ICT土工の基準類の落とし穴と積算
ICT土工は平成28年度の開始当初、さまざまな基準類が施工業者を悩ませた。
しかし、国土交通省と国土技術政策総合研究所により順次、基準類は見直され、使いづらかった基準は削除。代わりに生産性向上の効果が認められた新技術を導入し、絶えず更新している。
直近では、今年3月に行われた基準類の改定で、国土地理院未認定機器(スコープの付いていないTSなど)を使っても良いことになり、台車などの移動体の上に地上型レーザースキャナを置いて移動しながら測ることも可能となった。

トータルステーション等光波方式/日本測量機器工業会(JSIMA)
ICT舗装工とは、舗装工のうち下記のすべてにICTを用いる(全面的な活用)というものだ。
- 3次元地上型レーザースキャナ(TLS)による事前測量
- 3次元設計データ作成
- ICT建設機械(MCブルドーザー、MCグレーダ等)による施工
- 3次元データによる出来形管理
- 3次元データ納品
ICT土工が始まったばかりの頃、この「すべてに」という言葉のワナに多くの工事業者が引っ掛かった。
UAV(ドローン)を使いづらいような場所で、しぶしぶUAVを使ったり、明らかに従来機を使った方が早いような作業にも、ICT建機を投入したりすることがあった。
従来建機も活用しやすい積算対応
しかしICT舗装工では、今年度に行われた見直しなどもあり、「すべてに」という言葉にこだわらなくても良くなっている。
たとえば出来形管理の途中過程で、「TSを使った方が生産性を向上できる」と判断した場合は、わざわざ費用の掛かるUAVやTLSで、その都度3次元出来形管理をしなくてもいい。竣工前にまとめて3次元計測をすれば良いということになった。
また、小規模土工にもICT施工が適用できるよう、今年2月から従来建機も活用しやすい積算対応に変わった。これまでICTの積算は、ICT建機の使用実績に関係なく、ICT建機25%+通常建機75%となっていたが、今回の変更でそれぞれの建機の使用割合で土量を算出して、清算できるようになっている(下図参照)。

ICT施工の新積算/国土交通省
つまり、本当に使う必要のある期間だけICT建機をレンタルしやすくなった。
建設業界全体としても、数少ないICT建機を融通し合って使えるようになり、レンタル業者や自社で所有する従来機も、これまで通り使い続けられる。
ICT施工導入のための中小企業向け各種補助金
さらに、中小建設会社に対するICT施工導入のための、各種補助金や税制優遇・低金利融資なども、数年前と比べるとかなり充実してきた。

中小建設会社に対するICT施工導入のための補助金/国土交通省
「応募しようとしたら、募集期間が過ぎていた」ということもよくある話だが、現時点でも応募可能な制度や、次回の応募期間の情報なども教えてくれるため、いつ問い合わせてみても損はない。
「ICT施工はお金が掛かるからムリ!」と頭から決めつけずに、使える制度がないか調べてみることをお勧めしたい。