開催された「技フェスタ」(主催:一般社団法人大阪府建団連)のメインイベント「作業服のファッションショー」だ。

ランウェイを歩くのはモデルではなくプロの職人

作業服メーカーや販売会社が、建設業界の内外に向けてアピールするために、厳選した作業服を用意した。モデルをつとめるのは、業界志望の高校生や建設業界の現役若手社員たちだ。

続いて、ヘルメット女子が登場した。業界のアイテムとして、基本中の基本であるヘルメットを手にしているのがポイントだ。

ポージングの後は、ステージを下りてランウェイをウォーキング。ランウェイでポーズをとると会場が熱気をおびる。ポージングだけではなくウォーキングの練習もがんばった成果だ。作業服を通して、建設業界の魅力を伝えたいという熱い思いが伝わってくる。



街着に使い回したいおしゃれ感

素材へのこだわり、現場でおしゃれに、普段着としても使い回したいクオリティ。アップテンポのロックミュージックをBGM に、MC がモデルと作業服について、大阪らしい、笑いもまじえたハイテンションで紹介していく。

これは多ポケット、いわゆる「着るカバン」系だ。ポケットの中から次々とモノを取り出して見せる。ポケットは11 ヵ所もあった。タブレット端末まで出てきて、会場からは感嘆の声があがる。

年々上がってくる気温。熱中症のリスクは、場合によっては命の危険にもつながりかねない。まだまだ暑い令和1 年の9 月。猛暑下の現場で多く採用されている電動ファン付きウェアが登場した。作業服に扇風機を内蔵させ、作業服の中を風が駆け巡り、気化熱が涼しくするという逸品だ。

モデル本人のインタビューでは「とにかく驚きの涼しさ」ということだった。「もう水道水をがぶ飲みしなくていいんだ!」という、現場系男子のよろこびの声が聞こえてきそうだ。

一般の方に向けて、ニッカーボッカーズの基本的な特長の紹介もあった。「裾が邪魔にならない」「足を動かしやすい」「バランスが取りやすい」などの説明を聞いて、来場者が頷いていた。

やる気アップで、作業効率もアップ?

会場では「着てみたい」「仕事がはかどりそう」と、建設業界内外を問わず、評判上々の声が聞かれた。手に職をつけたモノづくりの職人が、若者にとってのあこがれの職業になるための取り組みの一つ。作業服のファッション性は、大きな要素かもしれない。「暑い時は涼しく」「寒い時は暖かく」「危険から身を守る」に加えて「カッコよく」がこれからの作業服の必要条件だ。

若い職人だけではなく、いぶし銀のダンディも、職歴50 年の匠も、一人ひとりがスタイリッシュにキメるべき時代だ。本人もやる気がわいて、作業効率もアップするかもしれない。作業服のファッション性、機能性を通じて「働き方改革」にもつながる。華やかなステージの向こうに建設業界の明るい未来が見えた。

そして、やはり印象的なのは人だ。若い職人たちのステージ上のさわやかな笑顔が、「キタない、コワい」が過去のイメージであることを雄弁に物語っていたことを付け加えたい。


お母さんに「建設業界はコワいから行ったらあかん」と言われないように

一般社団法人大阪府建団連 雇用推進研究会委員長/南晃工業株式会社代表取締役
一貫坂彰氏

ファッションショーを主催した大阪府建団連の一貫坂さんに話を聞いた。

――ファッションショーの目的は?

一貫坂 建築専門業である左官とか大工とか鉄筋とか、そういう職人さんの入職促進です。『技フェスタ』は、さまざまな職種が集まって、職人の技を体験していただくイベントです。

昨年から、メインイベントとしてファッションショーを始めて、好評なので引き続き開催しました。

――観客にはお子さんも多い。それも狙いの一つだったとか?

一貫坂 子どもたちに、楽しんでもらいたいですね。少子高齢化で、若い方が減少しています。この子どもたちが大きくなったときに、土木・建築は面白い、モノづくりは面白いと、入職してもらえるといいなと思っています。

それと、ご両親ですね。就職のときに、子どもさんが建設業界に行きたいと言ってもご両親、とくにお母さんが『建設業界は危ないから、コワいから行ったらあかん』とか(笑)。そういう意味で、家族で、お母さんも一緒に来てもらうことで、現場の職人さんたちの雰囲気も感じとってもらって、安心して建設業界に来てもらえるように
したいです。

――ファッションショーは続けますか?

一貫坂 最近は現場の職人さんの仕事というのが、仮囲いの中なので見えないでしょう。私たちが子どもの頃は、自由に現場の中に入れました。いまは、中で何をやっているかが分からない。だからこういう場所で、職人の技を体験したり、ファッションショーを見たりすることで、まず興味を持ってもらうことが大切だと思います。

次世代を担う若者が建設業界に興味を持ち、入職してくれることを期待しています。ファッションショーは好評ですし、若い子たちが楽しみながら、一生懸命に頑張ってくれていますから、続けていきたいと思います。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
「短パンで現場作業」オシャレ化が止まらない作業服の最新事情
「ワークウエア=作業服」ではない。 ミズノのスポーツテクノロジーは労働環境はどう変えるか?
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
「作業着がダサい!土木技術者は見た目も大事」四国地方整備局の女性職員がここまで激白
「杭穴に落ちた新人現場監督」をクローラクレーンで救出する画期的な方法
「空調服」を発明した男、市ヶ谷弘司
関西をベースに広告コピー、取材記事、農家レポートなどさまざまな原稿を執筆しています。ギターはスケールに挑戦中です。
モバイルバージョンを終了