特殊高所技術の和田会長。洗堀調査をしているところで、右手に持つ棒の先にはソナー。この日は12年ぶりに現場へ。

特殊高所技術の和田会長。洗堀調査をしているところで、右手に持つ棒の先にはソナー。この日は12年ぶりに現場へ。

人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

「アナログ規制撤廃」へ。橋梁点検はどう変わる?

人による近接目視を基本として始まった橋梁点検では近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が促進されてきた。加えて、河野太郎デジタル相が就任した昨夏8月には人による目視や常駐などを義務付ける「アナログ規制」の撤廃を2024年に前倒しすると表明している。橋梁点検の足元では何か起こっているのか。連載で探る。

橋梁点検のこれまでを振り返ると、点検を規定した法令が2013年に施行、翌2014年から5年に1回の近接目視などを求める省令点検がはじまった。そして点検が2巡目に入る2019年に定期点検要領が改定され、2巡目の省令点検から人の近接目視と同等の診断が可能な点検支援の新技術としてドローンなどの活用が可能になる。引き続き今、2024年からの点検3巡目に向けて、さらなる議論がなされている。背景には、国の政策のトレンドがある。少子高齢化の進行で生産年齢人口の減少傾向が不可避的ななか、先端技術を活用して生産性を上げることで労働力の需給ギャップも埋めていくDXの推進だ。

ただ、補助金などにより点検支援技術の活用を政策誘導しているものの、毎年夏に国交省が公表している『道路メンテナンス年報』によれば2021年度は約20%の活用にとどまる。橋梁点検の現場では今、何が起こっているのか。聞いて回ると、「財源は税金。そして結果は使用者の安全・安心に直結する。成果品質・技術選定・コストで最適解を求めたいが、どういう現場に対してどういう使い方をすれば、品質とコストのパフォーマンスが最良なのか、判断材料が少ない」とか「前例がないので」とか、戸惑いの声も聞こえてくる。

そうしたなか、デジタル庁は「アナログ規制」の撤廃を掲げる。橋梁点検は「目視規制」の対象で「人力でなければ判断が難しい限定的な場合に限って目視、立入による検査等を実施」とされる区分に分類される。

橋梁点検の現場は、どう変わっていくのか。人に頼るべき業務と、機械に任せる業務はどう整理でき、補完し合うのか。また、人と先端技術の補完が加速するなかで、リスキリングの重要性も高まる。インフラの安全・安心を現場とするわれわれの仕事において、人には何の研鑽が期待されるのか。連載を通して探りたい。


【特殊高所技術】「点検精度は落とさずにコストを下げる方法をスタンダード化したい」

点検困難個所を近接目視できる新技術として、都市内高速や海上橋、特殊橋梁(トラス橋やアーチ橋、吊構造橋)などを抱える道路管理者に重宝されていた特殊高所技術。その後、5年に1度の定期点検が省令で定められ、急速に従前の足場や橋梁点検車に並ぶ技術へと一般化した。

そして点検が2巡目に入る2019年に定期点検要領が改定され、2巡目の省令点検から人の近接目視と同等の診断が可能な点検支援の新技術としてドローンなどの活用が可能になり、2024年からの3巡目に向けたさらなる議論も進められている。

環境が変わってくるなか、我々に馴染みのあるアナログ技術の特殊高所技術(人力とはいえ高画質のデジカメ撮影をし、デジタルで画像解析をし、成果物もデジタル化している)が、ドローン点検とのハイブリッドサービスを始めるという。ねらいは「点検精度は落とさずにコストを下げる方法をスタンダード化したい」(株式会社特殊高所技術 和田聖司会長)。和田会長に聞く。

政策と同じベクトルで確実な橋梁点検をするには

――なぜ今、「特殊高所技術×ドローン」なのですか?

和田会長 とてもシンプルなのですが、点検精度は落とさずにコストを下げる方法をスタンダード化したいということが僕らのなかには常にあって、それで特殊高所技術をやってきたわけなんですけれども、環境が変わってくるなかで、現在地で補整をかけると「特殊高所技術×ドローン」になったのです。

特殊高所技術を創業したころは、橋梁アセットマネジメントに目が向けられ始めたころで、高速道路などの有料道路の管理者さんからの高橋脚や河川内、海上などの橋梁で、足場や橋梁点検車ではコストが合わなかったり、物理的に大変だったりするような個所の点検にあたっていました。その後、5年に1度の省令点検が定まり、近接目視が明記されたことから、全国の近接しにくい橋梁、従来技術で近接しようとするとコストが合わない橋梁などへと普及し、特殊高所技術が一般化していきました。

そして省令点検の2巡目では、近接目視と同等の診断が可能な技術としてドローンなどを活用できるよう、定期点検要領が改定されました。全国の橋梁点検のお仕事をいただくなかで、70万橋以上もの数を5年ごとに点検することの作業量の膨大さと、点検が構造物の安全・安心の要の業務である重要さは、僕らも身をもって体験しています。

海上や谷間で足場がかけにくかったり、構造的に橋梁点検車が回り込みにくかったりするような橋梁の点検に特殊高所技術では近接できるので、活用されてきた

なので、少子高齢化の影響で生産年齢人口が減るなか、建設業界でも労働力の高齢化や減少は避けられず、先端技術の活用で生産効率を上げることで労働力ギャップを解消していくためのツールとしても、DXを促進する政策はよく分かります。土木業界ではこれまでも生産性革命が打ち出された際に、そのツールとしてi-Constructionが推進されるなどしてきました。現在はデジタル庁が人による目視を義務付ける「アナログ規制」の撤廃を2024年に前倒しすることを表明しています。補助金などをつけ政策誘導していますから、デジタルを使う環境を整備し、早くその効果を発現したい意向があると思います。

そこで、インフラの安全・安心のための点検、という僕らの仕事を考えると、将来的には可能になったり競争力が改善したりするかもしれないのですが、今のドローン点検では技術的に困難であったり、コストが合わなかったりするなどの理由で、人手に頼る必要がある部分を特殊高所技術で、ドローンに置き換えられる部分をドローンに、取得データの解析や分析、その結果の診断においても同様で先端技術と人が補完し合うことで、精度は落とさずコストを下げられるということがつかめてきたので、今回新たなサービスとして特殊高所技術とドローンの協業を打ち出しました。

つかめてきたというのは、サービスの大枠は同じですが、点検する橋梁の特徴に応じて、メニューの違いがでてきます。例えば、橋長50mの桁橋の場合は3橋以上をまとめて発注すると1橋当たりのコストが下がるとかですね。ですので、橋梁形式や橋種などによる特殊高所技術とドローンの点検範囲の分担と費用の積算、そのうえでの橋梁形式や橋種、橋長などによる最適な発注ロットなどを、発注者のかたに分かりやすく標準化ができるようにしたいと取り組んでいるところです。

膨大な点検の量に対する労働力の不足を、質を担保しつつ解消していこうという政策の方向性に対して、僕らのなかに常にある点検精度は落とさずにコストを下げる方法をスタンダード化したいということをかたちにすると、特殊高所技術×ドローンになったんですね。

画質と精度管理が確保できる個所はドローンで、桁端部・支承回りなどは特殊高所技術で

――人に頼るところ、ドローンが得意なところをどう考えたらいいですか?

和田会長 実はハイブリッドと打ち出さなくとも、これまでもいくつかの現場でドローンと協働しているんです。管理者さんの品質とコストのご意向に沿うと、特殊高所技術とドローンのそれぞれが得意なところを組み合わせるのがよいという現場です。

そういうつながりもあって、ドローン事業者さんから聞いたり、僕らも実際の現場で検証も重ねたりしているのですが、例えば桁端部とか、支承回りとか、橋梁の性能に関わるようなところほど、ドローンは不得意で見れていないというのが実情です。ドローン点検で重要なのは、判断できる水準の画像が撮れているかどうか、そのうえで画像の精度管理ができるかどうか、そこなんです。これが実はすごく難しくて、ドローン点検が推奨されていても爆発的に広がっていない理由の多くの部分をこれが占めていると思います。

どういうことかというと、ドローンでの点検品質を決めるものは、当たり前ですが画像の品質です。画像の品質を決めるものは何かというと、普通にカメラやスマホで撮影をする時を思い浮かべてもらうといいと思うのですが、カメラの解像度、明るさ、シャッターを切るときに撮り手も写り手も動かないかですよね。カメラの仕組みって、明るいとシャッタースピードが速くなりますから、パシャッとシャッターが切れる一瞬が静止していればいいですが、暗くなるほどシャッタースピードは遅くなりますから、パァッシャンとゆっくりシャッターが切れていく間は静止している必要があります。

こうして解像度と照度で点検を満足する画像が撮れたうえで、精度管理を経て、画像に写っているものが何か判断する必要があるわけです。この精度管理というのは何か。撮影時は照度や風速も刻々と変わり、それらに応じてピントを合わせるわけですから構造物までの距離や画素数も変わってきます。つまり画像に紐づくそれらの属性が刻々と変化していますから、この属性の画像であれば、これは汚れでなくひび割れだと判断できる、というような検査の精度を適正に保つための措置を講じることです。

今、カメラの性能もかなり良くなっていて、0.2mmまでのひび割れが見れますと言っても、同じ構造物のひび割れでも、昼の日差しで撮影した画像と、夕日が当たっているときに撮影した画像では写り方が違うものになりますし、また塗装面などで空や水の青さ、樹木の緑などが写り込むので、実物の構造物の表面にあるものが写っていなかったり、ないものが写っていたりということが起こります。そういうものに対して、属性の条件と照らして、それが何かを判断するこの精度管理は非常に重要になるんです。

こうしたドローン撮影の特徴を踏まえると、一部の事業者さんがやられているように橋脚のフラットな面をドローン点検に任せるのがいいのかな、と考えています。そして特殊高所技術はそれ以外を受け持つのです。今の制度ですと剥落物が第3者被害を起こす可能性のある個所は叩き点検をすることになっていますので、そうした個所に加え、桁下面、桁端部、支承回りなどです。また重交通の都市内では構造物表面に排気ガスと埃が結構な厚さで付着している個所などがありますが、それを指で拭わないと点検はできませんので、そうした個所などですね。

ひび割れ補修(低圧注入)をしているところ。特殊高所技術は点検の会社というイメージがあるが、建設業許可も持ち、補修工事もしている。

これから特殊高所技術×ドローンのハイブリッド点検に本格的に取り組んでいきますけれども、ドローン点検事業者さんとはこれまでと同じ協働というかたちになるのか、あるいは業務提携を結ぶというかたちになるのか、ケースバイケースになるとは思いますが、今回、A.L.Iさんとは業務提携というかたちになりまして、ここでドローンでの点検をやりたいと考えているのは、下部工に加え、機体が小型で鋼材の間を通り抜けられることを強みとしていますので上部工のコンクリート面、そして過去に発見された損傷の追跡などです。順番としては、ドローン点検では進展の可能性を含めて過去損の追跡をし、可能な限り新規損傷の有無の確認を行います。そして特殊高所技術では、進展している過去損に近接、損傷として判断が難しい個所への近接、桁端部や支承部などの狭隘部への近接、鋼部材のき裂発生可能性が高い場所への近接などです。

もう一つ言うと、例えば支承周りに堆積物があるような場合、人が行けば点検に合わせて取り除きますし、あるいは発注者さんの仕様によっては、応急手当や予防保全を目的として、例えば錆の進行を遅らせるスプレーを携帯して、点検で近接したついでに吹き付けてくることがあります。ただ、現行の発注の形態として、役務と工事で分かれていて、国交省さんでなく厚労省さんの管轄の話になるんでしょうけども、やっている作業が役務なのか工事なのかで、いろんなことが変わるんですね。

どういうことかというと、例えば、派遣労働者では建設行為はできません。ただ、実際の現場では協力会社さんから派遣で技術者を借りてくることはありますよね。その場合、派遣では建設行為ができないので、点検はできるけれど、近接したついでに応急手当や予防保全でスプレーを吹いたり、塗り足したりすることができないのです。

なので、僕らは将来的には、せっかく人が近接するならば、人が行くメリットを最大限に生かして、プラスアルファで例えば予防保全的な措置とか簡易補修とか、できることをしてこられるようになればいいな、と思っています。人が近接する特殊高所技術は点検の資格を保有する人、加えてその先の補修まで分かっている人たちが近接するわけですから、その専門性を多重使用できればいいなと思うのです。

3橋点検すると1橋当たりのコストは下がる?試行実証進む

――なるほど。点検精度を落とさないようなドローンと人の役割分担の概要はお話しいただいたところですが、なぜコストを下げることができるのか、教えてください。

和田会長 先ほど画像の質と精度管理の重要性、そしてこれを満足していることが点検の質を担保する大前提であることをお話ししましたが、コストにおいてもこれは大前提です。どういうことかというと、カメラの性能や照度が落ちると、カメラはピントを合わせるためにより近接して撮影します。つまり撮影枚数が膨大に増えますから、その分、撮影した写真をチェックして点検する時間も増えてしまうのです。実際に現場で人が点検する場合では、目線を左右に移動させるだけで広範囲を点検することが可能ですが、画像から点検する場合は、画像の隣の画像、その隣の画像とパソコン上で点検する必要があるため、どうしても現地より時間がかかってしまいます。

また、今の点検要領では必須とはされていませんが、今後、オルソ画像化する場合、撮影枚数によって、その費用も増えるでしょう。ドローン点検は現場での稼働時間を圧倒的に圧縮することでコスト縮減効果を生んでいるのですが、結果的にこれを上回る事務所作業となるのが実情です。なので、点検の質の意味でもコスト抑制の意味でも、画像の質と精度管理を満足することは大前提といえるのです。

そのうえで技術の投入手法がコストにおいて重要なノウハウになります。先ほども少しお話ししましたが、橋梁形式や橋種などによる特殊高所技術とドローンの点検範囲の分担と費用の積算、そのうえでの橋梁形式や橋種、橋長などによる最適な発注ロットなどを、発注者のかたに分かりやすく標準化ができるようにしたいと取り組んでいるところです。1橋点検するのに、ドローンも特殊高所技術も両方投入していてはコストは到底合わないです。ですが、例えばこれまで特殊高所技術で1橋点検するのに3日かかっていたとすると、先ほどお話ししたように人が近接しなければいけない対象個所に特殊高所技術をしぼって1日で3橋見ることができ、そのほかドローンに任せる個所のデータ撮影が1日で3橋できた、となると、1橋当たりの点検コストは下がりますよね。

僕らも最適解を見つけるために取り組んでいる最中で、ドローンと特殊高所技術で、例えば橋長が30mの橋梁を1日に何橋点検すれば、特殊高所技術だけ、あるいはドローンだけより安くなるのか、管理者さんにご協力いただきながら試行実証をしているところです。地方自治体さんによく見られる30mの桁橋は3橋まとめると1橋当たりの点検コストが安くなることが分かってきました。

管理者さんにしてみると、管理橋梁は橋梁形式も違えば、橋長も違うし、損傷の有無も違いますから、事例というのは本当に様々あります。そこで省令点検の進捗で管理橋梁の橋種や橋梁形式、橋長、損傷度、立地条件などをまとまったデータとしてお持ちですので、管内のどの橋梁をどういう組み合わせでどういうロットで発注するのがコストにおいて無駄がないのか、そうした判断をされるときにお役立ていただける標準化に取り組んでいます。

標準化のメリットはみんなに

――特殊高所技術×ドローンの標準化は、業務提携した個社ごとにということですか

和田会長 個社ごとというより、分野ごとですね。いま取り組んでいるのは主に2分野で、一つは先ほどからお話ししている橋梁などのインフラ点検、もう一つは国交省さんが主導している日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトのPLATEAU(プラトー)に代表される社会インフラの3Dモデル化関連です。

橋梁などのインフラ点検関連では、標準化としてお示しすることで、業務提携したドローン事業者さんだけでなく、これまでもいくつかの現場でそうしてきたように提携していないけれども協働する際にも、点検精度は落とさずにコストを下げる方法を共有できます。今後は協働が増えていくと思いますので、このメリットはすごく大きいと思うんです。ドローン事業者さんは各社ちょっとずつ考え方が違っていて、自社の強みをどこに置くかということに関連していると思うのですけれども、そこで繰り返しになるのですが、画質と精度管理が担保できる範囲をドローンでのデータ取得作業に任せる、と標準化しておけば、点検精度を落とさずにコストを下げる組み立てができますよね。

画質と精度管理が担保できるということは標準化に必須で、これを入れることで、今心配の声があがっているドローン点検を重ねているうちに点検精度が下がり続けるのではないかという懸念に対して、仕組みとしての歯止めとしています。

社会インフラの3Dモデル化の関連では、ドローンだけでなく多様な技術を試行されていて、橋梁の下面などはなかなか難しくて、せっかく僕らが行くんだったら、先ほどお話しした多重化の考え方で、点検にプラスして計測機器でデータを取ることができれば一石二鳥では、そんな話をしてるんですね。

人はより専門的な関与に

――橋梁などのインフラ点検の現場でもDXが進み、2巡目からは省力化、自動化の方向で取り組みがさらに加速すると、人の関与は減るように感じます

和田会長 データ取得など機械に任せられる作業においては省力化や自動化の恩恵を受けやすく、作業負担は減ると思います。一方、人に頼るところはむしろ逆で専門的な関与がより求められるでしょうね。データは機械で取得できるようになりました、AIでひび割れも見つけられます、といっても判断において人の専門性に頼らなければならない領域が残っているのが現状で、また特殊高所技術のようにそもそも人手が必要な点検個所も残っています。

先日、国交相に手交があった提言「総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~」にも、インフラメンテナンスに携わる自治体職員の方のリカレント教育や、新たな知見・知識の習得のためのリスキリングの必要性が示されています。また登録資格が満足するべき技術水準の更なる高度化の必要性も示されています。

実際に業務にあたる僕ら民間も、ロボティクスやデジタルと補完し合って作業量が減ることもある一方で、人に頼る領域では益々専門的な関与が求められ、知識や技能のアップデートはこれまで以上に必須になるでしょうね。土木という、いわばこれまでアナログで進んできた時間軸に比べ、補完し合うデジタル分野は極めて変化の速度が速いですからなおのことではないでしょうか。

魚群探知機のソナーを洗掘調査に活用

――話は大きく変わりますが、魚群探知機を点検に取り入れはじめたと聞きました。

和田会長 そうなんですよ。洗掘調査を安くできないかなと、手法を探っていくと、魚群探知機のソナーがいいな、と。このソナーの活用は以前に国総研でも研究していたらしいです。

近年、豪雨災害などの影響で橋梁が流されることが増えてきているということがあって、洗掘調査の需要があるんです。まずは現状を把握したいということかと思います。

流れがあまりないところでは、人がジャブジャブと川に入っていって、棒を立てればいいんでしょうけれど、流れがきついところでは危ないですよね。それで、水中ドローンを使った洗掘調査が実証されていますが、ソナーの場合は何がいいかっていうと、圧倒的に安いんです。

ソナーで洗掘調査をすると、河床の断面や橋脚が写されます。今回使用しているソナーは水に浸けると一瞬で断面を記録することができるものです。ソナーの性質上、使用条件はありまして、障害物などがあれば、音波が跳ね返ってしまい、その奥の断面を確認することはできません。 水深が浅いと、音波が縦ではなく水平に近い角度で飛びますので、障害物の影響を受けやすいです。何カ所か使って検証をしていますが、それ以外はあまり条件はないのではないかと思っています。

ぶら下がる、そして点検や補修もする…多重ノウハウ持つ専門職育成に注力

――最後に、社員のキャリア形成について、会社がどのようにサポートしていますか? 特殊高所技術はパッと見でも、安全かつ自在に構造物にぶら下がって移動するノウハウ、構造物を点検するノウハウ、場合によっては補修もするノウハウ等々、多重にノウハウが必要ですよね。加えて、橋梁だけでなく、風車も、国内だけでなく国外もとなってくると、非常に多くのノウハウを身につけた専門性の高い職種と感じます。社員の育成やキャリア形成などは、どのようになさっていますか?

和田会長 特殊高所技術は、高強度のロープやハーネスなどの特殊機材を技術者自身が用いることにより、重機や仮設足場を用いることなく、一般的に近接が困難とされる場所へ、安全に到達し、点検や調査、補修などの各種作業が可能となる技術です。主に橋梁点検や風力発電の風車、水力発電のダムサイトの点検などで重宝されています。

橋梁点検については、過去には、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にて「VE 活用促進技術」に認定、特に安全性の評価では従来技術(仮設足場など)よりも優位であると評価をいただいています。掲載から10年が経ち、2019年3月末をもって掲載期間が終了しました。当初は新技術だったものが、近接困難箇所におけるスタンダードとなりました。

また、日本海事協会の認証制度「IE=イノベーションエンドースメント」において、ロープ高所作業技術では本邦初となるIEプロダクト&ソリューション認証を昨年11月に取得しました。この認証は、洋上風力発電設備のほか、各種メンテナンスシーンにおいて有用とされる技術認証です。

求職時に既に経験者であるということが、基本的にはありません。もちろん、土木や風力発電など、当社が実施している業務に何らかの形で携わっていた者もおりますが、全くの未経験であっても、かなりの時間をかけて教育を行うようにしています。

近接が困難とされる場所へ、安全に到達するノウハウについては、(一社)特殊高所技術協会が講習で教え、受講者に習得させています。協会では認定資格として1級技術者、2級技術者、3級技術者を設けています。3級は特殊高所技術による作業を計画する能力を身につけた技術者、2級および1級は実際に現地で点検なり補修なりにあたる技術者です。2級を取得後、特殊高所技術を活用した業務に1,000時間以上就業すると、1級の受験資格が付与されます。2級および1級は資格更新講習として、ロープ高所作業中において、技術者が不測の事態に陥った際、常に適切かつ安全な救助活動が実践できるよう「オンロープレスキュー訓練」を定期的に実施しています。認定者は現在3級が94人、2級が50人、1級が70人です。ODAなどで海外の方にも講習をしていまして、海外認定者は7人です。

本社に常設する訓練設備での訓練。講習の際だけでなく日常の作業の確認などでも重宝している

3級は1日(8時間)の座学・実技講習で特殊高所技術を理解し、作業を計画する能力を身につけます。2級は座学・実技講習を通し、96時間(12日間)で特殊高所技術の基本動作、レスキュー技術を修得します。1級は先ほどお話ししました2級取得後の1,000時間以上の特殊高所技術の就業を経て、より高度な理解と応用力を養成するもので、座学・実技講習を48時間(6日間)行い、最後に検定試験を経て取得となります。研修施設は実技の訓練施設も含め特殊高所技術の本社に常設していますから、講習時以外でも、作業の確認などにおいても日々活用できます。

次に、点検や補修についての、各種基準類やマニュアルの習得、補修などの技能については特殊高所技術の習得も含めて半年程度の研修期間を設けて教育を行っています。橋梁点検では、国の基準やマニュアルに加え、各自治体のマニュアル、高速道路会社の基準やマニュアルに対応できるようにしています。

橋梁構造の理解を深める橋梁模型作成

加えて、国が登録資格としている橋梁点検士や非破壊検査資格をはじめとする各種資格取得も会社として積極的に推奨しています。橋梁点検においては、先ほどの1級および2級技術者で点検資格を持つ技術者が業務にあたっています。ダムや風車、補修に関しても同様に、業務にあたる社員には高い専門性の習得支援をしています。

精度管理って何ですか? ~大日本コンサルタント小林大研究員に聞く

大日本コンサルタントはD2X(同社の造語で、時々刻々と変化する環境に対して、絶えず進化する開発をしていくこと)を掲げ、ドローン点検に関しても橋梁を主力とするコンサルタントで唯一本格的に取り組み、点検全般の豆知識など、蓄積してきた点検のヒントを伝える無料講習会を定期的に開き、発注者や点検にあたる地元企業との共有を積極的にしている。

精度管理についての知見とノウハウの蓄積も厚く、中心的に取り組む小林大研究員に、精度管理とは何か、なぜ重要なのか、どう管理すればいいのか聞く。

ドローンによる橋梁点検に、橋梁を主力とするコンサルタントで唯一本格的に取り組んできた大日本コンサルタントの小林研究員。同社は、自社の技術だけでなく、さまざまな点検支援技術を採用し、使いこなし方のノウハウも蓄積している

――点検分野で精度管理という言葉に馴染みがなかったのですが、点検支援技術の研究開発とともに突然聞くようになりました

小林研究員 確かにそうですね。でも、近接目視点検でも意識していなかっただけで、精度管理を行なっていたんですよ。

具体的には、点検車や高所作業車に乗る、特殊高所技術などにより、損傷種類の検出や損傷程度区分の評価ができる距離まで接近することです。ドローン点検においても、近接目視と同様に点検として必要な精度管理が必要ですよ、ということです。

あと、見落としがちですが、点検支援技術を使用する際の参考資料である『新技術利用のガイドライン(案)』(平成31年2月 国土交通省)では、点検支援技術を使用する際の精度管理の実施やその結果の発注者への報告が望ましいとされていますし、「橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課」では、点検支援技術を使用した場合の精度管理に相当する記述が求められています。

精度管理は、技術的にはもちろん、制度的にも必要な点にご注意いただけたらと思います。

――ではドローン点検でいう精度管理とは?

小林研究員 ドローン点検というと、ドローン機体に注目が集まりますが、一般に点検に使用するのは、ドローンに搭載されたカメラで撮影した画像をフォトグラメトリ技術により合成した合成画像です。つまり、精度管理の最終的な対象は、一般に合成画像(オルソモザイク画像)となります。これを前提として、その素材となる1枚1枚の画像をどう撮影するか?その管理はどうするか?と考えます。

また、使用するフォトグラメトリアプリによっては、合成することそのものや、合成モード設定によっては画像精度が劣化してしまうことがありますので、使用するフォトグラメトリアプリの見極めも重要となります。

この見極めの方法などについては、『オルソモザイク画像の生成と保存に関する参考資料(案)』(令和4年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課)が参考になります。なお、DJI・大日本コンサルタント・フライトが共同開発したM300RTK-Iは、撮影パラメータ、使用するフォトグラメトリアプリや設定の検討を行ない、オルソモザイク化による画像精度の低下がない手法を確立しています。

さて、精度管理ですが、画像が損傷の検出や損傷程度区分の評価、損傷図の作成などに用いられることを考慮すると、「この画像にはこれくらいの細かさのものが写っているはずだ」、「これくらいの正確さで寸法形状を把握できるはずだ」、「これくらいの正確さで色を把握できるはずだ」といった蓋然性を示すものです。「点検支援技術性能カタログ」も、この点について取りまとめられています。

例えば、ひびわれが全く写っていない画像があったとして、検出可能な最小ひびわれ幅が0.1mmの精度の画像と同0.3mmの画像では、画像の捉え方、解釈が異なります。画像だけでは診断できないことを前置きしますが、前者の画像であれば、ひびわれの観点では健全といえそうですし、後者の画像であれば、ひびわれの観点では健全とはいい切れない、となります。どちらもひびわれが全く写っていない画像なのに、画像の性能に基づき解釈を行なうと、随分印象が異なりませんか?

講演会や講習会でよくお話しするのですが、画像を用いた点検の難しさは、もし、その画像に損傷がなにも写っていなかったとき、画像を見ただけでは「損傷が写っていない」のか「損傷自体がない」のかが分からないことです。精度管理の行なわれていない画像は、点検に使用することができず、診断のための資料とはならないのです。

――具体的にどのように管理するのですか?

小林研究員 点検は、診断に用いるものですから、前回の点検までに既に把握済みの損傷の経過の確認はもちろん、前回の点検で損傷がなかったところに新たに損傷が発生していないかどうかについても、確認できるものでなくてはなりません。

健康診断を思い浮かべていただければ、お分かりいただけると思います。前回の健康診断のレントゲン写真に異常がなかったからといって、今回のレントゲン写真の撮影を省略するなんてことはしませんよね。

例えば、そこに幅0.1mmのひびわれがあることが分かっていて、撮影した画像にそのひびわれが写っていれば、その画像は少なくとも幅0.1mmのひびわれが写る精度と確認できます。

しかし、そこに幅0.1mmのひびわれの有無が分からない場合は、撮影した画像の精度をどうやって確認しましょうか?とりあえず画像を撮影して、ひびわれが写ってないからといって、幅0.1mmのひびわれがないとはとてもいえないですよね?

点検に使うのは一般に合成画像ですので、最終的な精度管理の対象は、一般に合成後画像となります。合成画像は、撮影した多数枚の画像から作成しますので、1枚1枚の画像の精度の管理が必要であることは分かり易いですが、光学レンズを使用して撮影した1枚の画像は、画像の中央から周囲に向かって精度が低下することを忘れがちです。

例えば、画像の中央部でギリギリ0.1mmのひびわれが写っていたとしても、画像の周囲では、0.1mmのひびわれが写っていないかもしれないのです。このような画像で、0.1mmのひびわれを検出したいのなら、1枚の画像の中央部しか使えないことになりますので、これを基準にして撮影密度、言い換えるとラップ率を設定して、撮影した位置に基づきラップ率を管理します。ラップ率の設定は、画像合成の可否の観点でよく説明されますが、橋の点検では、精度管理の観点での検討も必要ですので、ご注意いただけたらと思います。

図-Aと図-Cは一見相違を見出せないが、それぞれの画像を拡大した図-Bと図-Dでは精細さが相違する。図-Bではクラックゲージの数字を判読できないが、図-Dでは判読できる。図-Aと図-Bは画素分解能(1ピクセルあたりに写る寸法)が相違しており、少なくともこの情報などがないと、どれくらいの細かなものが写っているか分からない。クラックゲージの数字を判読することが必要であれば、少なくとも図-Cの画素分解能となるように精度管理を行ない、撮影をする必要があることになる。

また、画像の精度は、撮影した瞬間の点検対象部材とカメラの距離や角度、明るさ、シャッターが開いている間のカメラの動きといった条件に影響を受けます。これらの条件と画像精度の関係を予め確認しておき、点検時の画像を撮影した瞬間の条件に基づき精度を管理します。例えば、高橋脚上部で画像を撮影した瞬間のその位置での明るさをどうやって計測しますか?ということです。

これらに対して、DJI・大日本コンサルタント・フライトが共同開発したM300RTK-iは、RC橋脚に対してとなりますが、機体やカメラに搭載されたセンサを使用して撮影した瞬間の条件を計測、記録して精度管理を行なっており、高い所や遠くに機体が位置する場合でも精度管理を可能としています。

補足しますと、M300RTK-iは、所定の撮影パラメータを満足するように自動で飛行撮影ができるのですが、自動飛行撮影に使用するセンサ計測値を使えるので、精度管理を、しかも自動で行なうことができるという側面があります。この辺りは、各社さん工夫を凝らしているところですね。

DJI・大日本コンサルタント・フライトが開発したM300RTK-iは、所定の精度の画像を自動で飛行撮影を行なう

 

――積極的な活用が推奨されている「点検支援技術性能カタログ」については精度管理をはじめとした、こうした実際の点検において必要なことがどのように示されていますか?

小林研究員 「点検支援技術性能カタログ」ですが、点検支援技術の使用者が各社の技術の性能を把握したり比較したりしやすくするために、国が統一的な項目を設定して取りまとめたものです。カタログが発行される前は、使用者が各社個別に問い合わせていましたし、項目がバラバラで比較に苦労していましたので、使用者にとっては随分助かるものです。

以上の目的から、「点検支援技術性能カタログ」は、限定的な条件に対する性能の記載となっています。
ですから、「点検支援技術性能カタログ」は、様々な条件が予想される全ての点検現場に対して性能を保証するものではなく、そもそも目的が異なります。

「点検支援技術性能カタログ」への掲載をもって無条件に点検に使用できるといった誤解を見かけますので、ご注意いただけたらと思います。

では、使用を予定する点検支援技術の、点検を予定する現場の条件に対する性能をどうやって確認するか?ですが、各社さん、「点検支援技術性能カタログ」の掲載に際して国からの指導により「技術マニュアル」を作成しており、このなかに、精度管理も含めて、性能が確保される条件範囲の記載があるはずです。

点検支援技術を使用される際は、「点検支援技術性能カタログ」を補完する「技術マニュアル」の存在についても、ご注意いただけたらと思います。

――ドローン点検技術を選定するにあたって特に注意すべき点はなんでしょうか?

小林研究員 本インタビューのテーマでもあるのですが、ドローン点検技術の研究開発者として、実際の現場で実用的に精度管理が可能な技術か否かに尽きます。ドローンを人力操縦して、高く、遠く離れた場所で、実用的に、点検対象部材に対して間隔〇m、角度〇度にできますか?ということです。

もちろん、性能確保条件を満足するまで人力操縦で撮影し続ける方法はありますが、満足するか否かはときの運となりいつ終わるか分かりませんし、いくらかかるかもわかりませんよね。

あと、最近ではSLAMによる自律、自動飛行技術を実装した小型のドローンの話題を聞きます。狭隘部、具体的には桁などに衝突せずに床板下面に接近できるなど、飛行制御技術としては大変に素晴らしいもので、私たちも注目しています。

しかし、狭隘部は一般に暗く、加えてドローン機体が小型であるためカメラ性能が低いことから、点検に必要な精度の画像の撮影が難しいことを確認しています。そのため、点検に活用される場合は、そもそも点検に必要な精度を確保できるか?そのうえで精度管理が可能か否かについて慎重に検討されるとよいでしょう。

――精度管理という側面から点検支援技術の活用に関する考えをお聞かせください。

小林研究員 近接目視では意識していなかった精度管理を、点検支援技術では具体性をもって実施が求められます。

これは、点検結果が診断の資料であることを考慮すれば当然のことで、点検支援技術の開発者のみならず、技術の使用者も注意する必要があります。

どのように、どの程度の精度管理を行なえば診断に影響がないか?あるいは維持管理結果に影響がないか?は未知ですので、最初は、診断が可能であることが分かっている近接目視と同等の精度が得られるように管理することが必要、そのような部材、損傷に限定して活用し始めることが必要であると強く認識しています。

ドローン事業者さんが、精度管理することなく橋梁の外観をドローンで撮影することを「点検」と称しているのに危機感を覚えており、本インタビューが警鐘となることを願っています。

人と機械の点検業務の分担・補完 ~三木千壽東京都市大学長に聞く

国土交通相の諮問機関である社会資本整備審議会の道路分科会道路技術小委員会で、2014年~2018年の5年間、委員長を務めて道路の老朽化対策を議論してきた三木千壽東京都市大学長に聞く。三木教授は「橋梁の疲労と破壊」や「橋の臨床成人病学入門」などの著書があり、また、2017年に、鋼橋の経年劣化の一つである疲労き裂が初期段階では微細で点検時に見落とされることが少なくないことへの対応策として、実橋で発生した疲労損傷事例をもとに近接目視するべき部位を学習できる教育ソフトを開発、使用者にアンケートするなどした検証結果も加えた「鋼橋の疲労損傷に関する近接目視点検教育ソフトの開発」として論文報告もしている。現在、続編として、鋼橋点検のためのデジタルツインを打ち出した論文を土木学会のメンテナンス論文集に投稿中で、3月のシンポジウムに合わせて閲覧ができるようになる見込みだ。

三木教授。橋梁の老朽化に詳しく、社整審など国の諮問会議の委員も歴任。特に鋼橋の疲労の研究は知られ、世界中で論文群が引用されている。

――橋梁定期点検において、国土交通省でも先端技術などを採用した点検支援技術の活用を促進しています。また、昨年にはデジタル庁が「アナログ規制」撤廃の前倒しに言及しました。橋梁点検は「目視規制」の対象で「人力でなければ判断が難しい限定的な場合に限って目視、立入による検査等を実施」とされる区分に分類されています。橋梁点検において人と機械の役割分担、補完について、お聞かせください

三木教授 やはり、現場が重要です。点検の現場を見て、使うべき手段を決めるべきです。

近接目視、on hand inspectionは点検の最も重要なところであり、近接目視と同等な点検ができるのであれば、ドローンでもロボットでもどうぞ、ということです。欧米では近接目視をon hand inspectionと呼びます。これは距離だけではなく、手で触れるような点検を意味しています。定期点検要領での近接目視はon hand inspectionを想定しています。腐食のような損傷についてはドローンでも見えるでしょが、疲労き裂については、今の技術ではダメでしょう。

私は、社整審の技術委員長を退く際に、3つの”遺言”を残しました。その1つは点検技術者の資格化です。今もそれらしい資格認定をしていますが、これは非常に重要です。点検の専門家ではない者が点検にあたっているようなケースが見受けられます。何のために点検するのか、それは診断のためです。つまり、診断ができる情報として満足し得る点検ができていなければダメなのです。

2つ目は点検と診断は違うということです。点検で何か出てきたときには、詳細調査とそれに基づく診断が必要です。今は、医療現場に例えると、検査技師が診断し、場合によっては治療までやっているのではないでしょうか。診断とは、ひび割れ、き裂などが検知されても、それが有害かどうか、将来、致命的な減少につながるかどうかの判定です。

3つ目は新技術をきちんと評価し、取り込むことです。近接目視と同等であることを、どこでどのように審査するかです。熟練技術者はどこに損傷が出やすいかを知ったうえで点検をします。したがって、効率的に点検ができます。しかし、予備的な情報や知識なしでの全個所点検は大変なことです。鋼床版の疲労き裂などは、ドローンやロボットでは検知できない代表です。溶接のルート部で発生し、進展しますから、高度な知識がないと、それに適した点検技術を適用しないと難しいでしょう。

「人力でなければ判断が難しい限定的な場合に限って目視、立入による検査等を実施」。総論はそうでしょう。重要なのはその先の各論で、やはり現場を知ったうえでの議論が大切なのです。そして、点検の現場を見て、使うべき手段を決めるべきです。どのように、そして誰が「限定的な場合を特定」するのでしょうか。

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