「夕方は不陸が怖い」建築現場監督2人のキモい職業病。いくつ共感できる?

建築現場監督ならではの職業病とは?

建築現場監督である私と、同じく建築現場監督である私の同僚、この2人に共通する「職業病」について報告します。

建築以外の方には「キモい」と思われるかもしれませんが、建設現場で施工図チェックや現場管理をしている建築施工管理技士であれば、きっと共感してくれるのではと期待しています。

建物の近くに寄って「柱の通り」をにらむ

建設業界で現場監督をしていると、自分が担当した建物の出来栄えに関して気になっている部位が、他の建物ではどうなっているか気になってしまうことは誰しもあると思います。

他人が建てた建物について、建築現場監督である私と同僚がどうしても気になってしまう一つ目のポイントは鉄筋コンクリート造でタイルの直張り仕上げや、張りフローリング、タイルカーペット仕上げ材などを使う場合に、「柱の通りが通っているか?」です。

ご存知のとおり、鉄筋コンクリート造で躯体を構築していくと、階ごとに若干の施工誤差が積み重なっていきます。その施工誤差が顕著になってくるのが、下階と上階が仕上げでつながる柱の、特に「角」の部分です。

通常は、タイル張りに先駆けて水糸などを張り、見た目が良くなるように調整しますが、余りにも見た目を重視してしまうと「補正する量」が多くなってしまい、舗装材を使うことでコスト的にも品質的にも良い結果にならないケースがあります。そこで、タイルの見た目がわからない程度で、補正量を軽減するために、「柱の通りを折る」方法があります。

そのため、どうしても他人の作った鉄筋コンクリート造の建物の近くに行くと、柱の角を下からにらんで、柱の通りがどの位まっすぐなのか、舗装面の形をチェックしてみたくなる衝動にかられるのです。

そして、すごい柱が通っている建物に遭遇すると、「型枠大工の精度が良かったのかな、下地調整がうまくいったんだな」などと、ブツブツ独り言を唱えてしまいます。唱えているのが、セルフレベリング材・基面整正・下地調整剤・レベル差・巾木などとリフォーム用語や建築用語がほとんどの技術情報ばかりなので他人が見たら、きっとキモいはずです。


夕方は「不陸」が怖い

続いて、他人の建物で気になってしまう2つ目のポイントは「鉄筋コンクリート造でフラットな壁面の場合に、どのくらい不陸になっているか?」です。

型枠を組み立てた時点では「まっすぐな壁」のイメージで組み立てるのですが、見た目では分からないレベルで不陸な状態が生じる場合がよくあります。その中でもいちばん顕著に出る可能性があるのが「西日」などが壁面に斜めに当たった時です。

夕方になると、自分では施工中に全く意識していない不陸な部分が、西日によって影となって露呈してしまいます。しかし、時すでに遅し。もはや建物は仕上がっていて、足場も何もないのでどうすることもできません。私にできることは、嫌な気持ちにならないように、施工完了までは不陸が顕著になる時間帯に建物を見ないことぐらいしかありません。

だから、他人が担当した建物を見ると、ついつい目が行ってしまい、壁面が不陸で凸凹な部分を見ると、なぜか安心してしまうのです。

……しかし上記2点については、建設業(建築の現場監督)以外の人は全く気にしていません。気になっているのは普段から仕事上で悩んでいる同業者だけで、一般の人にとっては、どうでもよい心配事なのです。建築現場監督の職業病です。

お店で気になる「床面の不陸」

さらに、仕事が休みの日にも、お店などで商品を見ながらゆっくり歩いていると、アレっと急に「建築」のことが気になることがあります。

それは「床面の不陸」です。お店を歩いている時に、室内の床が部分的に盛り上がったり、逆に凹んでいたりしていてボコボコになっていると、自分の現場ではなくても、足裏のセンサーがそれを感じ取ってしまうのです。

自分の現場を歩いている時には、床面の不陸で品質的なクレームにつながることがあるので、足の裏に意識が集中していることがあります。足の裏に違和感があると、立ち止まってチョークなどで「塗り」などと現場に記入するためです。

お店で「床の不陸」が気になり、急に立ち止まると、家族に「どうしたの?」と聞かれますが、「何でもない」と答えています。建築現場監督の職業病です。


飲食店では「躯体コンクリートの出来栄えチェック」

さらに、飲食店でも、建築現場監督ならではの職業病が出ます。

最近の飲食店では、オシャレの一環なのか、わざと内装の仕上げを撤去して、アスファルト舗装工事やフローリング施工をせずにコンクリートに直接塗装をしたり、天井を撤去して設備の配管をインテリアとして見せたりするお店が多々あります。

そこで、ついついやってしまうのが「躯体コンクリートの出来栄えチェック」です。確かに型枠の目違い程度なら「味」があって良いと私も感じますが、ジャンカなどの施工不良な部分があると、「施工不補修工事をしておけば、こんなに恥ずかしい目に合わなくても済んだのに」と憐れみに似た感情を覚えてしまいます。

施工業者や工務店など、施工を担当していた人達も「仕上げがあるから隠れる」と感じて、そのままにしていたのかも知れませんし、まさか全ての仕上げが撤去されるなんて夢にも思っていなかったかも知れません。

しかし、一般の人にはその部分も含めて「味」のある仕上げとして見ている場合がほとんどだと思います。別に、お店を運営していく上で、全く支障はないわけですから。

これも建築現場監督の職業病でしょう。

気になるポスターの「右上がり」

壁の垂直度をチェックするつもりがなくても、ふとした時に、建具や壁の傾きが気になることがあります。しかも、垂直でないと気付くのは建築に関わる所だけではありません。壁に掛けてある絵画やポスターなども「右上がり」や「右下がり」になっていたら気になってしまうのです。

同業者に「あのポスターちょっと右上がりじゃない?」と聞いてみると、大体「私もそう思っていた」という返事がかえってきます。「お前もチェックしているのか!」と心の中で叫びながら、お互いに建築現場監督ならではの職業病を共有し、自慢し合うのです。

……どうしても他人の建物は、嫌な所ばかり目が行ってしまいます。しかし、この職病病は、自分自身の建築現場監督としての勘を狂わさないための訓練だと思えば、仕事熱心だということになるでしょう。

みなさんは、休日でも仕事のことを思い出してしまう、どんな職業病をお持ちでしょうか?

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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