「クレヨンしんちゃん」をPRパートナーに迎えた正和⼯業

「クレヨンしんちゃん」をPRパートナーに迎えた正和⼯業

「”クレヨンしんちゃん”と全国へ」 春日部のリノベ会社が2年で50人を採用し急拡大中

ブランディングと社内改革で全国展開を狙う

リノベーション事業をワンストップで手掛ける正和⼯業株式会社は、創業地である埼玉県・春⽇部市を代表するキャラクター「クレヨンしんちゃん」をPRパートナーに迎えた。

その真意は、春⽇部から全国へと打って出ることが狙いであるという。同社は今期創業で60周年を迎えるが、建築・設備リノベーション、PFI事業などを手掛け、現在は東京都・埼玉県・福岡県などへ事業展開。今後、愛知や大阪にも進出を検討しているという。

こうした事業拡大を支えるのが、同社の人材定着戦略。労務改善に注力し、過去2年間に約50人が入社しているが、社員定着率は建設業界では異例の94%の高水準だ。

「2030年ビジョンで、売上高300億円を目指す」と意気込む正和⼯業の横田生樹社長に、その事業戦略を聞いた。

「工場」「ビル」「空調」のリノベに特化し、売上高300億円を目指す

――今回、世界的に有名なアニメである「クレヨンしんちゃん」とコラボした意味は。

正和⼯業の横田生樹社長

横田 生樹氏  「クレヨンしんちゃん」が春日部から世界に羽ばたいたように、当社も同様に春日部から全国展開をはかり、会社を伸ばしていきたいという思いからです。

また、当社は今期で創業60周年を迎えたため、これを基軸に会社のブランディングをワンランク上の企業へと引き上げていくことを目的にPRパートナー契約しました。

【公式】クレヨンしんちゃん「How to renovate SHOWA」30秒 | 正和工業株式会社 / YouTube([正和工業株式会社]コーポレートチャンネル)

――PRムービーでは、リノベーションを強調されていますね。

横田社長 ええ。当社はこれまで幅広い施工技術を蓄積してきました。リノベーションブランドでは「リノシア」として提供し、理想のリノベーションをアップデートしてきました。

この「リノシア」のうち、工場リノベーションブランドとして「リノシアファクトリー」を展開し、工場の快適性や安全性、効率性を高め、企業の経営資源に新しい付加価値を与えることを目指しています。また、ビルやマンションを老朽化から守り、現状以上の付加価値を提供する「リノシアビルディング」も展開しています。

また、既存事業である空調分野では「スカイシア」というブランドを提供し、空調を整備し、安全な職場環境の整備を提案しています。


――「工場」「ビル」「空調」のリノベーションに注力しているのはなぜでしょう。

横田社長 春日部市は少し離れれば郊外で、工場地帯が多い一方、都心からも近接し、ビル群があるという地の利があるんです。これはたとえば福岡市も同様で、市内はビルが多く立ち並びますが、1時間ほどクルマを走らせると工場地帯になる。大阪市、名古屋市でも同様です。各都市部において、市街地ではビルを、郊外では工場のリノベーション事業を展開することが、これからの事業の核となると考えています。

東京大学のリノベーションも手掛けた

――2020年7月期の売上高は38億円でしたが、大きく発展させていく見込みですか?

横田社長 「2030年ビジョン」を作成し、売上高300億円を目指すというビジョンを掲げました。今期は売上高42億円を目標にしているのでまだまだですが、この目標を達成するために、扱う商材、戦略、技術の研鑽などさまざまな角度で鋭意検討しています。

ほかの建設会社は規模の大きい新築に注力し、売上高も上げやすい傾向にあります。しかし、当社の売上比率は90%がリノベーションで占めています。つまり、リノベーションに特化して売上高を伸ばしている点において、他社と差別化をはかれていると考えています。リノベ市場はブルーオーシャンです。

「社員の幸せを本気で願う社風」でわずか2年で50人を採用

――事業拡大には、人員の確保が重要になります。

横田社長 そうですね。ですので、より働きやすい職場をいかにつくるか、社員の皆様がより豊かな人生を歩むためにはどのようにすればよいのか、この2点を軸にしながら福利厚生に力を入れています。

とくに、正和工業の存在意義は「社員が幸せになれる会社」であることだと考えています。その幸せをどう実現するかは、5つのポイントを基に福利厚生を検討しています。

一つは、お給料です。現在も未来も永続的にしっかりと払い続ける会社でなければならない。二つ目は時間です。給料が確保されてもプライベートが充実されなければいい人生とは言えません。仕事とプライベートの両方の時間を確保することです。

三つ目は健康です。健康を維持できる業種・業態であること。もし過労は防止しなければなりません。四つ目は仲間です。人は1日最低8時間働くわけですから、人間関係が最悪であれば、人生そのものが最悪になりますよね。職場環境の人間関係は人生に大きな影響を与えます。社風を良くして、働きやすい環境を整備することも重要です。

最後の五つ目は心です。「事上練磨」という言葉がありますが、いかに仕事を通して自分自身を磨き、成長していけるか、ということです。

東京大学の現場を担当する現場監督

これらを実現していくために、具体的には「5日連続休みの休暇」、「配偶者の誕生日には特別休暇」、「子どもの入学式・卒業式に特別休暇」など様々な制度を整備しています。また、今の時代ではコロナ感染によって自宅療養のリスクもあるため、酸素吸入器を全社員に貸与することなども企画しています。

こうした制度は、つくることそれ自体が社員へのメッセージになるとも考えています。福利厚生の制度をまずしっかりと制定していき、次に利用率を高めていければベストです。


採用は中途半端ではなく「すべてやれ」

――今、建設技術者の採用はどこも苦労されていますが、かなりうまくいっている印象です。

横田社長 この2年間で50名を採用することができました。これは「できることはすべてやっている」からです。確かに、同業他社の社長とお話すると、「なかなか技術者が採用できない」というぼやきも聞きますが、どの企業も採用活動が中途半端だと感じています。

当社では思いつく採用方法はすべて実施し、さらに徹底しています。今の当社は技術者さえいれば仕事が受注できる環境にあります。技術者不在で失注する損失と、採用コストを比較した時に、社員を確保したほうがより利益を確保できるわけです。この計算ができれば、採用コストをかけてでも社員の確保に走るべきだと私は判断しました。

しかし、他社を見るとこの採用コストを渋っています。受注見込みが不透明であるからという理由もあるのでしょうが、そもそも今お話したような技術者不足による失注の損失と採用コストの比較ができていないから、採用コストを出す決断ができないのだと感じています。

――担い手を確保できれば、育成も課題になります。

横田社長 第一前提として、社員にいかに長く働いてもらうことが大切です。育成しても辞められてしまえば、教育した意味がありませんから、定着率を引き上げることに注力しています。

先ほどの福利厚生やコミュニケーションを活発にしているほか、給与制度や評価制度にもメスを入れています。さらに、企業全体の従業員が心がける信条や行動指針である「クレド」も斬新なものに改めようとするなど、さまざまな工夫を施しています。

――具体的には?

横田社長 上司と部下の1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングを取り入れています。これにより、月の目標(業績、プロセス、施策)をしっかりと明確になり、個別のPDCAサイクルがしっかりと回せるような体制が整ってきました。

また、部門では月に1回の目標会議、中間会議、締め会議では社員が立てた目標の中途経過、目標達成率を会議の中で見ていきます。そうすると、部門のPDCAサイクルも回すことが可能になります。幹部社員についても、幹部会として同様の会議を開催しているので、全社のPDCAサイクルをそこで回すようにしています。

目標を立て、計画をし、実行し、次に改善をすることで会社も人材も成長するようになります。

リノベーションは「設備」が主役になるべき

――他社と比較して、施工面の強みはありますか?

横田社長 当社はもともと水道工事からスタートした設備会社です。総合設備業として空調衛生工事を担ってきましたが、20年前から建築一式工事も手掛けるようになり、現在は売上高の60%は設備工事、40%が建築工事となっています。

強みには、施工の内製化が挙げられます。設備工事業者が自社で建築工事もできると、建築業界の多重下請構造による無駄な経費を削減することができます。建築と設備の両方の技術者を抱え、実働部隊が活躍しているので、コストパフォーマンスが優れる点が当社の強みと言えます。

次に、お客様に対する提案力です。建築と設備に精通したメンバーがお客様に提案するので、企画提案力は他社より優れている自負があります。

さらに今期から、「電気事業部」を立ち上げ、こちらも内製化をはかっていきます。つまり、ハコモノ3業種、人間でいえば骨や肉体、内臓、神経系ですが、これらをすべての内製化により、今までの強みをさらにバージョンアップしていくことフェーズを迎えています。

内製化を進める背景には、リノベーション工事においては「設備が主人公となるべき」だという考えがあります。躯体はできあがっているので、建築がヘッドになって施工を行う理由はありませんよね。リノベーションは空調衛生・電気設備が大きなボリュームを占めているにもかかわらず、建築が冠をとって、空調衛生・電気設備を専門にしている施工工事業者に丸投げをしている現行の体制には大きな疑問を抱いています。

設備工事者が元請けとなり、躯体の建築工事は建設会社が担当するという体制を取ることは、お客さまにとってもコストパフォーマンスがいい建築物ができ、品質も向上し、リノベーションの活性化にもつながります。市場もまだストックがありますから、施工の内製化により、勝負をかけていきます。

――多重下請構造の話が出ましたが、協力会社との関係は?

横田社長 今お話した通り、当社は「建築」「空調衛生」「電気設備」の3工種の現場監督の内製化により、現場の多重構造を解消している点にこだわっています。当社の技術職はほぼ100%現場監督です。つまり、実際の施工は協力会社にアウトソーシングすることになりますが、協力会社の選定に当たっては極力、自前で技能者を抱えているところを大切にしています。

中には、「なんでもできます」という会社もありますが、実態は各工種で下請けを抱えている専門工事会社もあり、それでは多重構造が生じること原因となります。また、営業力に特化して受注し、実際の施工は下請けに丸投げするところもありますが、それはブローカーの一種であり、建設業の健全な発展につながりません。

当社は工種ごとで実際に施工する職人集団と取引きすることで、多重構造を排除しています。それがコストを下げる要因にもなりますから。


「自分一人ででかくなった気でいる奴は、でかくなる資格は無い」 。これは『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしの言葉だ。

春日部から全国へと羽ばたこうとしている正和工業。その裏には、横田社長の「社員が幸せになれる会社が存在意義である」という言葉のとおり、会社と社員が団結し、同じ方向を目指してチームとして高め合う徹底した組織づくりがあった。

これから、『クレヨンしんちゃん』と同じように全国へと名を広げ、愛される企業となることに期待したい。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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