NIPPOドボジョシリーズ第1弾【入社6年目 寄川さん】
道路舗装のパイオニアである株式会社NIPPO(本社:東京都中央区)には、入社2年目〜6年目のドボジョ3名が施工管理する現場がある。新東名6車線化事業(御殿場JCT〜浜松いなさJCT)の現場だ。
なぜ3名ものドボジョが一つの現場に詰めているのかNIPPOの意図はわからないが、彼女たちにとって、舗装工事、施工管理という仕事がどう映っているのか、その魅力、やりがいについてどう語るのかは、ぜひ知りたいところだ。
ということで、NIPPOドボジョシリーズ第1弾として、入社6年目の寄川あまねさんにいろいろ聞いてきた。
現場がわかっていないと、戦えない
――NIPPOに入社した理由は?
寄川さん もともと都市計画に興味があって大学で土木を学んでいました。ただ、大学に入ってから、「日本で新たに都市計画を行う場所はもうないな」と考えるようになって、建設系の会社に就職するつもりでいました。
就活は、「現場施工をやりたい」ということで、ゼネコンを中心に行っていました。公務員やコンサルは見ていなかったです。NIPPOに入社したのは、現場施工ができるということと、構造物が最終的に仕上がったところを見ることができると思ったからです。
NIPPOは、スーパーゼネコンに比べると、社員数が少ないですし、当時は土木職での総合職の女性もいませんでした。そういう会社であれば、「自分がやりたいことをやらせてもらえる」と考えて、NIPPOに決めたわけです。
――会社に女性がいないから、逆に「やりたいことができる」と考えたんですか。
寄川さん そうです。女性の先輩が10名いたとすると、「その10名がそうだから、君もそうだよね」みたいな妙なククリ方をされて、誰かのやり方に合わせることになると、「それはツライだろうな」という考えがありました。会社に女性が私しかいなければ、私のやり方に会社が合せてくれるんじゃないかと考えたわけです。
――「現場に出たい」と考えていたのですね。
寄川さん 土木の仕事は、現場が最優先されると考えていたので、まずは現場を経験したいという思いがありました。現場仕事に転勤はつきものなので、それは仕方ないかなと。現場や転勤がイヤになったら、内勤に変えてもらえば良いぐらいに考えていました。
現場から内勤に変わることはできますが、内勤から現場に変わるのは難しいと思っていました。現場経験があれば、あとあと仕事のツブシがきくと聞いていたので。現場がわかっていないと、「仕事で戦えない」ので。
――「戦う」ですか?
寄川さん そうです。「他の人と同じ土俵には立てない」という意味です。
――「実際にモノができあがるのを自分の目で見たい」という思いはありましたか?
寄川さん それもありました。大学ではコンクリートの維持修繕に関する研究をしていたのですが、正直興味が持てなかったんです(笑)。仕事では、新しく何かをつくることしたいと思っていました。
印象に残るのは、一番苦労した上信越の現場
――NIPPOでは、どのような現場を経験してきたのですか?
寄川さん 最初に配属された現場は、愛知県内の新東名高速の新設工事の現場でした。舗装ではなく、付帯工事を担当しましたほか、書類づくりのお手伝いも経験しました。完了まで見届けられたのが、良かったです。
2年目は、福島県内にある自動車部品関連企業のテストコースの新設の現場に行きました。民間の工事は、規格値がないような工事なのですが、NIPPOの技術的なメンツがかかっているような現場でした。
高速道路などの工事に比べ、技術部門の人とか、設計や機械の人とか、会社からたくさん現場に来ていました。「現場は工事している人間が回すんだ」と思っていましたが、現場以外の方々に助けられた現場でしたね。こちらも工事終了までいました。ただ、9ヶ月ほどしかいなかったこともあって、私には吸収しきれないほど情報量が多い現場だったという印象です。
3年目は、青森県内の防衛関連施設等の滑走路工事の現場でした。米軍発注の工事で、24時間突貫工事の現場で、米軍基地内のまちなかの舗装工事もやりました。米軍の工事なので、テストに受からないと滑走路に入れないとか、車両をチェックされたりとか、工具は武器扱いになる可能性があるので、必要最小限の工具しか持ち込めないとか、いろいろな制約がありました。
あと、図面が英語なのは戸惑いましたね。通訳さんが付くのですが、発注者とのやりとりはメンドくさかったです。あと、アラートが鳴ると、工事を止めて待機しなければなりませんでした。しょっちゅうアラートが鳴ったので、大変でした。積雪する時期は施工できない決まりになっていましたので、氷点下の極寒の中で作業するということは基本的にありませんでした。レアな工事なので、関わることができてラッキーでした。
4年目は、新潟県内の上信越自動車道の4車線化工事です。コンクリート舗装工事を担当しました。車両が入りにくかったり、雪が降るので工期的・品質的に厳しかったりなど施工条件が悪かったので、頭を使って、苦労した現場です。一番思い入れが強く、印象の残っている現場です。
――バラエティに富んだ現場を経験してきてますね。
寄川さん 入社後、新入社員研修の面談で「いろいろな現場を経験したい」と言ったのですが、本当にいろいろな現場を経験させてもらえました(笑)。
マネジメントの仕事は「メッチャ抵抗あった」
――今の現場の担当は?
寄川さん 今の東名高速の6車線化工事の現場では、コンクリート舗装とアスファルト舗装の現場を担当しています。自分が直接やるというよりは、男の子と女の子の部下2名をフォローするのが私の役割で、人を育てたり、使ったりしながら、工事を進めています。
これまでの仕事とは、かなり変わりましたね。仕事のレベルが上ったと感じています。仕事の中身が変わったことに対して、最初はメッチャ抵抗ありました(笑)。楽しくなかったです。1年ぐらい経って、やっとあきらめがついてきた感じです(笑)。マネジメントの部分も含めて、自分がこの現場をやったと思うようにしたら、苦しくなくなりましたね。
現場で部下の男の子と打ち合わせする寄川さん(左)
――2名の部下には、どのようなスタンスで臨んでいますか?
寄川さん 若い社員だと、作業員さんが言うことをきいてくれないこともあると思います。とくに女性の場合は、その傾向が強いと思っています。
ちゃんと言うことを聞いてもらうには、やっぱりちゃんと準備をして、理論武装するしかないと思います。目的や理由を理解した上で、施工を進められるようにしたいと思っています。また、工事の知識とは別ですが、「力で押せない場合は、相手をおだてるのも作戦の一つだよ」というような話もしています。
――今の事務所には3名のドボジョがいますが、女子会やったりしているんですか?
寄川さん 女子3人でランチに行ったりしています。なんとか近場でオシャレな店を見つけて(笑)。
結婚しなければ、ずっと現場を突っ走る覚悟です(笑)
――NIPPOの働きやすさはどうですか?
寄川さん 働き方改革がスタートしてから、NIPPOもかなり働きやすくなったという実感があります。結婚や出産などの将来のライフイベントが見えやすくなったところがあります。
――女性の働きやすさに関して、現場で気になったことはありますか。
寄川さん ハード面については、ほぼ問題がなくなっていると思います。ただ、受け入れてくれる事務所の中には、扱いの仕方がわからず距離を取られてしまったこともあります。また、「当然いやだと思うこと」の認識がずれているため、「イヤだな」と思っても、なかなか周りに口に出して言えないこともあります。
双方どちらも遠慮してしまって、会社・事務所としても、何が問題なのか気づきにくくなります。なので私は、会社に対してガンガン言ってますね。会社からは「ありがたい」と言われています。
――今後のキャリアアップについて、どうお考えですか?
寄川さん 同じような働き方をしている先輩の女性がいないので、社内での将来的なキャリアパスが見えづらい部分はあります。「私はこういうふうに働きたい」というものがあったとしても、会社に受け入れてもらえるかどうかはそのときになってみないとわからないので、不安はありますね。
仕事は、結果で評価される思いますが、働いた時間や能力に影響を受けるので、結婚や出産によって、自分のキャリアがとまっても、それはそれでしょうがないと思っています。今のところは、男も女も関係なく、一担当者として日々の仕事に打ち込んでいくしかないと考えています。これからも現場に出続ける選択肢ももちろんあります。
失敗しても取り戻せる舗装の仕事はステキ
――今後やりたい仕事は?
寄川さん 個人的には、大きな仕事をやり続けていけたらなと思っていますが、結婚、出産を考えると、違う部署で働くこともあり得るかなと思っています。今の段階では、自分は可能性に溢れた若者だという認識でいます。
――舗装の仕事の魅力はなんですか?
寄川さん 自分の仕事が目に見えるところです。例えば、舗装の工事は1日1km進むんです。他の工種でそこまで進むものはありません。仕事の進捗がパッと見てすぐわかるのが、面白いです。規模が大きい仕事では、失敗を取り返せる余地があるのがいいですね(笑)。
――NIPPOの魅力は?
寄川さん 普通に働けるところです。男子とか女子とか関係なく、普通に施工管理の仕事ができます。女子だからといって、プラスになることもなければ、マイナスになることもありません。求められることは、一人前の技術者であることだけなので。