建設監督官に聞いた。仕事のやりがい、魅力とは
近畿地方整備局福井河川国道事務所が整備を進めている中部縦貫自動車道の大野油阪道路(延長35km)。この道路の一区間である現在掘削中の大谷トンネル(延長2853m)の現場取材をする機会を得た。
まずは建設監督官である佐久間昭さんにこの工事の概要や進捗、この工事のポイントなどについて、お話を伺った。併せて、建設監督官という仕事のやりがい、近畿地方整備局の働きやすさなどについても伺った。
佐久間 昭さん 国土交通省 近畿地方整備局 福井河川国道事務所
大野監督官詰所・大野油坂道路和泉連絡室 建設監督官
大谷トンネルは令和8年度春開通予定
――大野油坂道路とはどういう道路ですか。
佐久間さん 中部縦貫自動車道を構成する自動車専用道路です。大野ICから油坂出入口までの延長35kmの区間を指します。中部縦貫自動車道は延長約160kmあり、開通すると、中央自動車道長野線、東海北陸自動車道、北陸自動車道それぞれとつながります。
大野油坂道路としては、令和5年3月に大野IC~勝原ICの延長10kmが開通したところで、令和5年秋には勝原IC~九頭竜ICまでの延長9.5kmが開通予定です。大谷トンネル区間を含む九頭竜IC〜油坂出入口の延長15.5kmの区間は令和8年春に開通予定になっています。
――大谷トンネルとはどういうトンネルですか。
佐久間さん 九頭竜IC〜油坂出入口区間には、川合トンネル、新長野トンネル、大谷トンネル、新下半原トンネル、上半原トンネル、東市布トンネルの6つのトンネルがあり、大谷トンネルは九頭竜ICから3つ目に位置する延長2853mのトンネルです。
水は出るが、岩質は比較的良い
――大谷トンネルはいつから担当していますか。
佐久間さん 令和5年4月からですので、まだ数ヶ月程度です。
――トンネルの建設監督官はご経験があるのですか。
佐久間さん いえ、初めてです。建設監督官の経験も多くはありません。逆に施工業者さんに教えていただきながら、やっています(笑)。掘り始めではなく、ある程度掘り進んだタイミングで引き継いだので、まだラクなほうなのかなと思っています。まだ数ヶ月しか経っていませんが、とくに問題なくできていると感じています。
――進捗はどうですか。
佐久間さん 令和元年11月から掘削に着手しており、進捗率は、令和5年6月時点で57%、延長1625kmとなっています。これまでのところ工事は順調に来ています。湧水に伴う小規模な崩落はありましたが、現在掘削している区間は比較的岩質が良いので、当面はとくに問題なく進みそうだと思っています。
――地盤は全体的にどんな感じですか。
佐久間さん 全体的には良い土だと思っています。掘削したズリは盛土に使えていますし。
――水はどうですか。
佐久間さん やはり水は出ます。地下水が沸いてくる部分もあります。排水については施工業者さんが苦労されているようです。近くに九頭竜川があるので、しっかりと濁水処理されています。
豪雪地帯なので、通年で週休2日を確保
――現場の休みはどうなっていますか。
佐久間さん 施工業者さんには、週休2日確保ということでやっていただいています。ただ、このあたりは数mはゆうに積もる豪雪地帯なので、冬の間はなにも作業ができない期間があるので、夏場などに集中的に作業をして、冬場は休むというカタチで、通年トータルで週休2日を確保しています。
――現場周辺はそんなに雪が積もるのですか。
佐久間さん そうですね。国道も通行止めになるときがありますし、スキー場もあります。
――国土交通省としては今年度から、通年ではなく「月8休」に取り組んでいるそうですが。
佐久間さん ええ、この現場でも「4週8休」、「閉所率28.5%以上」を目標に取り組んでいただいているところです。
極力ペーパーレス化し、書類の簡素化を図る
――当然、遠隔臨場なんかも積極的に取り入れているわけですか。
佐久間さん そうです。検査確認などは、可能な限りWEBで行い、勤務時間の短縮を図っていただいています。
――書類の簡素化や遠隔臨場などの実施状況はどうですか?
佐久間さん ペーパーレス化は極力実施するようにしています。以前は紙で上げてもらっていた協議書類などは、書類の決済システムを活用したりしています。遠隔臨場も適宜実施しています。必ずしも対面である必要がない検査などは、WEB会議システムを介して行っているところです。
デスクワークより外に出るほうが幸せ(笑)
――建設監督官の仕事は楽しいですか。
佐久間さん 楽しいです。事務所でデスクワークするより、外に出るほうが幸せなことだと思っています(笑)。今は、現場に入ると言うより、現場周辺の住民の方々とお話しすることのほうが多いですけど。と言うのも、今は田植えの時期なので、トンネル以外で受け持っている盛土工事に伴う田んぼの水に関する対応に追われているからです。
――建設監督官自身の働き方改革はどうなっていますか。
佐久間さん WEB会議システムなどを活用しながら、勤務時間の短縮に努めているところです。ただ、複数の現場を受け持っている以上、一定の移動時間はかかってしまいます。こればかりはどうしようもないです(笑)。
GW中に「ダンプにあおられた」と苦情が入る
――現場が24時間動いている以上、「完全オフ」の時間帯を確保するのは難しそうですが、いかがですか。
佐久間さん もちろん事故などが発生すると、オフでも対応しなければなりません。苦情対応の場合もそうなります。これは以前に担当した工事の話ですが、一般のドライバーの方から「ダンプにアオられた」という苦情が寄せられました。それがゴールデンウィーク中のことだったんです。とりあえずドライバーさんに電話をして、詳しいお話を聞いた上で、トラックの業者さんにも事情を聞いたりして、対応したことがあります。
そのときに問題になったのは、アオったとされるダンプが作業灯を点灯させながら走行していたということでした。その場合、違反になるからです。しかも、ドライバーさんはその作業灯が不正に改造されていると主張されていました。それが不正改造でないことをダンプメーカーに確認する必要があったのですが、あいにくゴールデンウィーク中だったので、確認が取れませんでした(笑)。
――最悪のタイミングでしたね(笑)。
佐久間さん そうなんです(笑)。最終的には、不正改造でないことが確認がとれました。ただ、作業灯を点灯させていたのは事実だったので、その点は謝罪し、ドライバーさんに受け入れていただきました。
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飽きることなく仕事が続けられるのが魅力
――近畿地方整備局の仕事の魅力について、どう感じていますか。
佐久間さん 幸いなことに、第二京阪道路などの開通のタイミングに立ち会う機会が何度かありました。それが仕事の魅力になっていますね。そういうときはやはり「嬉しいな」と思いました。住民の方々などから「開通して便利になった」と言われたときも、「この仕事をやって良かったな」と思いました。
道路開通の直前は、仕事が忙しくてなかなか家に帰れない日々が続いたのですが、開通の瞬間は、そういう苦労が吹っ飛ぶほどの達成感、喜びがありましたね。近親の者には「この工事、オレがやってたんやで」と誇大に吹聴したこともあります(笑)。今担当している大谷トンネルも貫通の瞬間に立ち会えそうなので、楽しみにしています。
近畿地方整備局は2府6県を所管しており、本当にいろいろな現場があります。飽きることなく仕事が続けられるのも魅力だと感じています。大変なこともありますが、それだけに誇らしい気持ちで仕事に取り組むことができると思っています。