【反論】「工事情報共有システム(ASP)」は土木技術者に浸透済みだ!

「施工の神様」の記事に異論!

先日、「施工の神様」に、わが目を疑うような記事が掲載されていました。それは、「工事情報共有システム」を導入すると「書類の差し替え」が困難に?という記事です。

残念ながら、この記事は「工事情報共有システム」に対する認識がかなりズレています。著者であるJackさんを非難するわけではありませんが、たまたま置かれていた環境が残念だったのかとお察しします。そして、このような土木技術者の方がまだ存在することに、土木業界全体が抱えている大きな課題を垣間見た気もしました。

今、国土交通省の仕事をする上で「工事情報共有システム」は必須アイテムですし、このシステムがないと仕事は進みません。ぜひ土木施工管理技士の皆さんには「工事情報共有システム」について、正しい認識を持っていただきたいと思います。

土木工事の情報共有システムのメリット、デメリット

まず、土木工事の情報共有システムについては、もはや「興味を持ちましょう」という時代は過ぎ去り、土木技術者は理解していて当然の時代です。

私は、すでに「工事情報共有システム」は一般化されていると思っていますし、このシステムについて来れない方には、ご退場いただくしかありません。しかも、土木工事の情報共有システムに、デメリットはないと断言できます。Jackさんが懸念している「書類の差し替え」も可能です(ただし、主任監督職員の承認は必須)。

検査官が工事施工中、システムの内容に目を通すなんてこともありません。決裁、書類の共有などについては、検査官を情報共有システムの仲間に入れる必要はなく、検査官がそれをお願いすることも一切ありません。

ですから、施工管理技士、監督職員、発注者各位は、工事情報共有システムの導入に頭を悩ませることは絶対ありません。

「工事情報共有システム」にはメリットがたくさんあります。

例えば、

  • 紙媒体でやり取りがない(経費削減)
  • 決裁が迅速になる(誰で決裁が止まっているかすぐ分かる)
  • 書類を役所に届ける必要がない(交通費はもとより、貴重な時間を有効に活用できる)

さらに、電子納品作成ソフトと連動しているので、完成書類作成も楽チン!

くどいようですが、「工事情報共有システム」は、国土交通省の仕事をする上で、必須のアイテムです。


「工事情報共有システム」はもう浸透している!

「工事情報共有システム」とは、ASPという情報共有システムを活用したもので「ASP型工事情報共有システム」とも呼ばれます。ASPとは「アプリケーションサービスプロバイダ」の略称です。

なんのこっちゃ、よくわかりませんよね?

ウィキペディアでは次のように説明されていますが、これも、なんのこっちゃ、よくわかりません。

「ASPはアプリケーションソフトの機能をネットワーク経由で顧客にサービスとして 提供することであり、それを行っている事業者である。通常、利用者はブラウザソフト などを使用してインターネットなどのネットワークを経由し、遠隔地からASPのサーバにアクセスすることで、そのサーバ内に格納された各種アプリケーションソフトの機能をサービスの形で利用する。」

・・・簡単に説明すれば、民間のプロバイダ(システム会社)と契約し、その契約先のソフトウェア(ソフトウェア稼働環境)を使用して、工事に関する情報を共有する、というシステムです。

自分でソフトウェア稼働環境を準備する初期投資、維持メンテナンスやセキュリティに関するメンテナンスコストを考えると莫大な金額になるので、プロバイダに小額の利用料を払うことで、「工事情報共有システム」の環境を全て整えることができます。

こういう商売をしている会社(プロバイダ)が20社ほどあり、そのほとんどが24時間365日の運用・監視体制と万全のセキュリティ対策を整えているので、自身でデータ管理するよりも、はるかに安全です。

「工事情報共有システム」(ASP)の開発経緯

「工事情報共有システム」(ASP)が開発された経緯としては、次のような建設現場の問題点を解決する目的がありました。

  • 電話での情報共有
    →記録に残らない
  • FAXによる情報共有
    →セキュリティなし
  • 電子メールによる情報共有
    →記録が個人に依存、送信容量に限界
  • ファイルサーバーによる共有
    →アプリケーションがない、アクセス制御が難しい、セキュリティ不安

こうした課題を克服する仕組みとして、「工事情報共有システム」(ASP)が開発されたわけです。

余談ですが、「工事情報共有システム」の始まりは、10年以上前に出てきたキーワード「CALS/EC」(公共事業支援統合情報システム)です。私自身、CALS/ECの発展に寄与してきた経験を持っています。

◎CALS/ECの3大要素

  1. 情報の電子化:情報を紙に出力することなく保存・授受を行う。
  2. 通信ネットワークの利用:電子化された情報をインターネット回線で受け渡し。
  3. 情報の共有化:データを一元管理することで、常に最新のデータの活用。

それが具現化したのが、今の「工事情報共有システム」です。国土交通省では、「工事情報共有システム」の全国的に導入を推進し、いまや必須アイテム。これなしでは、もはや仕事が進みません。

「工事情報共有システム」(ASP)の役割とは

「工事情報共有システム」(ASP)は、工事情報の共有と有効活用によって、次の役割を担っています。

  • 事実認定=工事プロセスの証明
  • 異なる組織間のグループウェア=発注者+ALL受注者+支援業務
  • 受注者のアピールを可視化
  • 災害異状時の基幹システム

その中でも「工事情報共有システム」の画面上で見て取れることは、「無条件で事実認定」される点が重要です。

例えば、

  • 品質証明に係る体制が有効に機能していた事実
  • 現場に対する本店・支店による支援体制が確立していた事実
  • 監督職員への報告を適時・的確に行っていた事実

また「工事情報共有システム」は、施工中の利用に限らず、あらゆる検査時に役立つものです。


検定書類のムダを省く「工事情報共有システム」(ASP)

工事検定前日のよくある光景

上の写真は、昔の検査前日の光景です。打合せ簿だけで約400件にもなり、大量のインデックスやテープラベル、書類はダンボール3箱。これは1年間のある工事の成果です。

しかし検定書類の多さや、ラベルの美しさは、工事成績の評価対象ではなく、その莫大な苦労は、5年の保存期間のあと、廃棄されることになります。こういうムダな労力が、「工事情報共有システム」(ASP)を導入することによって不要になります。

さて、「工事情報共有システム」(ASP)は、工事検査のときに役に立つと言いましたが、どう役に立つのか?

例えば工事検定時に、検査官から「施工計画書変更の届出は何回ありましたか?日付と共に順を追って確認させてください」という質問は、ほぼ確実に聞かれる事項です。

その場合、施工計画書の提出手続きに用いた「打合せ記録簿1通」を呼び出すのは、紙の打合せ記録簿でも、電子データを開くにしても、まあ簡単です。すぐに見せる事は出来るでしょう。

では、こういう質問をされたらどうでしょうか?

「当初はこれで、1回目の変更はこれで、2回目の変更はこれ!」

こんなテンポで、さっさと出せますか?紙では絶対無理。こんな方法では工事検査が円滑に進むわけがないし、焦りますよね。変更履歴の一覧なんかでも良いのですが、客観的事実を持って日付を証明するには、打合せ記録簿、もしくはそれと同等の担保を持つもので証明しなければなりません。

しかし、「工事情報共有システム」(ASP)なら簡単です。電子決裁を行っていた画面で検索すればいいだけです。「施工計画」と検索したら、関係するものだけ抽出できて当たり前。この画面で、当初の提出がいつで、変更の履歴と日付、どんな変更だったのかの概要までわかります。

「工事情報共有システム」(ASP)の活用方法

それでは最後に「工事情報共有システム」を運用する上で、そのメリットを最大限に生かす活用の具体例と効果を紹介します。

それは関係者全員参加型の情報共有サイトを開設する、ということです。そのメリットは、単にシステムの利用開始(ログイン操作など)が楽になるというだけでは意味がありません。

「工事情報共有システム」は、業者間の横の連絡や、発注者や協議会等からの一斉連絡が簡単かつ確実に行われてはじめて、その効果が現れます。

従来の運用方法ですと、工事ごとの受発注者の情報共有はできますが、工事ごとに完全に仕切られているため、工事間の情報共有はできません。したがって、情報発信者は、統一したプロバイダを使用することを促さなければ意味がありません。

そこで、通常使う個々の工事ごとのASPサイトとは別に、関係者全員が共同で運用できるサイトを作成します。総合サイトと工事ごとのサイトを切り替えるだけですので、煩わしさは一切ありません。これを使って、工事請負者同士の情報共有と連絡手段とします。スケジュール管理、掲示板、写真共有、ブログ等の機能もあります。

役所から指定は出来ませんので、あとは受注者さんが形成する安全連絡協議会等で統一するよう決めてもらう必要があります。

関係者全員参加型の工事情報共有総合サイト

土木工事の施工管理技士は「工事情報共有システム」を熟知せよ!

「工事情報共有システム」(ASP)の初心者からは、初期段階で会社の情報を細かく入力しなければならない?との問い合わせもありますが、それを考える必要はありません。登録したい方の名前、メールアドレスをプロバイダに伝えることで、プロバイダが勝手にやってくれます。

使い方が良く分からない?との問い合わせについても、プロバイダが来てくれて、実践的に説明しますので、初心者の不安は一瞬で吹き飛びます!

繰り返しますが、この「工事情報共有システム」無しでは、もう公共工事は進みません。土木技術者は絶対にマスターしなければなりません。「興味を持ちましょう」という時代ではなく、出来て当たり前です。理解していなければ、時代錯誤です。ついて来れない方は、ご退場です!

私も社内情報共有ツールとして、ASPを使ってます。インターネットが繋がれば、会社、家、どこでも情報確認が出来ます。特にスケジュール管理は重要なので重宝しています。

土木工事のみならず、機械設備工事や電気設備工事にも「工事情報共有システム」(ASP)は浸透してきています。ぜひ、デメリットを言い訳にしないで、学んでください!

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某省庁OB。数多くの土木工事等に従事。 退職後、受注者としてのスキルを高めるため、民間企業で修行し、現在は発注者支援業務に従事中。技術提案、工事費積算、現場管理、完成図書作成、CALS/EC等々のスキルあり。
自分の持っているスキルを存分に周知し、皆様方の一助となれれば幸いです。
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