前回の取材から約1年。再び新阿蘇大橋へ
新阿蘇大橋の現場で働くドボジョ、大成建設の草野瑞季さんについては、以前『大成建設、24歳ドボジョのリアル』で記事にしたことがある。そのときはずいぶん駆け足での取材で、聞き足りなかったという感じがあった。
取材から1年ほど経ち、再び新阿蘇大橋を訪れることになり、草野さんに再び取材する機会を得た。草野さんはその後の1年間をどう過ごしてきたのか。前回聞き逃した部分を含め、話を聞いてきた。
気を張りつめた1年間
――前回の取材から1年ほど経ちましたけど、その後仕事はどうでしたか?
草野さん 今年1年は、ひたすら橋脚と橋桁の躯体構築を担当していました。前回もお話ししたとおり、やはり工程管理が大変な1年でした。
躯体構築になったので、基礎工と比べて、ある程度先を見据えた施工ができるようにはなったのですが、小さなトラブルが起こりそうに感じるときもあるので、それを未然に防ぐため、私たちも協力会社さんも結構気を張り詰めてやっていたようなところはありました。
――新型コロナの影響で、ガス抜きもしづらくなったのでは?
草野さん それはありますね。ただ、だからと言って、現場や事務所の雰囲気が悪くなったということはありません。他愛もない話をしながら、良い感じでコミュニケーションがとれています。
以前よりはキモが座ったかな(笑)
――指示を出すのには慣れました?
草野さん いや〜どうでしょうね(笑)。この現場に来て年数だけは経ちましたけど、担当する工種はどれも初めてなので、やっぱり協力会社の方々に教えてもらうことが多いのは、今でも変わりないですね。教えてもらいながらも、迅速に対応できるように精一杯やってきたという感じです。ただ、「以前よりキモはすわったかな」とは思っています(笑)。協力会社の中には厳しい人もいますけど、そこはひるまず、バシバシ言えるようにはなりました。
――メンタル管理は大丈夫でしたか?
草野さん 私が担当したPR2橋脚の工事は、その進み具合によって、阿蘇大橋全体の工程に大きな影響を及ぼす重要な工事でした。PR2の工事のスピード感を保つためには、先々のいろいろなことを前もって段取りしておかないといけません。あれがない、これがないということになると、工程が厳しくなってきます。
草野さんが担当したPR2
現場で指示を出すのも大変ですが、事務所に戻ってから、施工計画を立てたり、段取りを組んだりするのも大変です。「あそこの施工はどうやってやろうか」とか「あの資材をまた発注しなくちゃいけない」とか考えていると、「う〜、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」という感じになって、精神的に辛くなるときはありましたね。
ただ、そんなときにも、協力会社の方々からメチャクチャ優しくしてもらいました。「大丈夫?次の施工はこうなると思うから、コレがあったら俺たちもラクだよ」みたいな感じで、声をかけてもらいました。「あ〜、じゃあそれを用意しておけばいいのね」とわかって、スゴく助かりました。もちろん、会社の上司の方々にも、スゴくサポートしてもらっています。それらのおかげでなんとかやってこれたと思っています。
次の現場で経験を活かせれば、「成長した」と思える
――現場代理人の長尾さんに聞くと、「PR2は大変な仕事だけど、あえて草野さんに担当してもらった」と言ってました。
草野さん それはありがたいですね。任せてもらえたほうが自分の成長につながるからです。PR2の現場は、工事係である私のほんの少しのミスで期日に間に合わなくなるくらいタイトな工程なわけですが、そういう重要な箇所を私に任せていただき、サポートもしていただいています。長尾さんや所長がいるからこそ、私も多少は成長できたと思うし、期日に間に合わせることができたんだなと感謝しています。
長尾さんと草野さん
――長尾さんは「草野さんは着実に成長している」と評価してました。
草野さん 自分では「成長したのかな?」という感じです(笑)。本当にいろいろな経験ができたと思いますけど、今の時点では「かなり成長できた」という実感は正直ないですね。この経験を次の現場で活かすことができれば、きっと成長したと思えると思います。
――「他人の意見も聞いてほしい」とも言っていました。
草野さん はい、ちゃんと聞きます(笑)。
施工管理は「こなして」できる仕事ではない
――施工管理の仕事の魅力、やりがいは?
草野さん 施工管理は常に責任を伴う仕事です。1年目の新米であっても、ちゃんと責任を持って仕事に臨まなければなりません。自分が持つ能力の限界ギリギリのところで仕事することも少なくありません。それなりに「こなして」できる仕事じゃないんです。
そんな中で、自分なりに最良の施工計画を立てたり、指示したりして、苦労に苦労を重ねた結果、やっと工事が進んでいくわけです。それがうまくいって、デキの良い構造物ができたときは、感動もひとしおです。私にとっての施工管理の魅力、やりがいはそういうところですね。
――大学の後輩とかに建設現場の仕事について聞かれたら、なんて答えますか?
草野さん 「自分で考えて、指示を出して、モノをつくる仕事だよ」と言います。ただ、誰もがやっていける仕事ではなく、やはり向き不向きのある仕事だと思います。例えば、旅行の計画を立てるのが好きだったり、何かと仕切りたがりのコには向いていると思います。「そういうことが好きな子には目指してみれば」と言うと思いますね(笑)。
――どういう人が向いている?
草野さん ハキハキと自分の意見を言える人ですね。相手がメチャメチャ年上の作業員さんでも、臆することなく「これはダメ」とちゃんと指導できないと、仕事にならないので。