公共工事の発注者が劣化中?仕事を理解していない技術者に気をつけろ!

公共工事の発注者が劣化中?仕事を理解していない技術者に気をつけろ!

仕事を理解しないで発注する発注機関の技術者

国交省や自治体、他の発注機関の技術者の劣化が著しいと感じるのは私だけだろうか。特に、仕事の内容をちゃんと理解せずに、ゼネコンや建設コンサルタントに発注している担当者が絶賛増殖中である。

そこで、とてつもなく残念な発注機関の技術者たちにめぐり合い、とても面倒なことになった事例を紹介したい。こんな発注者もいる、と頭の片隅に置いておけば、なんとか対応できるのではなかろうか。

作業工程を知らずに指示する「発注機関の技術者」

作業工程を知らない発注機関の技術者に当たると、仕事が面倒になる。手間暇がかかる仕事でも「そんなの、すぐできるでしょ?」と言ってくる発注者は案外多い。

ある現場でのこと。ボックスカルバート構築について、設計変更が生じた。当初の設計より区間が伸びたため、図面を作り直し、構造計算を追加し数量を拾うことになった。私は図面と数量を担当し、構造計算は支店技術部にお願いした。

その時の状況から、最短でもひと月はかかる、と報告しようとしたら、発注機関の担当者は「そんなのすぐできるでしょ?簡単じゃん」と一言。

それを聞いた上司が一言。「簡単ならあなたがやったらいいじゃないですか、すぐできるんでしょ?」と被せた。思わぬ反論に発注機関の担当者は沈黙。明らかに作業工程や内容を理解してないのがバレバレの担当者だった。

今は、発注機関が自分で頭を使い、手を動かす場面はほとんどないと聞くので、作業工程を理解できなくなってしまうのも無理はないかもしれない。しかし、設計業務の工期の多くが、半年から1年あることを考えれば、設計することが簡単じゃないことくらい、すぐ思いついてほしいものだ。

住民説明会で何も説明できず、集中砲火を浴びる「発注機関の技術者」

住民説明会は事業主として住民たちから信頼を勝ち取る絶好の機会である。なのに、信頼されるどころか、住民たちから集中砲火を浴びて、炎上してしまう発注機関の技術者がいる。

あるプロジェクトでは、事業内容を自分で説明せず、同席した建設コンサルタントの技術者に全部説明させていた。そして、質問タイムになり、住民の方々から「なぜ、あなた(発注者側の担当者)が説明しないのか?」との質問があった。

発注者側の担当者が「業務をやってるのは建設コンサルタントなので」と返すと、住民の方から「なら、あなたは何なのか?何をしているのか?」と聞かれて答えられず、叱責されていた。

事業主として、発注者としてあまりに無責任と言わざるを得ない。そのしわ寄せは「請負者に来るんだぞ!何だと思ってるんだ?」と思ってしまった。

道路や河川の管理者との協議が必要だと知らない「発注機関の技術者」

国道や県道、市町村道に接続する道路がある場合や、河川区域内での作業が発生する場合などは、それらを管理する機関や担当者との打ち合わせが必要である。工事や業務発注時に交付される仕様書や設計書にも、ハッキリ明記されていることだ。

にもかかわらず、道路協議や河川協議が必要だと知らない発注者側の技術者がいた。設計が完了して成果品を納品したあとに、協議をセッティングしていたのだ。当然、成果品の修正が必要になる。しかも、協議用の資料もまとめなけれはならない。

成果品の図面がそのまま使えればいいのだが、管理する機関によっては、協議資料用に図面を取りまとめて編集することを要求するところもある。まさにこの現場もそれに該当し、設計図面と協議図面の2種類作ることになってしまった。内容はほとんど同じなのに。

あろうことか、その発注側の技術者は、その協議もこちらに丸投げしてきた。発注機関の担当者は同席するだけ。何も説明しない。本来、外部機関との協議は事業主体がやるべきもので、請負者がやるものではない。資料作りに協力するだけだ。

ベテランの年齢の技術者なのに、それを知らないと知った時は、怒りを通り越して呆れてしまった。呆れてモノが言えないとはこういうことか、というのが理解できた場面だった。

他の機関の道路につなげたり、河川区域内で仕事するということは、他所の家に上がらせてもらうということだ。そんなとき、「お邪魔させてもらっていいですか?」と許可をもらってから仕事をするのが当然だ。協議しないということは、土足で他人の家に上がり込んで、好き放題にするのと同じである。

完成したものを壊すように指示をしてきた「発注機関の技術者」

次は正直言って「ふざけんな!」という事例。危うく「ふざけんな!」と暴言が口から出てしまうところだった。危ない危ない。

ある国道の擁壁を造っていたときのこと。設計図書や仕様書、公的な技術基準に基づいて積擁壁の構築をした。私は図面修正の担当だけだったので直接的な害はなかったのだが、発注機関の検査を受けていたとき、担当者が「この箇所、根拠がない。壊してやり直せ!」と言ってきた。

その箇所とは、擁壁の背面にある水抜きパイプの間隔だった。ほんの少しだが、基準と数字が合わない箇所があり、そこが写真にしっかり写っていたのだ。

「根拠ならここにある」と工事担当が基準を示した。その基準に記載してある数字と異なってはいたものの、反しているものではなかった。設計図と見比べてみても、所定の本数より少し多く入っていて、瑕疵が発生するわけでもない。

にもかかわらず、「壊せ!」と言ってきた。実は水抜きパイプの位置は、発注機関の担当者の指示によって配置されたものだったのだ!こちらとしては設計図通り配置しようとしていたのだが、発注機関の担当者は少し余分に入れて、水をできるだけ抜きたい、と言っていたのだ。そうすれば擁壁の安全性が保ちやすい(背面にかかる水圧が軽減されるから)との観点からだった。

自分の指示によるものを公然とないものにしようとしたのには、哀れみすら覚えた。「コイツ、なんも考えてねー」と。もちろん、そんな指示はお断り。ちゃんと検査は通って、会計検査も問題なかった。

一を聞けば十教えてくれる優秀な「発注機関の技術者」も

以上、4つ事例を紹介したが、こういう残念な発注者もいる、というのを認識して仕事に当たって頂きたいと考えて紹介した。心の準備ができていれば、対処しやすくなるからだ。

もちろんだが、仕事の内容をしっかり理解して発注して下さるところもある。こちらが一を聞けば十教えて下さるような発注機関の技術者もたくさんいる。実際、私も多くのことを勉強させてもらったものだ。発注機関の名誉維持のためにも、ここも強調しておきたい。

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大手建設会社に勤務する30代の建設技術者。 工事費1000億円超の現場で、計画・設計等を担当しています。
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