近い将来、個人レベルの差が今まで以上に評価される時代になるかもしれない。

「i-Constructionへの取り組み」 最新技術を取り入れること=働き方改革なのか?

最新の技術を取り入れること=働き方改革?

働き方改革とは、「少子高齢化問題」を中心とした日本経済の衰退となり得る問題を打開し、一億総活躍社会を実現するための取り組みである。この取り組みのポイントは、「労働時間」と「雇用形態の待遇格差」にメスを入れた法整備だろう。

そして、この働き方改革から派生しているのが、「副業・兼業の普及促進」である。これにより、日本の雇用形態の中心であった「正社員、フルタイム勤務」以外の雇用形態を一般化し、働くことに対するハードルを下げることが出来る。そこで、定年を迎えた方や病気の方等、働きたくても働く環境が整っていない人々の活躍を推進することが狙いであると言える。

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既存技術の応用や工夫も改革への第一歩

それでは、建設業界は働き方改革に対してどのような動きをしているのだろうか。建設業界の大きな問題の1つとして、人手不足が挙げられる。人手不足により、限られた人員で設計・施工の業務を遂行するためには、長時間労働が付いて回る。

働き方改革の1つとして、外国人労働者の雇用拡大が行われた結果、外国人労働者を見る機会は増えたが根本的な解決策とは言えないだろう。建設業に従事する者として、この「人手不足」と「長時間労働」の解消こそが、業界における働き方改革だと考える。国土交通省が推進するi-Construction(アイ・コンストラクション)の取り組みから見ても間違いないだろう。

私の所感ではあるが、業界内では「最新の技術を取り入れること」を働き方改革と考える人が少なくないように思う。最新のシステムの導入、最新機器の購入で満足し、それをもとに改革と言える成果を出すところまでの企業努力を、少なくとも私は体感出来ていない。

大企業の取り組みは、メディアを通じて活発にも見えるが、大企業の地方支店や中小企業には浸透していないのが現状だ。導入コストや導入手間に対する余力が無いことが大きな要因だと考える。

コストと手間は、確かに厚く大きな壁である。特に、最新のシステムは使いこなすことが出来れば作業人員も作業時間も減らすことが出来るが、導入企業の色に仕上げるためには複雑な設定作業を強いられるケースが多いように感じる。

必ずしも最新の技術を取り入れることが働き方改革ではない。既存の技術の応用と工夫から取り組む等、身近なところから始めることが改革への第一歩ではないだろうか。

個人レベルの差が今まで以上に評価される時代

では、建設業界はどのように変わるべきか。先に述べた改革の第一歩から、さらに二歩三歩と進むにはi-Construction(特にICT活用)に準じた取り組みが必要になるだろう。しかし、企業には変化を嫌う人間が多数存在する。i-Constructionに準じた取り組みは、ハイリスクな投資か、単なる手間と考えるのだろう。導入してもすぐに頓挫してしまうようであれば、確かにその通りだ。

しかし、近年の技術革新には目を見張るものが数多くある。各企業それぞれにマッチングする技術も必ず見つかるはずだ。勇気ある企業が率先してチャレンジした結果、当初は無かった実用例も集まりつつある。まだ取り組んでいない企業は、先行企業を含めて建設業全体を俯瞰し、チャレンジのリスクと現状維持のリスクを改めて考えてみてはいかがだろうか。

ここで話しをひっくり返すようだが、人手不足の現状とともに、人が余っている問題があることも1つの事実だ。他の業界でも有り得る話だが、定年が近付いた世代の一定数は生産性が落ちる。最近では「働かないおじさん」等と揶揄されているが、年功序列により高給取りでありながら実際の業務からも管理業務からも離れている人物を指すようだ。このような格差による不満を耳にする機会は多い。

終身雇用が確約されない社会が近付いていることは、口には出さずとも感じている人は少なくない。被雇用者であるならば、自らの能力によって企業にメリットを付与しなければ解雇、減給も有り得る。近い将来、個人レベルの差が今まで以上に評価される時代になるのかもしれない。

世界はこれから更に機械に囲まれていく

i-Constructionによる技術革新の多くは、少ない労働時間で生産性を向上させるシステム、機器が並ぶ。導入コストや導入手間を乗り越えた先には、確かな対価を得られるだろう。

ここで提起するのが、職業の減少である。AIの活用により、設計・施工のオートメーション化が進んでいく中で、人手不足の解消を目的とした結果、人材不要の業務があることに気付く。そのとき、必要とされる職業とそれに適した能力の持ち主は重宝されるに違いない。

建設業において、依頼する「人」と請け負う「人」は今後も在り続ける。これから更に機械に囲まれていく世界で、人と人との部分で活躍するためには、泥臭い自助努力によって身に付く確かな技術が必要不可欠ではないだろうか。

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