生コン工場にとって厄介な「コンクリートスラッジ」
生コン打設時に余ってしまう「戻りコン」という残コン問題は、前回の記事で紹介したように、 生コン業界だけではなく、施工者との問題意識の共有が必要です。
そして生コン業界では、その「戻りコン」問題とは別に、「コンクリートスラッジ」という、もう一つの残コン処理の問題についても、長年議論されてきました。
コンクリートスラッジとは、生コンを運んだ後のミキサー車を洗った洗浄水から出る汚泥のことで、どこの生コン工場からも少なからず発生する産業廃棄物です。
このコンクリートスラッジには、セメントや砂などが多く含まれていると同時に、そのままでは廃棄ができないため、脱水や乾燥の工程を経て処分をします。コンクリートスラッジの処分では、管理型の埋め立て処分場での処分が義務付けられていますが、近年では処分場の確保が困難になってきていることや処分費の高騰など、処分をするにしても多くの問題が発生しているという厄介モノなのです。
スラッジの管理方法に問題がある生コン工場も多い
スラッジの管理方法は工場によって異なりますが、ミキサー車の洗車場に分級設備が導入されていてスラッジと骨材などを分級している場合と、分級設備がなくスラッジと骨材などがそのまま混ざった状態の場合とに分かれます。
分級している場合はフィルタープレスされたスラッジケーキとして管理されますが、分級されない場合は工場敷地内などに野積みをして乾燥することが多く、セメントに含まれる六価クロムなどの有害物質の存在を考えると、コンプライアンス上の問題が多い管理方法とされています。
工場内での野積みを長期間放置すると、保健所などから是正指摘の対象となるのです。
工場内に野積みされたスラッジの山
コンクリートスラッジの再資源化、有効活用方法
数十年も前から、地球環境保全や工場側の費用負担軽減という観点から、このコンクリートスラッジを有効活用できないかという論文や研究は数多くされています。しかし、実用化や一般的な普及までには至っていないのが現状です。
これまでの多くの研究は、スラッジを加工するなどして、コンクリート混和材や脱リン剤、酸性排水の中和剤などとしての再資源化を試みるものだったようですが、より広く普及する再資源化の糸口が必要です。
コンクリートスラッジの有効活用としては、再生路盤材の一部としての使用方法などが挙げられますが、その使用量はそれほど多くなく、スラッジの発生量に対して少ないため、あまり有効な方法とはいえません。
現場で再利用される再生路盤材
コンクリートスラッジの成分を考えると、コンクリートが元になった廃棄物なので、成分としては強アルカリです。その性質を利用して、例えば現場での埋め戻し材として使用できれば、白アリ対策にも有効でしょうし、「通常の土などよりも締まりがいい」ということで、工場に引き取りに来る業者も実際います。
また最近では、ポンプ圧送の先行材としての使用方法も確立されつつあるようです。もともと先行モルタルなどはそのまま廃棄物となるものなので、コンクリートの廃棄物であるスラッジを先行材として使用できるのであれば、環境的にも非常に良いものであると言えます。
持続可能な社会を目指して残コン問題解決を!
ポンプ先送りのために現場内に廃棄された生コン
このように、生コン業界からの目線ではありますが、環境に配慮した持続可能な社会を目指す意味でも、残コン問題というのは解決しなければならない喫緊の課題だと多くのコンクリート業界関係者は口を揃えて訴えています。
しかしながら、これは生コン業界だけではなく、設計者や施工者、さらにはポンプ圧送業界などの周辺業界も一緒になって取り組むべき問題であり、そうしなければ解決できない問題なのです。