以前、羽田空港のアクセス鉄道基盤整備について記事にしたところだが、そこから1年半が経過したころ、主要な工事が急ピッチで動き始めたという情報を得た。じゃあということで、東京空港整備事務所をはじめ、1月下旬時点で動いていた3つの現場を回って、取材してきた。
羽田空港アクセス線基盤整備事業の現場に迫るシリーズとして、全5編にわたって公開していく予定だ。
第4弾では、仮切り回し工事編として、西松建設の前田薫さん(現場代理人)と森本知三さん(監理技術者・副所長)にいろいろお話を伺ってきた。
前田 薫さん 西松建設株式会社 令和4年度 東京国際空港アスセス鉄道 連絡通路部仮切り回し通路築造工事 現場代理人
森本 知三さん 西松建設株式会社 令和4年度 東京国際空港アスセス鉄道 連絡通路部仮切り回し通路築造工事 監理技術者・副所長
立坑位置を迂回する仮切り回し通路をつくる
現場全景(西松建設写真提供)
――こちらの現場の概要、進捗などについて教えて下さい。
森本さん こちらの現場の隣に道路を挟んで第2ターミナルがありますが、その地下に京急電鉄の羽田空港第1・第2ターミナル駅の駅舎があります。京急電鉄として、列車の入れ替えのための引上線を整備するということで、線路を300mほど延伸するシールド工事を予定しています。そのシールド工事のための立坑を施工する必要があるのですが、その立坑の位置が第1と第2ターミナルを結ぶ歩行者通路とバッティングします。
この現場では、既設の歩行者通路の脇を掘削し、立坑位置を迂回する歩行者通路、仮切り回し通路をつくっています。地面からだいたい19mぐらい掘削して、仮切り回し通路のための地下2階構造の駆体をつくっているところです。
進捗としては、8割といったところです。現在は掘削完了し、駆体の構築が始まっています。今は地下2階部分の底版と壁と屋根の部分の型枠などを組んでいるところです。
鉛直性を維持したまま、くまなく地盤改良するのがポイント
地盤改良中の様子(西松建設写真提供)
――施工管理上のポイントはなんですか?
森本さん ここの地盤は軟弱地盤な上、地下水位が高かったので、掘削するに当たっては、まず地盤改良して地下水を止める必要がありました。鉛直ボーリングでセメントの改良体をつくっていくのですが、鉛直性を維持したまま、くまなく地盤改良するというのが、施工管理上の一つのポイントでした。施工後、下から水が出たということはないので、うまく施工できたと考えています。
あとは、既設の地下通路を施工した際に打設した支持杭が残っていたので、まずそれを撤去する必要がありました。当初の設計には含まれていなかったので、設計変更の協議をして、撤去したのですが、追加工事になるので、工期との折り合いをつけるのに、苦労しました。
前田さん 今作業している場所の直近が京急電鉄の駅舎で、改札付近となります。既設構造物に近接して施工しているのが、この現場のポイントとしてあります。既設構造物が沈下などのリスクがあるので、計測器を設置して管理しながら、施工を進めているところです。
森本から地下水の話がありましたが、地下水の急激な低下によって沈下することも考えられるので、掘削側は沈下しても外は沈下しないよう、掘削側の底部だけ地盤改良を行いました。地下水に対して非常に留意しながら、施工管理を行っています。
あとは、京急電鉄や道路通行、歩行者といった第三者に対する影響を抑えるということがあります。たとえば、大型の資機材の搬入は、できるだけ早朝や深夜に搬入するようにしています。
昼夜態勢は、施工管理する側の人間の態勢をどうするかがネックになる
コンクリート打設状況(西松建設写真提供)
――いわゆる働き方改革への対応はどうですか?
森本さん 基本的には土日祝日閉所で作業しています。ただ、工期を短縮しないといけないので、人数、パーティ数を通常より増やすとか、昼夜でやるといった工夫をしながら、工期短縮を図っています。
前田さん 昼夜で施工すると、現場の稼働時間は長くなるのですが、施工管理するわれわれの態勢をどうするかがネックになってきます。職人さんはきっちり8時間で交替するので残業の問題は少ないのですが、施工管理する職員はどうしても勤務時間が長くなってしまうからです。西松建設として、コアタイムのないフレックスタイム制を導入しているので、これを使って、勤務時間を調整することで対応しているところです。
――西松建設の社員はどれぐらいいるのですか?
前田さん 11人です。この現場レベルとしては少し多めですね。昼間作業のみであれば8人ぐらいで施工可能な現場だと思いますが、昼夜間作業に対応できる人数となっています。
工種はポピュラーだが、比較的特殊な部類に入る現場
――今回の現場のような工事は過去に経験があるのですか?
前田さん 私は色々な現場を施工してきました。トンネル、ダム、造成工事などです。この現場は、一般土木と言われる工事になりますが、ダムやトンネルなどと比べて、圧倒的に工種が多く、都心部に多い工事になります。
――森本さんはいかがですか?
森本さん 私は、この現場のような一般土木が多いです。この現場の工事自体は、比較的オーソドックスな現場、教科書に載っているような方法でやる現場だと思います。ただ、近接構造物があるとか、躯体の上に親杭をあずけて、それを土留めにするといったことは、比較的特殊な部類に入る現場だとは思います。
事前に工程を出し合って、お互い滞りなく作業できるよう最大限配慮
――ふだん現場で気をつけていることはなんですか?
前田さん 気をつけていることで言えば、現場においてはやはり安全が一番ということになります。また、工期の短縮を目標に掲げているため、協議や打ち合わせする際には、とにかく早く決める、現場を止めないということを常に念頭に置いて、資料づくりなどを行うよう気をつけています。発注者もレスポンスを早くしていただいているので、非常にありがたく思っています。
われわれのほうでも、森本に積算を任せていたり、他の副所長に施工計画を任せるなど、4人ぐらいで大きく仕事を分担して、各人で仕事が完結する体制で動いています。1人に仕事が集中しすぎないように、分散するということですね。
森本さん ウチの現場のすぐ隣に、京急電鉄発注の大成建設さんの現場がありますが、作業ヤードが一部重複しているところがあります。お互い必要な作業ヤードを確保するため、それぞれの工程を事前に出し合って、滞りなく作業ができるように協力しています。そこは、われわれとしても最大限配慮するように努めています。打ち合わせた内容は、発注者同士でも共有していただいています。