建コン業界を志望する就活生たちへ
新型コロナウイルス感染症が未だ収束する見通しが立たない中、一般社団法人建設コンサルタンツ協会の若手の会(発起人代表:伊藤昌明(株式会社オリエンタルコンサルタンツ))では、3月10日、13日の2日間、建コン業界を志望する就活生向けに「建コン業界オンライン就活セミナー」を緊急開催した。
就職活動がスタートしたばかりのこの時期、不安いっぱいな就活生にとって、さらに拍車をかけるように各種合同説明会は中止、企業主催の説明会はWEBに切り替え。就活生は、足りない情報を収集するのが非常に難しい事態になっている。
そんな中、若手の会メンバーは、「就活生の不安を少しでも和らげるために何かできることはないか」、と自らの繁忙期を顧みず立ち上がった。
就活生のために建コン業界は何ができるか?
2月27日(木)
2月26日に、内閣総理大臣から新型コロナウイルスの感染拡大防止として、今後2週間(~3月15日)が極めて重要な時期であり、そのために小中高校の一斉休校、大規模イベントを中止するなどの発言があった翌日のことだ。
建コン企業で働く有志100名が参加するオンラインサロン建コンアップデート研究所で、こんなコメントが飛び交っていた。
- 合同説明会がどんどん中止になっているらしい
- うちの会社説明会はすべてWEBに切り替わった
- Twitterを見ていると就活生が不安になっているみたい などなど。
2月29日(土)
とある一人が、「就活生のためにも何かできないかな」と言い出した。
すると、「ZOOMとかSKYPEを使えば、人が集まらずに就活セミナーできるよね」→「確かに」→「じゃあ、ちょっと企画を考えよう」→「この時期にやることが増えちゃうけど、就活生のためにやりましょう」となり、同日「オンライン就活セミナー企画」の特設チャンネルが立ちあがり、本格的に議論をスタートした。
企画構想中の主なやりとりはこんな感じ。
- 就活生にとっては、志望する業界や企業の社員と交流する機会が著しく減っている。これは入社後のミスマッチを誘発することにもなりかねない。
- 企業主催の説明会ではないので、学生と社会人のどちらがマウントとることもなく駆け引きなし。ありのままの素をさらけ出す場づくりをしたい。
- 企業側にとっては「毎年ある新卒採用の中の1年」であっても、就活生にとっては「人生1度きりの就活」。社会人として、自分たちができることをやろう。
圧倒的当事者意識で開催まで爆速
若手の会では、これまでに社会人と学生の交流イベントJOBカフェを2回開催してきた。今回のセミナーは、オンライン版JOBカフェのイメージで企画を練ることができた。
そのため、企画から開催まで爆速で進んでいった。その間わずか10日。社会人にとっては繁忙期真っただ中。だけど、「就活生が困っている、何かしてあげたい」と、それだけの理由でみんなが動く。改めてこの組織の推進力には脱帽する。
3月1日(日)
- 企画提案書が完成
3月2日(月)
- 建コン協会内のオーソライズを得る
- 各メディアへプレスリリース
- SNS、メルマガ等で公募をスタート
3月5日(木)
- リハーサル
3月10日(火)
- セミナー(1日目):学生43名、社会人14名が参加
3月13日(金)
- セミナー(2日目):学生35名、社会人14名が参加
就活セミナーのアイキャッチ
全国29大学から78名の学生が参加!
2日間のセミナーでは、学生は全国29大学から延べ78名が参加。就活生が8割、その他1~2年生が2割。社会人は大手企業、地方中小企業、海外(シドニー)から延べ28名が参加。技術部門もハード系、ソフト系、人事まで幅広い。これだけの建コン企業の社会人が一堂に集まった就活セミナーはこれまでになかったのではないか。
ZOOMでのオンライン会議の様子
ZOOM画面を見ればと分かるように、50名を超える人数でのオンライン会議は圧巻。
若手の会イベントではZOOMでのオンライン会議は初めての試みだったが、音声は鮮明だし画面もカクカクすることなくストレスフリー。今後、オンラインでのイベント開催も選択肢に加えられそうだ。
セミナーは、以下のプログラムの通り進められた。
- 18:00~18:15:建コン若手1200人アンケートを元に働くリアルのプレゼン
- 18:15~18:30:社会人の自己紹介
- 18:30~19:00:学生の事前質問に社会人が回答するパネルディスカッション
- 19:00~19:30:チャットのQ&Aと、フリートーク
学生からの質問は多岐にわたったが、就業環境に関するものが多かった。やはり建コンの就業環境の実態が気にかかるようだ。
事前アンケートでの土木就活生の会社選びの基準
中でも、一番盛り上がったやりとりは、建コン業界で求められる人材像について。自分が建コンに適しているのかを決めるポイントだという。
学生A ぶっちゃけ、繁忙期3月の残業時間はどの程度ですか?
社会人A うちの会社は22時に強制的にPCがシャットダウンするので、繁忙期の時期でも22時には絶対に帰っている。
学生A 建コン業界は就業環境が劣悪とよく聞くのですが、最近の働き方改革で状況は変わっていますか?
社会人A 5年前に比べると確実に改善されている。ノー残業デーは当たり前。時間管理も徹底されており計画時間をオーバーしそうになると強制帰社なんてこともある。
学生A コンサルタントとして成長するための支援制度はどんなものがありますか?
社会人A 技術士の資格取得は、マンツーマンで指導者をつけて論文の書き方や面接のやり方を徹底的に指導する制度がある。試験直前になると定時時間の一部を勉強時間に充てることもできる。
社会人A 建コン企業の経営資源は社員一人ひとり。なので、技術力向上、社員の成長には投資していかないといけない。どんな取り組みがあるのか、就活でチェックするのは良い。
学生A 海外業務の魅力は何ですか?
社会人A 海外の特に途上国の仕事は、国内では経験できない国をあげてのビッグプロジェクトに携わることができる。その経験が技術者としての成長につながるし、自分ならではの強みにもなる。まずは一度経験してみて、自分に合うのは合わないのかを判断してほしい。
学生A 会社の中で活躍している人ってどんな人ですか?
社会人A 仕事を楽しんでいる人。受け身でなく自分はこれをやりたいと言っている人はモチベーション高く仕事をしている。
学生B では、どんな人が建コンに向いていますか?
社会人B 自己研鑽し続ける人。技術力に拠って立つ職業なので技術を追求するスタンスは不可欠。それが苦手な人は建コンで幸せに働けないかもしれない。
社会人C 現状維持でよいと甘んじているような人は建コンに来ちゃダメかも。
社会人D それを否定してしまっていいのか。ダイバーシティにならないのではないか。
社会人E 「顧客から言われた通りやりました」は職業上アウト。こんな案もありますよという提案をしないといけない。
社会人F コンサルとしては「自らの技術力でより良いものをつくる」という軸は絶対条件。その上で、働き方の価値観とか、家庭の事情とかで多様性がある状態がダイバーシティ。軸はぶらしてはいけない。
学生B すとんと腹落ちできました。
参加学生からの高評価がなにより有難かった
セミナー後のアンケート結果を見ると、参加した学生全員が「参加して良かった」との評価であった(5段階評価のうち「とても良かった」9割、「良かった」1割)。これはホントにうれしかった。
参加した学生の感想は、以下の通りだ。
- 実際に企業を訪ねる会社説明会よりも、大分リアルな話が聞けた。
- 本当にフラットな雰囲気で、建設コンサルタント業界のことを知ることができた。
- 地方コンサルから大手まで様々な意見を聞くことができた。
- 会議の途中のような、気軽さがあった。
- 会社説明会の少し話しづらい雰囲気ではなく、社会人の方もかなりオープンに話していた。
- 複数の企業に勤める方々の雰囲気を知ることができた。皆さまの顔つきや表情から本当にありのままの意見、現状をお話しいただけたように感じられた。
「フラット」「リアル」「フィールフリー」なドボク就活を
今回のセミナーを通して、採用担当していた時代、通常の会社説明会や面接では知ることのなかった、就活生の偽らざる本音の悩みや不安、会社側への期待を知ることができた。
そこから見えてきたものは、今後のドボク就活の在り方を再定義する上で非常に有益な情報だった。
- フラット:学生と会社はフラットな関係である
学生と会社の関係は、一方通行の「選考」ではなく、双方向の「マッチング」のスタンスで、常にフラットな関係である。 - リアル:飾らないリアルな情報を伝える
光の部分だけにフォーカスしたような会社がコントロールした情報ではなく、闇の部分も含めた飾らないリアルな情報を提供する。 - フィールフリー:だれもが気軽にアクセスできる
オンライン・オフラインを効果的に使うことで、だれもが時間的・場所的・金銭的制約を受けず、気軽に情報にアクセスでき、選考の場に参画できる。
いかがだろうか。
このことに異議を唱える人は多くないのではないか。むしろ、「本来、就活ってこうあるべきだよね」と納得できるのではないか。
では、なぜ今の就活ではこのことができていないのか。それは、就活の目的が入社すること、つまり「就活=入社」になっていることが要因ではないかと思う。つまり、入社することが目的化すると、必然的に採用人数が数値目標となり、人事担当者はその目標達成のためにやっきになる。
すると、どうしても会社目線での「選考」スタンスになり、会社の光の部分を強調してPRしてしまう。学生側も、入社するために本心を偽りごまかしてしまう。結果、無事入社したものの、「思っていた会社と違った。やりたい仕事と違った」とミスマッチがおき早期退職してしまう。このような実態は現状よくある。
では、「就活=幸せに働くこと」と定義してはどうか。学生と会社は双方向の「マッチング」スタンスで、常にフラットな関係で就活できる。フラットな関係が築けると、心理的安全性が保たれお互いが本心をありのまま伝えることができる。
闇の部分も含めて会社のリアルを知った学生は、入社後もミスマッチなく、モチベーション高く幸せに働くことができる。そして、だれもがどこにいても気軽に選考の場に参画でき、平等に門戸が開かれている。
私は、こんなドボク就活を実現したい。