形骸化する生コンの受入検査。日本人の品質意識は”アフリカ以下”

量が少なければ、受入検査をしなくていいのか?

これで”天下のスーパーゼネコンです”とよく言えるな!と思う出来事があった。

私が今担当しているプラント現場での、コンクリート打設の際の受け入れ検査のことだ。

一週間程前に打設した擁壁のベースの上に、立ち上がりコンクリートを打つ。量的には20m3程で、大した量じゃない。

だが、生コン車が来てポンプ車に近接し、先行モルタルをポンプ車に入れ、何の躊躇もなくそのままアジテータートラックから生コンをポンプ車の注入口に入れようとしたのだ。

「ちょっと待て!受け入れ検査をやらなきゃ駄目だろ!」

と私は言った。すると、

「先週の続きで量的には20m3と少ないし、試験は必要ないと思って・・・」

などというふざけた返事が、下請けゼネコンの人間から返って来た。

すぐに元請けゼネコンの担当者に電話したが、同じような返事が返って来た。

「50m3に一回の検査と決まってるんで、先週と今週足して40m3弱。まだ50m3まで行ってないのでやらない」と元請けゼネコンは言い張った。

「先週打った生コンと今日これから打設する生コンは全く別物でしょ? それなのに何故受け入れ検査をやらないんですか?」と聞いても、「これが、ここの現場のやり方だから」と言う。「その方法でいい」と今、私が在籍しているプラント会社の建築担当の人間も言っているという。

以前のコンクリート受け入れ検査の記録を見ても、色々な数値が土木の基準だったり建築の基準だったり、検査の回数や基準がおかしいなとは感じていた。そもそも50m3とあるが、厳密には50m3以内毎に一回と解釈されるはずだ。ウチの建築担当者が、その辺を曖昧なままにして工事が進んできたのは見て取れる。

だが、建築土木を請け負っているスーパーゼネコンと下請けゼネコンの両方の人間が、一応プロであるべき人間が、揃いも揃って何も思わないのだろうか?


日本の品質管理の姿勢は、アフリカ以下

実際は、必要な圧縮強度はまず心配なく確保されるだろう。だから、多少のことは結果オーライなんだよと言う人もいると思う。

だが、それは自分たち施工管理者のミスをカバーしてくれるしっかりした生コンプラントがあるから言えることだ。

もしプラントが間違って生コンの配合を間違え、万一にも強度が出なかったら、「全部プラントの責任だ!」と全員が全員、言うだろう。

確かに、受け入れの段階では圧縮強度なんて分からない。だが、ミスを少しでも防ぐために、施工管理者が受け入れ検査で圧縮強度以外の要素をチェックしてるワケだ。より確実性を高めるために、それぞれの立場で、検査や確認を一つ一つ積み重ねていくのだ。

何も建設現場の話に限ったことじゃない。どんな仕事でもそうだ。何事も小さなことの積み重ねだと思う気持ちがおざなりにされているから、こんな簡単なことでさえ疑問に思わないのだろう。

あえてハッキリ言うが、品質が保たれているかチェックする姿勢は、アフリカの国々よりも低い。日本の現場は「どうせ、大丈夫」と安心しきって、やることが形骸化している。

結果オーライではなく、毎回毎回、何のために検査、試験をしているかを、日本の施工管理者は改めて認識すべきだ。


当たり前のことを当たり前にやるのは非常識か?

私自身、コンクリートの圧縮強度が出ないなんてことは、日本で仕事をしていた時は考えもしなかった。

海外で痛い目に遭ったからこそ、強度が出ない場面に遭遇したからこそ、あり得ることなんだと思い知った。

強度が出ない原因を突き止めるために、セメント工場まで行き、どんな原料を使って、どう保存し、どの位の鮮度で出荷しているのか、工場内での試験の状況を視察した。

砂は、採取している河からすくって3つの試験場に持ち込んだが、肝心な塩化物の結果が3つともかけ離れた数値で、参考にすらならなかった。砕石の成分分析結果もバラバラだった。

水は、その国で一番信頼できる調査機関に依頼したが、受付の男に「そんな試験結果は、金さえ渡せばどうにでもなるさ」とウインクされたこともある。

色々な組み合わせを考え、練り、潰しを繰り返し、大きな原因がセメントの鮮度だと分かるまで2カ月かかった。

また、圧縮強度試験をする機械そのものが本当に正しい数値を示しているのか疑がわしいため、潰しのために採取する供試体は強度が出ないことを考えて、その都度15本造った。

「4週圧縮強度が出ない場合は、最長91日(13週)強度試験までは圧縮試験が認められる」など、日本で仕事をする限り、まず見ることさえ無いような資料を探したりもした。

91日が過ぎたら、残るは現場からのコア抜き採取後の潰しとなり、万一それが駄目なら解体となる。当時の最長は70日だ。10週でやっと圧縮強度が出たワケだ。

あの時のラボでの光景は忘れられない。もうこれで駄目だったら、残りワンセットしか供試体が残っていなかった。

現地のサブコンは、盛んにシュミットハンマー試験を主張したが、日本の基準では圧縮強度試験の結果としては 認められていない。あくまで、参考程度だ。

そんな体験をしたからこそ、当たり前のことを当たり前にやる重要性が身体に染みついている。

だから、少しでも不具合のないようにと思って検査するのだが、それを日本人の施工管理者にそのまま要求するのはオカシイことなのだろうか?

いい加減だと感じる私のほうが、常識から外れてるのだろうか?

ピックアップコメント

>今担当しているプラント現場での、コンクリート一体筆者の立ち位置が曖昧でよく分からない。>厳密には50m3以内毎に一回と解釈されるはずだ社内規定?赤本?緑本?50m3?解釈とかはずだとか、そんな分かりにくいか?特記にどの基準で管理するか規定してあるのに確認してないのか筆者。まれに良くいるタイプの、俺の時はああだった。前の現場ではこうだった。と、論拠も示せない適当な監理者の台詞に読めてしまう。問題提起したら部下が細部を詰めてくれるのは大現場の大所長が現役の時だけですよ?

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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