法面専門業者が厳選した「法面機械」10選
道路や宅地を造成する際に、山地を掘削したり、盛土したりする法面工事。
法面工事で、アンカー工、鉄筋挿入工、ロックボルト工などを行う際には、たくさんの削孔方法、削孔機械があります。
そして、法面工事を成功させるためには、「削孔機械の選定」が大切です。機械指定がある設計もあるので、機械の種類をよく把握して施工することが法面業者には求められます。
そこで今回は、法面専門業者であり、機械好きでもある私が、法面工事の削孔機械10基を厳選して紹介します。
※この記事は『新エンタの法面管理塾』の記事を再編集したものです。
法面機械その1.「ロータリーパーカッション スキッド型」(グランドアンカー工)
ロータリーパーカッション スキッド型(定置式)
ロータリーパーカッションのスキッド型(定置式)。このタイプを用いた施工方法は、基本的に足場上での施工となります。足場が無いと固定できず、施工が難しくなるため、時には土足場の上に杭を打ち、固定して削孔する場合もあります。
削孔機は重量が重くなれば、削孔能力も上がる傾向にありますが、今は1.5t前後が主流で、大きくても2.5tクラス。3t以上のクラスはあまり使うことがなくなってきました。昔はよく165mmの削孔径で、20m以上のアンカーもあったのですが、最近のアンカーの主流径は90mmです。
法面機械その2.「ロータリーパーカッション クローラー型」(グランドアンカー工)
ロータリーパーカッション クローラー型(自走式)
ロータリーパーカッション クローラー型(自走式)。ロータリーパーカッションのクローラー型は、土足場での施工が基本です。法面では逆巻施工や、都市土木での仮設アンカー、薬液注入での観測井戸や2重管ストレーナー方式などで使用します。※逆巻施工とは、山を1~2m掘削し、アンカーを打設・定着後また掘削する事です。
最近では2重管ロックボルトでも使用します。主流は10t以上クラスですが、最近はもう少し大型機も出ています。
法面機械その3.「アタッチドリル クローラー型」(鉄筋挿入工・ロックボルト工)
アタッチドリル クローラー型(自走式)
アタッチドリル クローラー型(自走式)。これは吊り式削孔機を、BH(バックホウ)に取り付けた機械です。削孔する際、削孔ロッド(穴を掘る棒)を山に押しつけますが、反力はバックホウで押さえつけるため、基本的に不要です。作業効率もよく、機械セットも簡単でドンドン削孔できます。土足場での施工が基本となり、0.45BH~0.7BHにセットできます。
ドリフターと呼ばれるハンマーの部分は、エアー駆動が主流です。特に、ヤマモトロックマシンがかなりのシェアを持っている印象です。
法面機械その4.「吊り式削孔機」(鉄筋挿入工・ロックボルト工)
吊り式削孔機(吊り下げ式)
吊り式削孔機(吊り下げ式)。クレーンで吊り上げ、削孔を行う機械です。上記「3.アタッチドリル クローラー型(自走式)」のバックホウをクレーンに変えた施工方法です。土足場がない、打設標高が高い、クレーンが設置できる、という条件の現場の場合、この吊り下げ式削孔機を適用します。
反力が取りにくいのですが、後ろ袖にウインチを取り付け、山にアンカーを打設し、ワイヤーで固定する方法で反力を確保します。ただし、たまに強風に煽られてしまい、非常に危険な場合があります。
機体の重さは、小さいサイズの削孔機は大体700kgで、最大でも1100kg程度です。吊り式削孔機のことを「スカイドリル」と言う方が多いのですが、それは間違いで、スカイドリルとはクレーンの先にこの削孔機を搭載して施工する工法の一つです。
法面機械その5.「ロータリー式ボーリングマシン」(薬液注入工・温泉・大口径杭)
ロータリー式ボーリングマシン(スキッド式)。この機械はパーカッション(打撃)のないロータリー式ボーリングマシンで、回転と推進力で削孔していきます。昔は、この手の機械でロックボルトや水抜き(水平ボーリング)なども施工していたらしいですが、私はやった事はありません。薬液注入工では常にこれを使用しています。
削孔ビットはメタルクラウンを使用。この機械は小型機から大型機まであり、大口径杭や温泉掘削などでも使用します。杭の場合、ダウンザホールハンマを使用します。
この機械は軽量削孔機という部類で積算されます。
法面機械その6.「スプリングドリル」(鉄筋挿入工・ロックボルト工・アンカー工)
スプリングドリル(スキッド式)。パーカッション(打撃)部分がスプリング方式という、新しい打撃方法の機械。機械重量が約500キロで非常に取り回しがよく、標高の高い足場の施工に向いています。このクラスにしてはパワーもあり、しっかりと2重管削孔が出来る機械です。2重管鉄筋挿入工ではかなり重宝します。ただし15mを超えるアンカーの場合、土質によっては厳しくなります。
10~15mのアンカーなら、施工能率の有無もありますが、ほぼ網羅できる機械です。
法面機械その7.「インバーターチゼル」(鉄筋挿入工・ロックボルト工・アンカー工)
インバーターチゼル(スキッド式)。電気で回転と推進力を得る機械です。機械自体は非常に小さく、軽量削孔機という部類に入ります。
サイズの割に、回転トルクや推進力が強いですが、電気の制御ボックスが雨、ホコリに弱いため、防護はしっかり行う必要があります。
法面機械その8.「スロープドリル」(鉄筋挿入工・ロックボルト工・シングル削孔)
スロープドリル(スキッド式)。YD100と言う削岩機が搭載されています。吊り式削孔と同じ機首です。小型機なので、狭小地での施工が可能です。
全てエアー駆動で、配管等が楽。軽いので施工性は抜群です。ただ、打撃力が強すぎて、ロッド、カップラーが折れる事が結構あります。
法面機械その9.「削岩機(ジャックハンマー)15Kgタイプ」(鉄筋挿入工・ロックボルト工)
削岩機(ジャックハンマー)15Kgタイプ。これは、まさに手堀り!人力削孔です。とにかくツラい仕事になります。手がブルブルになり、耳がキーンってなります。
下の写真は、自穿孔式ロッドをつないで削孔している最中です。地山が自立しない場合は、自穿孔式ロッドを使用し、削孔完了後に挿入完了となります。自立する場合は通常のロッドを使用し、削孔後挿入します。
簡易足場を作って、最大削孔長2.5m。それ以上は厳しくなりますし、積算上では施工不能となっていたと思います。
削岩機(ジャックハンマー)15Kgタイプ
法面機械その10.「無足場アンカー工法」(鉄筋挿入工・ロックボルト工・アンカー工)
無足場アンカー工法(無足場式)。足場施工できない箇所での施工に向いています。ワイヤーで反力を取りながらの施工方法で唯一、2重管削孔が確実に施工できる機械です。これ以外の工法機械で2重管削孔ができる機械を私は見た事がありません。
また、バックハンマーを使用しながら、インナーでダウンザホールハンマーを使えるため、このクラスの削孔機では削孔速度がとにかく早いです。