「どうせ働くなら、交通の便が良い山陽側が良い(笑)」 中国地方整備局女性職員に聞く"港湾の魅力"

「どうせ働くなら、交通の便が良い山陽側が良い(笑)」 中国地方整備局女性職員に聞く”港湾の魅力”

「珍しい」と言われる港湾の仕事を選んだ理由

国土交通省中国地方整備局の港湾系女性職員に取材する機会を得た。港湾系の仕事には、港湾施設(護岸や防波堤など)の整備のほか、空港施設(滑走路など)の整備も含まれる。

日本経済を支えるインフラを担う重要な仕事であることは疑いを入れないが、道路や河川と比べると、具体的な仕事のイメージがしにくいところがある。それだけに、港湾の仕事を選んだ理由などについて、ガチでお話を伺えたのは、貴重な機会だったのかもしれない。

  • 亀田 祐(かめだ ゆう)さん
    中国地方整備局 港湾空港部港湾空港 防災・危機管理課
  • 林 李々香(はやし りりか)さん
    中国地方整備局 広島港湾空港技術調査事務所 調査課

大きな仕事がしたい

亀田さん

――土木との出会いはどのようなものだったのですか。

亀田さん 子供のころからモノをつくるのが好きだったので、大学は工学部を選びました。学科選びは、建築か土木かで迷ったのですが、大きな仕事ができそうだということで、土木を選びました。

林さん 姉が土木を学んでいたので、私も土木コースのある山口県の工業高校へ進学しました。

林さん

――学校では土木のなにを学びましたか。

亀田さん 大学時代は遊び呆けていたので(笑)、あまり真面目に勉強していませんでしたが、研究室は干潟の研究室にいました。研究室選びも、くじ引きの結果でした(笑)。潮位の変化によって干潟がどう侵食されるかといった研究をしていました。

林さん 基本的に普通教科は得意ではなかったのですが、専門教科は楽しかったです。中でも土木力学は、仕事にも役立つ授業だと感じられたので、とくに力を入れて勉強できた科目でした。

港湾は世界と日本をつなぐ仕事

――就活はどのような感じでしたか。

亀田さん 公務員志望だったので、はじめは実家から通える広島市役所が第一志望でした。

ところが、中国地方整備局に官庁訪問したときに、港湾の仕事についてお話を聞く機会がありました。日本は99%輸入に頼っていて、港湾は世界と日本をつなぐ仕事をしているという感じのお話だったのですが、それを聞いて「スゴくカッコ良い」と思いました。

市役所の仕事はオールマイティに仕事をこなすイメージがあったのですが、港湾という一つの分野で仕事を続けるほうが、魅力的に感じるようになりました。それで、中国地方整備局の港湾の仕事を選びました。あと、港湾という仕事が新鮮だったというのもありました。

――具体的になにをする仕事なのか、イメージはありましたか。

亀田さん 業務全般のお話は聞いていましたが、港湾政策や計画とか港湾工事など、幅広くいろいろな仕事ができるというイメージでした。

――引っ越しを伴う転勤は大丈夫でしたか。

亀田さん 正直ちょっと不安はありました。できれば実家から通えるのが一番良いと思っていました。せめて山陽側だけ異動にならないかなと思っていました(笑)。

港湾は縁の下の力持ち

――林さん、就活はどうでしたか。

林さん 工業高校では、公務員試験のサポート体制が充実していたので、それで公務員を志望するようになりました。受ける選択肢の中で市役所・県庁・中国地整があったのですが、県を受けるなら市役所のほうが良いなと感じていたので、県庁ではなく政令指定都市の試験を受けました。

市役所は規模が小さいので、なんか違うかなと思いました。県庁は、小さくも大きくもなく、中途半端だと思いました(笑)。それなら市役所の中でも規模の大きい政令指定都市を受けようと思いました。いろんな選択肢の中で結局一番大きな仕事が出来そうなのは、と考えた結果、中国地方整備局を選びました。

――港湾を選んだ理由はなんでしたか。

林さん 道路や河川は、学校でもよく出てくる分野でしたし、学外の見学会や説明会でも、しばしば見聞きする仕事でした。そんな中、たまたま港湾の仕事に関する説明を受ける機会がありました。ふだんは全然身近な存在じゃないのに、実際は生活に深く関わっている仕事だということを、ほぼ初めて知りました。

そのとき説明に立った港湾の職員の方が「縁の下の力持ち」だとおっしゃっていたのですが、単純に「それ、すごくカッコ良い」と思いました(笑)。それで決めました。

――引っ越しを伴う転勤は大丈夫でしたか。

林さん 大丈夫でした。ずっと実家にいたので、県外に出るのも良い経験かなと考えていました。

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「ああ、境港か…」

打ち合わせ中の亀田さん(中央) (中国地方整備局写真提供)

――これまでどのようなお仕事をしてきましたか。

亀田さん 最初の配属先は、広島港湾・空港整備事務所の企画調整課でした。企画調整課はちょっと変わった仕事をする課で、私は、小学生の港湾見学の案内とか、チラシの作成とか、リクルート関係の仕事などに携わっていました。思っていた仕事とは違いましたが、おもしろかったです。

企画調整課に2年いた後、境港湾・空港整備事務所の保全課に異動しました。工事の発注や現場監督などを担当しました。たとえば、岸壁の舗装をやりかえる工事とか、防波堤のケーソンをつくる工事とか、米子空港の滑走路の補修工事などに携わりました。

――山陰ですが、大丈夫でしたか?

亀田さん 「ああ、境港か…」とは思いました(笑)。まさか自分が境港に行くとは思っていなかったので、衝撃を受けました。ただ、境港には同期の女性がすでに1人いました。そこに、私と同期の女性が一緒に異動したので、女性が3人いました。

――さぞ心強かったでしょう?

亀田さん 心強かったです(笑)。3人で同じ宿舎に入っていました。一つ屋根の下でした(笑)。

――初めての現場仕事はどうでしたか。

亀田さん 最初は図面の見方も、特記仕様書の内容もよくわからなかったので大変でした。先輩に聞きながら、要領をつかむのに3ヶ月くらいかかりました。

――思い出に残っている現場はありますか。

亀田さん 滑走路の工事です。飛行機が離発着している滑走路に中に入って工事するのは、おもしろかったです。基本的には夜間工事でしたが、住宅が近いところは、騒音対策として、昼間工事しました。

――今のお仕事はどんな感じですか。

亀田さん 本局の防災・危機管理課というところで、災害対応や職場のネットワーク関係の監督をしています。

母校で港湾の仕事の魅力を伝えられた

船上で説明に立つ林さん(中国地方整備局写真提供)

――林さん、これまでどのような仕事をしてきましたか。

林さん 最初の配属先は、宇部港湾・空港整備事務所の徳山下松港出張所の企画調整課でした。リクルート関係、ホームページの管理、広報などを担当しました。2年目に、自分の母校に説明に行く機会があり、後輩に港湾の仕事の魅力を伝えるといった仕事ができたので、嬉しかったです。

今年4月からは、広島港湾空港技術調査事務所の調査課というところで働いています。中国地方整備局管内での港湾施設整備に際し、海底の状況や環境などの調査業務の発注などを担当しています。地上では見ることができない海底にある土や土層が見れるのがおもしろいです。

工事現場が映える、海風も気持ち良い

――港湾の仕事の魅力はなんですか。

亀田さん 工事現場が絵になる、映えるところだと思っています。海があって、空があるところに、そこに大きなクレーンを積んだ作業船が来て、大きな構造物を上げ下げしている様子は、陸上の工事にはない迫力を感じます。あと、海風が気持ち良いです(笑)。

山陽と山陰、瀬戸内海側と日本海側という地勢や風土が大きく異なる2つの地域を両方経験できるのも、魅力といえば魅力だと思います。瀬戸内海と日本海では海の様子が全く違います。瀬戸内海は高潮の被害があるため護岸をつくったり、豊かな海にするため干潟の造成をしたりしていますが、波の高い日本海側は防波堤をつくっています。空港の仕事も夜間工事も、ピカピカ光って、そこそこキレイです。

林さん 港湾の仕事は、陸の工事などと比べ、工事するときしか実際のモノを見られないこととか、船で行かないとモノが見れないといったことがけっこう多いと思います。陸の工事では経験できないことが経験できるのが、港湾の仕事ならではの魅力だと感じています。

――港湾の仕事は、けっこうマニアックな仕事だと言えますか。

林さん そうですね(笑)。私が就職するとき、工業高校の先生にも「港湾を選ぶのは珍しいね」と言われました(笑)。「身近だ」という理由で、道路や河川を選ぶ学生が多いからです。私は「身近じゃない」からこそ、「港湾に行ってみよう」と考えたようなところがあります。

――道路や河川の仕事と比べてどうですか。

亀田さん 港湾は、道路や河川と比べ、勤務場所が限られているのですが、私はそれが魅力だと感じています。けっこう便利なところに事務所などが設置されているので、ライフワークバランス的に有利なところがあると思っています(笑)。

林さん 港がある場所は基本的に栄えているところが多いので、普通に暮らして飽きないのが、港湾の職場の良いところだという気がします。

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30才代の先輩がいないのが、サビしい

――港湾の仕事で不満に思うことはありますか。

亀田さん 中国地方整備局の場合、30才ぐらいの女性の技術系職員が少ないことです。先々のことを相談したいときとかに、自分よりちょっと上の先輩が周りにいないのは、不安と言うか、サビしいです。道路や河川の建設側には、そこそこいるので、ロールモデルとなる存在がいてくれたら、良いのになと思ってしまいます。

もちろん、すでにご結婚されてお仕事されている、女性の先輩はいらっしゃいますが、ご結婚されたばかりとか、今育児中とか、現在進行形の女性はいません。「いろいろな年代の方に相談できたらな」という思いがあります。

林さん 栄えている場所に事務所があるのは良いことなのですが、それぞれの事務所がけっこう距離が離れているので、自分の生活の拠点を定めるのが難しいと感じています。自分に新たな家族ができたときに、事務所が少ない分、ちょっと大変になるのかなと思っています。

山陽側で現場工事をしたい

――今後やりたい仕事はありますか。

亀田さん やっぱり土木のメインは工事だと思うので、工事を担当したいと思っています。現場に出たからと言って、すべてのプロセスに携われるわけではありませんが、「自分も関わった」という達成感を味わえると思っているからです。できれば、交通の便が良い山陽側の工事が良いです(笑)。

林さん これまで基本的にデスクワークだったので、私も現場をやってみたいです。実際に現場に行くと、大きな工事をやっていて「スゴいなあ」と感じるし、自分が担当していなくても、工事の進捗を見るのが楽しいからです。自分が担当している現場だったら、もっと楽しいのかなと思っています。

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