工程が超遅れたマンション新築工事
私が経験してきた厳しい建築現場の中でも、“超”が付くほど工程が厳しかった現場がある。
それは、15階建てマンションの新築工事で、上棟から1ヶ月で検査・内覧会に持っていった現場だ。
もともとの工期は18ヶ月(6月着手、翌年12月末の引き渡し)であったが、まず杭工事において孔壁が崩壊。杭工事におおむね2ヶ月も時間を取られたため、実質16ヶ月の工期となった。
孔壁崩壊の原因は、擁壁保護が不調で、安定液が砂質土に逃げたからであった。当然、オールケーシングの機械を入れ替える必要に迫られたため、工程は大幅に遅れた。
さらに悪いことは重なり、基礎工事でも問題が発生。このマンションの建設現場は住宅地だったため、ウェルポイント工法は適用できず、地下水に影響されて工程が遅れたのである。
工程は遅れに遅れ、1階躯体工事は3月となり、マスター工程にて10月の上棟までの期間は7ヶ月となってしまった(ちょうど東日本大震災の時で、D35の柱が揺れていたのを思い出す)。
つまり、月に2フロア以上を施工しなければ間に合わない計算だ・・・。
工期延長を要望するも簡単に却下される
急いで施工したいところだが、近隣協定により日曜日と祝日の作業は不可。作業時間も8~18時に限定され、18時には退場しなければいけない。もちろん雨天の圧接工事不可、コンクリート打設不可の中での工程調整であった。
これではとても工期に間に合いそうにないことから、全体工程の見直し(工期延長)を要望したが、分譲マンションであることを理由に、事業主より簡単に却下された。
私の会社は施工協力会社として全工事を請け負う形であったが、元請会社においても営業絡みにより工期死守との命令だった。そのため、ピンポイントで躯体業者の増員を図ることにした。
そして、スラブ張りまで4日、梁・スラブ4日(ボイド半日)、返し1日(設備配管同時)、中9日でのコンクリート打設を行った。仕上げ工事を進めるため、ピンポイント工法を採用して内装工事を進めるなど、死に物狂いの工程だった。
間に合わない!28時までエンドレス施工
苦労した点を挙げればキリがないが、特に雨水養生には苦労した。中廊下にエレベーターを配置する必要性から、壁は耐火遮音間仕切りであったため、最上階の打設まで天井が吹き抜けとなっていたからだ。
また、作業員の昇降にも苦労した。非常用エレベーターに施工期間がかかり、仮使用が検査までできなかったし、ロングスパンエレベーターも2台設置したが、資材の搬出入で常時使用していたため、作業員の昇降には苦労した。それから、常時100人程度がこの手狭まな現場に入場していたため、工程調整・取合いにも苦労した。
とても工期に間に合いそうにないことから、10月下旬からはついに残業を開始した。最初は時間の制約もあったが、途中からは工事スピードを上げるため、27時や28時までのエンドレス施工となった…。
躯体工事の合間に、立駐ピットを施工
11月半ばに予定されている検査内覧会に向け、上階の工事を急ピッチで進める必要は当然だが、下階の手直しを同時に進める別部隊の確保も必要だった。そのため、作業員の数も倍増することにした。
外部工事についても総タイル張りだったため、かなり時間がかかった。外構工事との兼ね合いで足場を浮かすことが必要となり、仮設計画でもかなり苦労した。
工程は前後するが、場内でのコンクリート打設が必須のため、一部2階を後打ちとして、仮設構台を設置。立駐ピットが建物の正面にあり、通常なら基礎工事の時期に行うが時間の余裕がないため、躯体工事の合間(鉄筋材搬入の間、壁材・梁材・スラブ材)をめがけて立駐ピットを施工。底板打設後、仮設構台を設置の上、覆工板を設置した。
さらに、このマンションは特別避難建物でもあったため、最上階にヘリポート(R)もあり、消防検査も厳しかった。内装制限により中廊下の床の仕上げが検査時に求められたので、壁を仕上げる前に床を施工し、養生して壁を仕上げた。
以上の工程をざっとまとめると、
10/8 上棟
10/25 残業開始
11/20 内覧会
12/3 再内覧会
12/20 引き渡し
というスケジュールだった。
結局、作業員や職員(最終時は8名)の協力により、工期死守を果たすことはできたが、それでも取合いによる手待ちや間違いなど、かなりの無駄もあった。今思えば、もっとスムーズに工事を進められたと考えている。
ただ、上棟から1ヶ月で検査内覧会を迎える現場は、もう懲り懲りである。
読者の皆さんも、「もうこんな現場は懲り懲りだ…」という苦い思い出の現場はあるだろうか?