2024年以降の本格施工に向けて、取り組みを取材
関東地方整備局東京空港整備事務所が現在進めている羽田空港へのアクセス鉄道の基盤施設整備事業について、取材する機会を得た。
供用中の空港内に新たにアスセス鉄道を通すというのは、既存施設への配慮や軟弱地盤への対応などが必要となり、難施工が容易に予想される。2024年以降の本格施工に向けて、どう取り組んでいるのか。現地を取材してきた。
初のECI案件として、羽田空港内にシールド&開削でトンネルを抜く

今 隆之さん 関東地方整備局 東京空港整備事務所 事業調整課長
羽田空港内では、JR東日本が事業主体となり、田町(東山手ルート)、大崎(西山手ルート)、新木場(臨海部ルート)と羽田空港(国内線)結ぶ新路線の建設工事のほか、京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設(延長)工事が進められている。これらの工事のうち、トンネル躯体、通路、階段といった部分を整備するのがアクセス鉄道基盤施設整備事業だ。JR新線工事については、関東地方整備局の港湾セクションとしては、初のECI発注案件。CIM適用対象工事でもある。
この事業の意義について、今さんはこう指摘する。
「羽田空港では、平成22年10月のD滑走路や国際線ターミナル供用開始以降、滑走路運用や飛行経路の見直しを行い、年間発着容量が急速に拡大しています。これに伴い、羽田空港を利用する利用者数も大幅に増えていますので、平成28年4月20日の交通政策審議会にて、国際競争力強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクトの位置づけとして、羽田空港アクセス線の新設と、京急空港線羽田空港国内ターミナル駅引上線の新設として答申がなされています。
具体的には5つの向上効果が期待されるとしており、1つは国際競争力強化の拠点である都心や新宿、渋谷、池袋、臨海部等副都心とのアクセス利便性の向上、2点目はJR東日本などの既存ネットワークとの直通運転による多方面とのアクセス利便性の向上、3点目は東京駅で東北新幹線等と連携すること等による、北関東などとの大幅なアクセス利便性の向上、4点目は休止線などの既存ストックを活用することにより早期整備が可能である他、5点目として京浜急行引上線の新設により、羽田空港発着列車の増発などによるアクセス利便性の向上、といった効果が期待できるところです」
主な整備内容としては、JR新線のシールドトンネル(延長約1.9km)、開削トンネル(延長約500m)、京急引上線のシールドトンネル(延長約300m)、開削トンネル(約30m)のほか、駅舎、これらと接続する国内線ターミナルの躯体整備がある。

羽田空港アクセス鉄道の事業イメージ(国土交通省資料より)
開削トンネル施工中も交通影響などを最小限に抑える

JR新線の事業メージ(国土交通省資料より)
まずは、JR新線に関する基盤施設整備から見ていこう。新線工事の事業主体はJRであるが、空港内のトンネルなどの整備に限っては、国(東京空港整備事務所)が担当する。空港内のトンネルルートの選定、計画、概略設計はすべてJRが行った。
起点となる開削トンネル区間のルートとしては、既存の京急駅舎(羽田空港第1・第2ターミナル駅)からP3駐車場前の構内道路、バスプールなどを通り、東京空港警察署に隣接する空き地付近まで至る。
開削区間の施工上のポイントは、道路交通や駐車場利用者などへの影響を最小化しなければならない点にある。そのため、施工中も常に道路を通行でき、かつ駐車場に出入りできるよう、段階的に工事を進めていく。
開削する周回道路と国道357号は高さが揃っておらず、国道のほうが約6m低い。施工中は、この区間の高さをそろえるため仮設橋を架ける。バスプールでの施工についても、一定のスペースを利用できるよう配慮が求められる。

伊藤 祐馬さん 関東地方整備局 東京空港整備事務所 第八建設管理官室建設管理官
開削トンネル工事の設計積算を担当する伊藤さんはこう話す。
「空港島は人工島であるため、地盤が軟弱です。作業ヤードも限られており、設計施工上の課題は多い。ECI案件でもあるため、施工者から最新の技術提案をいただいた上で、その妥当性をしっかり評価しながら、課題を解決すべく設計を進めています。私は鉄道局からの出向の身ですが、鉄道局には現場がありません。自分が主体となってこのような難工事の設計に携わることができるのは得難い経験です」