混和剤・混和材は、コンクリートと水の仲介役
コンクリートの大原則を覚えているだろうか?
- 可能な限り水量を少なく
- しっかりと養生する
生コンを練る際、水分が多ければ多いほど練りやすい。しかし、過度の水分は後に毛細管空隙として残り、構造体の耐久性に影響を及ぼす。実は、水和反応に必要な水分はそんなに多くない。セメント量に対し25%ほどが科学的に結合する。ゲル水として吸着される15%と合わせても40%あれば十分だ。
では、なぜ水セメント比(W/C):50%だとか、W/C:65%などと水和に必要な量よりも多くの水を入れなければならないのか?
それは、施工性・流動性を確保するためだ。バサバサのコンクリートは、型枠にも収めにくく、ポンプでも圧送しにくい。でも水は極力少なくしたい。
そんな悩みを解決するのが今回のテーマ、「混和剤・混和材」だ。
コンクリートのJIS混和剤は7種類
「混和剤」と「混和材」。どちらも読みは同じだが、それぞれ全く別物だ。
その違いは「液体」か「粉体」か、使用量が「少量」か「大量」か、で分けられる。
混和剤が「液体・少量添加」、混和材が「粉体・大量添加」となる。
まずは「混和剤」について。JISで区分される7種を紹介しよう。
- AE剤
- 高性能減水剤
- 減水剤
- AE減水剤
- 高性能AE減水剤
- 流動化剤
- 硬化促進剤
7つもあるが、基本は「AE剤」と「減水剤」である。
「AE減水剤」は「AE剤」と「減水剤」の合体したもの。「高性能」がつくとその名の通り高い性能が付与される。他の6種が流動性を高めるのに対し「硬化促進剤」などは明らかに別物である。
以下が、JISで規定されている数値の表だ。
コンクリート用化学混和剤を用いたコンクリートの性能品質
それでは、細かくその違いを説明していく。
コンクリートのAE剤と減水剤とは
「AE剤」とは、「空気連行剤」のこと。微細な空気泡(エントレインドエア)を発生させ「界面活性作用」によりコンクリートの流動性を高める。
洗剤から発生する丸くて細かい「泡」を想像してほしい。その泡によるボールベアリング効果で、生コンクリートのスランプが高まり流動性も上がる。
つまり、水を増やさずにスランプが増やせるということ。同じスランプを得るための水量が減らせるということだ。水が減るので、ブリーディング量も減少。さらに、このエントレインドエアにより、「耐凍害性の向上」という効果も得られる。
コンクリートにとってはいい事ずくめである。正直、AE剤の入ってない生コンクリートなど、見たことがない。
空気の話が出たので、ついでにもう1つ「エントラップトエア」について覚えておこう。
エントラップトエアとは、生コンクリートの練り混ぜ時に巻き込まれてしまう余剰な空気のこと。通常は空気量4.5%のうち、1.0~1.5%ほど存在している。
続いて「減水剤」とは、「セメント分散剤」のこと。オキシカルボン酸が主成分で、凝集塊を分散させる。凝集塊とは、セメント粒子がダマになって水を取り込んだ塊のこと。これらを静電気的に分散させて、取り込んだ水を有効に活用できるようになる。
また、セメント粒子にオキシカルボン酸が吸着されると、水を引き寄せ、粒子間の摩擦が軽減され動きが滑らかになる。(湿潤作用)つまりは、流動性が高まるということ。
「AE剤」は空気泡を連行するだけだが、「減水剤」はセメント粒子に作用する。ここが大事なところだが、これによりセメントと水の接触速度をコントロールできる。つまりは、凝結時間の調整ができるということ。「減水剤」と名がつくものには、「遅延形」・「標準型」・「促進形」という区分がある。その所以がこの接触速度のコントロールにある。
繰り返しになるが、「AE剤」はただの「泡」。凝結時間の調整はできないことを覚えておこう。
コンクリートの減水率の違い
減水率の違いも見ておこう。そんなに難しいものでもない。
JISで規定されているのは、AE剤が6%以上で、減水剤が4%以上。AE減水剤はそれを単純に足した数値で10%以上。
高性能AE減水剤は、現存する混和剤の中で最高級の性能を有する。その減水率は18%以上と群を抜いている。強烈な減水率、強烈なスランプ保持性能を持ち、高強度コンクリート(60~100N/mm2)には不可欠の存在となっている。より強力な「静電気的反発作用」と「立体障害効果」で減水効果、凝結遅延を促す。
ここで大事なポイントをひとつ。18%以上の減水率とはどういうことを意味するのか考えてほしい。
そう。凝結を遅延させる目的がもともとにあるので、「促進形」というのは存在しないのだ。
ここで、もう一度表を確認しておこう。
コンクリート用化学混和剤を用いたコンクリートの性能品質
コンクリートの高性能減水剤と流動化剤とは
さて、残りは「高性能減水剤」「流動化剤」だ。これらは似た性質を持っており、仲間と思ってもらって構わない。
高性能減水剤の特徴は3つ。
- 非常に高い減水率(12%以上)
- 添加量を増しても、空気を連行しない
- 経時変化が大きい
経時変化が大きいということは、流動化した状態を長く保持できないということ。そういった理由から、一般の生コンプラントでは使われず、コンクリート製品工場で使用されている。
流動化剤の特徴は、基本的に現場で後添加することである。主成分が高性能減水剤からできているので、経時変化も大きい。保って30分がいいとこだろう。だから工場添加なんてもってのほか。荷卸しの直前にトラックアジテータに投入して、スランプを増大させる。また、現場での後添加が目的なので、減水率の規定がない。というより、規定のしようがないのだ。
最後に一点、高性能減水剤・流動化剤の特異な性質を紹介しよう。
他の混和剤は、温度が高いほど効きが悪くなる性質を持つ。効きが悪いということは、添加量も増え経済的ではない。しかしこの性質が、高性能減水剤では逆転する。コンクリート温度が高いほど、減水効果は高まるのだ。流動化剤も高性能減水剤が主成分なので、この性質を引き継ぐ。
コンクリート混和材の特徴
さて、「粉体」で「大量」に添加するほうの「混和材」であるが、主に5種類ある。
- フライアッシュ
- 高炉スラグ微粉末
- シリカフューム
- 膨張材
- 石灰石微粉末
フライアッシュや高炉スラグ、シリカセメントに関しては混合セメントの項で説明したのとほぼ同じだから参照してほしい。
膨張材、石灰石微粉末についても、そんなに多くの特徴があるわけではない。以下の表にまとめたので、しっかりと目を通しておいてほしい。
混和材特徴まとめ
パンと生コンクリートの作り方は似ている
混和剤の出現は「水をなるべく減らしたい」というコンクリート業界での改良の歴史といっても過言ではない。コンクリートは「水が少なければ少ないほどよい」のだ。
ところで今回の話、実は製パン工程に似ている。パンを作る際、小麦粉を水で練って、塩、酵母などを混ぜ込む。パンの生地も水が多すぎると、形が保持できない。かといって水が少ないと、ボソボソになり焼き上がりに難が出る。
そんな時はどうするのかというと、バターや卵、オリーブオイルといった滑る材料を混ぜ込むそうだ。まさに混和剤と同じ発想である。こねる手の体温も、生地に影響を及ぼすらしい。セメントも小麦粉も同じ粉ものである。似た特質を持つのも納得ではなかろうか。
さて、水を減らした固めのバンズで、トマトとビーフパティ、レタスをはさんだハンバーガー。混和剤への思いを振り返りながら食してみるのはいかがだろうか?