採用は中途半端ではなく「すべてやれ」
――今、建設技術者の採用はどこも苦労されていますが、かなりうまくいっている印象です。
横田社長 この2年間で50名を採用することができました。これは「できることはすべてやっている」からです。確かに、同業他社の社長とお話すると、「なかなか技術者が採用できない」というぼやきも聞きますが、どの企業も採用活動が中途半端だと感じています。
当社では思いつく採用方法はすべて実施し、さらに徹底しています。今の当社は技術者さえいれば仕事が受注できる環境にあります。技術者不在で失注する損失と、採用コストを比較した時に、社員を確保したほうがより利益を確保できるわけです。この計算ができれば、採用コストをかけてでも社員の確保に走るべきだと私は判断しました。
しかし、他社を見るとこの採用コストを渋っています。受注見込みが不透明であるからという理由もあるのでしょうが、そもそも今お話したような技術者不足による失注の損失と採用コストの比較ができていないから、採用コストを出す決断ができないのだと感じています。
――担い手を確保できれば、育成も課題になります。
横田社長 第一前提として、社員にいかに長く働いてもらうことが大切です。育成しても辞められてしまえば、教育した意味がありませんから、定着率を引き上げることに注力しています。
先ほどの福利厚生やコミュニケーションを活発にしているほか、給与制度や評価制度にもメスを入れています。さらに、企業全体の従業員が心がける信条や行動指針である「クレド」も斬新なものに改めようとするなど、さまざまな工夫を施しています。
――具体的には?
横田社長 上司と部下の1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングを取り入れています。これにより、月の目標(業績、プロセス、施策)をしっかりと明確になり、個別のPDCAサイクルがしっかりと回せるような体制が整ってきました。
また、部門では月に1回の目標会議、中間会議、締め会議では社員が立てた目標の中途経過、目標達成率を会議の中で見ていきます。そうすると、部門のPDCAサイクルも回すことが可能になります。幹部社員についても、幹部会として同様の会議を開催しているので、全社のPDCAサイクルをそこで回すようにしています。
目標を立て、計画をし、実行し、次に改善をすることで会社も人材も成長するようになります。
リノベーションは「設備」が主役になるべき
――他社と比較して、施工面の強みはありますか?
横田社長 当社はもともと水道工事からスタートした設備会社です。総合設備業として空調衛生工事を担ってきましたが、20年前から建築一式工事も手掛けるようになり、現在は売上高の60%は設備工事、40%が建築工事となっています。
強みには、施工の内製化が挙げられます。設備工事業者が自社で建築工事もできると、建築業界の多重下請構造による無駄な経費を削減することができます。建築と設備の両方の技術者を抱え、実働部隊が活躍しているので、コストパフォーマンスが優れる点が当社の強みと言えます。
次に、お客様に対する提案力です。建築と設備に精通したメンバーがお客様に提案するので、企画提案力は他社より優れている自負があります。
さらに今期から、「電気事業部」を立ち上げ、こちらも内製化をはかっていきます。つまり、ハコモノ3業種、人間でいえば骨や肉体、内臓、神経系ですが、これらをすべての内製化により、今までの強みをさらにバージョンアップしていくことフェーズを迎えています。
内製化を進める背景には、リノベーション工事においては「設備が主人公となるべき」だという考えがあります。躯体はできあがっているので、建築がヘッドになって施工を行う理由はありませんよね。リノベーションは空調衛生・電気設備が大きなボリュームを占めているにもかかわらず、建築が冠をとって、空調衛生・電気設備を専門にしている施工工事業者に丸投げをしている現行の体制には大きな疑問を抱いています。
設備工事者が元請けとなり、躯体の建築工事は建設会社が担当するという体制を取ることは、お客さまにとってもコストパフォーマンスがいい建築物ができ、品質も向上し、リノベーションの活性化にもつながります。市場もまだストックがありますから、施工の内製化により、勝負をかけていきます。
――多重下請構造の話が出ましたが、協力会社との関係は?
横田社長 今お話した通り、当社は「建築」「空調衛生」「電気設備」の3工種の現場監督の内製化により、現場の多重構造を解消している点にこだわっています。当社の技術職はほぼ100%現場監督です。つまり、実際の施工は協力会社にアウトソーシングすることになりますが、協力会社の選定に当たっては極力、自前で技能者を抱えているところを大切にしています。
中には、「なんでもできます」という会社もありますが、実態は各工種で下請けを抱えている専門工事会社もあり、それでは多重構造が生じること原因となります。また、営業力に特化して受注し、実際の施工は下請けに丸投げするところもありますが、それはブローカーの一種であり、建設業の健全な発展につながりません。
当社は工種ごとで実際に施工する職人集団と取引きすることで、多重構造を排除しています。それがコストを下げる要因にもなりますから。
「自分一人ででかくなった気でいる奴は、でかくなる資格は無い」 。これは『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしの言葉だ。
春日部から全国へと羽ばたこうとしている正和工業。その裏には、横田社長の「社員が幸せになれる会社が存在意義である」という言葉のとおり、会社と社員が団結し、同じ方向を目指してチームとして高め合う徹底した組織づくりがあった。
これから、『クレヨンしんちゃん』と同じように全国へと名を広げ、愛される企業となることに期待したい。
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クレヨンしんちゃんはレオハウスのイメージだけど、変わったんですね。