関東技術事務所建設技術展示館(千葉県松戸市)で開催された、関東地方整備局と日本道路建設業協会による「i-Construction技術講習会」

【盛況】ICT舗装工の測量と出来形管理を学ぶ「i-Construction技術講習会」

関東地方整備局「i-Construction技術講習会」(ICT舗装工)

ICT舗装工の測量と出来形管理の基礎を学ぶのが目的。

そんなi-Construction技術の講習会が11月27日、関東技術事務所建設技術展示館(千葉県松戸市)で開催された。

主催は国土交通省関東地方整備局と、一般社団法人日本道路建設業協会。協力団体は、日本測量機器工業会。

このi-Construction技術講習会には、「これからICT舗装工を始めたい」という設計担当技術者や、すでにICT舗装工を手掛けている大手道路舗装業者の施工管理者などが参加した。女性の姿もあった。

i-Construction技術講習会は盛況、女性技術者の姿も

ICT舗装工とICT浚渫工(河川)の発注状況

関東地方整備局企画部 施工企画課 建設専門官 加藤貞夫氏

i-Construction技術講習会では冒頭、関東地方整備局の加藤貞夫氏(企画部 施工企画課 建設専門官)が、ICT活用工事の発注状況など、関東地方整備局によるi-Constructionの取り組みについて説明した。

ICT活用工事のうち、ICT舗装工の発注状況は、下記の通りだ。

ICT舗装工等の発注状況/国土交通省

平成29年度におけるICT舗装工の発注状況(平成30年3月31日現在)は、契約件数が17件、適用済数が6件。

平成30年度(同9月20日現在)では予定件数9件、契約件数2件、適用件数3件。予定件数が少なめなのは、ICT舗装工は路盤工を対象としており、新設工事での活用に留まっているからである。

平成30年度に始まったICT浚渫工(河川)は、予定件数が2件(9月時点で適用はゼロ)。ICT浚渫工(河川)での本格的な適用はもう少し先になりそうだ。


ICT土工の基準類の落とし穴と積算

ICT土工は平成28年度の開始当初、さまざまな基準類が施工業者を悩ませた。

しかし、国土交通省と国土技術政策総合研究所により順次、基準類は見直され、使いづらかった基準は削除。代わりに生産性向上の効果が認められた新技術を導入し、絶えず更新している。

直近では、今年3月に行われた基準類の改定で、国土地理院未認定機器(スコープの付いていないTSなど)を使っても良いことになり、台車などの移動体の上に地上型レーザースキャナを置いて移動しながら測ることも可能となった。

トータルステーション等光波方式/日本測量機器工業会(JSIMA)

ICT舗装工とは、舗装工のうち下記のすべてにICTを用いる(全面的な活用)というものだ。

  1. 3次元地上型レーザースキャナ(TLS)による事前測量
  2. 3次元設計データ作成
  3. ICT建設機械(MCブルドーザー、MCグレーダ等)による施工
  4. 3次元データによる出来形管理
  5. 3次元データ納品

ICT土工が始まったばかりの頃、この「すべてに」という言葉のワナに多くの工事業者が引っ掛かった。

UAV(ドローン)を使いづらいような場所で、しぶしぶUAVを使ったり、明らかに従来機を使った方が早いような作業にも、ICT建機を投入したりすることがあった

従来建機も活用しやすい積算対応

しかしICT舗装工では、今年度に行われた見直しなどもあり、「すべてに」という言葉にこだわらなくても良くなっている。

たとえば出来形管理の途中過程で、「TSを使った方が生産性を向上できる」と判断した場合は、わざわざ費用の掛かるUAVやTLSで、その都度3次元出来形管理をしなくてもいい。竣工前にまとめて3次元計測をすれば良いということになった。

また、小規模土工にもICT施工が適用できるよう、今年2月から従来建機も活用しやすい積算対応に変わった。これまでICTの積算は、ICT建機の使用実績に関係なく、ICT建機25%+通常建機75%となっていたが、今回の変更でそれぞれの建機の使用割合で土量を算出して、清算できるようになっている(下図参照)。

ICT施工の新積算/国土交通省

つまり、本当に使う必要のある期間だけICT建機をレンタルしやすくなった。

建設業界全体としても、数少ないICT建機を融通し合って使えるようになり、レンタル業者や自社で所有する従来機も、これまで通り使い続けられる。

ICT施工導入のための中小企業向け各種補助金

さらに、中小建設会社に対するICT施工導入のための、各種補助金や税制優遇・低金利融資なども、数年前と比べるとかなり充実してきた。

中小建設会社に対するICT施工導入のための補助金/国土交通省

「応募しようとしたら、募集期間が過ぎていた」ということもよくある話だが、現時点でも応募可能な制度や、次回の応募期間の情報なども教えてくれるため、いつ問い合わせてみても損はない。

「ICT施工はお金が掛かるからムリ!」と頭から決めつけずに、使える制度がないか調べてみることをお勧めしたい。


3D-MC建機の活用効果

講師を勤めた日本道路建設業協会・上野健司氏

続いて、日本道路建設業協会の上野健司氏が、道路建設でよく活用されるICT技術について説明。トピックスは、3D-MC(マシンコントロール)を活用した場合の生産性向上の効果だ。

日本道路建設業協会によると、最も効果が上がるのはMCブルドーザー、MCモータグレーダの活用である。「丁張の要員が要らなくなる」「検測手間が省ける」というのがその理由だ。

一方、アスファルトフィニッシャ、スリップフォームペーバ、切削機を活用した場合では、TSが複数台必要になるのが課題だ。

3D-MC活用効果 / 日本道路建設業協会資料

「結局、経験の浅いオペレーターとベテランとどちらがICT建機を使えば良いのか」という、ユニークな検証結果も発表された。

同協会と土木研究所との共同研究によると「ベテランが使った方がメリットが出る」「新人が使うと運転に余裕が生まれ安全性が向上する」という結果が出た。

もともと、ICT建機は「新人でもまるでベテランオペレーターのように運転できる」という“触れ込み”で、華々しく登場したものだが、ICT建機はレンタル料も高いため「新人には使わせられない」というのが現状だろう

ただ、一旦事故が起きてしまえば、レンタル料の比にならないぐらいの不利益を被ることも確かである。安全性を考慮して、敢えて新人にICT建機を使わせるというのも、選択肢に入れてみても良い。

地上形レーザースキャナ(TLS)で精度確認試験を体験

日本測量機器工業会(JSIMA)の講師陣

技術的な講習では、日本測量機器工業会(JSIMA)の講師陣による座学と実習を実施。

座学では50ページほどのテキスト『ICT施工技術講習会テキスト・舗装工編Ver.2.0』に沿ってICT舗装工の流れと使用するソフトウエアについて学んだ。実際に現場で測量に携わっている参加者も多いため、従来の測量との違いを説明するに留まった。

精度確認試験を体験(鉛直方向)

野外に会場を移しての実習では、地上形レーザースキャナ(TLS)を使った実習を実施。受講者は施工計画書(起工測量)の提出時に必要な精度確認試験を体験した。今回の講習会から、受講者が実際に実機を体験できる講習内容に変更したという。

精度試験〈水平方向)

その後、再び座学に戻り、ソフトウェアによるデータ処理や、出来形帳簿の作成について講義を受けた。大まかなデータ処理の流れを説明したのみだが、別日程で行われる「i-Construction実技講習会(実践編)」では、実際にソフトウエアを使って3D設計データの作成・整理を行うなど、さらに具体的な実習を行う。

測量後のデータ処理について説明

「ウチではムリだ」を「やれるかも」に

以上が「i-Construction技術講習会」(ICT舗装工)の講習内容だ。

i-Constructionをめぐっては、非常に早いテンポで使用可能な機材や適用される基準類が変更されている。

しかも、より現場で使いやすくすることを目指す、良い変化が多い。1年前に講習を受けた際に「ウチではとてもムリだ」と思った施工業者も、今受講すれば「ウチにもやれるかも」に変わる可能性が高いという。

ただ受講するだけでなく、自社の「やれる可能性」を追求する場としても、「i-Construction技術講習会」に参加する価値は今後さらに膨らむだろう。

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建設・通販の業界紙/メディアに身を置くフリーライター。 戦前のコンクリートの“断面”を眺めるのが趣味です。

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