若い職人が給料を簡単に上げる3つの方法

ある若い職人からの相談

ある若い職人と話をしました。

彼は現状に不満らしく、会社を経営している人の意見が聞きたいと。

そして、私が職人仕事もやっているので、その辺も踏まえて会って話がしたいとメールをもらいました。

喫茶店で3時間にわたり、馬鹿な話と会社の現状、自分の現状をイロイロ聞きました。

職人としての質が上がらなければ、給料も上がらない

「僕の給料を上げるにはどうしたらいいですか?」

恐らく、ココが一番の不満だったんでしょう。

「自分はこんなに働いてるし、先輩よりも動いてる。法面工ではアレも出来る、コレも出来る。にもかかわらず、コレだけしかもらっていない。コレじゃ結婚も出来ないですよ!」

いやー、もの凄く気持ちわかります。

私も昔は「なんで、事務所から出てこないジジイより俺のほうが給料低いんだ!?」と思っていました(特に、当時28歳前後の現場監督は年収300万前後でしたから)。

しかし、ココは経営側として厳しく聞きます。

「施工のコレは出来る、アレは出来る。じゃあ、最初から段取りして最後まで出来る?」って聞くと、「それはやったことが無い(やらせて貰えない)」と。

「じゃあ、なぜこの施工はこういったことをしてるか知ってる? この鉄筋はなぜこんな感じに設置してある?」と聞くと、その辺は全く知らないとのこと。

この彼を経営側から見た場合は、1人工の仕事は出来ていると思われます。

しかし、1人工だけなんです。デキる職人は1.5人工~2人工程度稼ぎ出すんです。1人工デキて当たり前の世界では、給料は上がりにくい。それが普通です。

彼には「1人工としては合格でも、職人としての深さが足らないんじゃないかな?」とアドバイスしました。

デキる職人は、自身の専門仕事の奥深くまで理解している方が多いです。「なぜこうするのか、あんな形にするのか?」ってことを理解しています。

給料上げたい職人さんは、職人仕事の深さを追求して下さい。なぜこの施工をするのか? なぜこの材料なのか? などなど。

コレが職人としての質を上げます。

給料を上げたいのであれば、職人としての質を上げることです。


段取りができない職人は親方になれない

施工は出来ても段取りが出来なければ、仕事としては半分以下です。

昔から「段取り8分、仕事2分」と言いますが、仕事のほとんどは段取りなんです。

段取りとは準備のことです。現場に乗り込む時に、親方がアレがいる、コレが必要などなど機械を選定して、トラックに乗せて段取りしますよね。

現地について、機械はココで、鉄筋はあそこに配って、ロープはココから取って、安全施設は・・・、施工順序はあーでこーで・・・ってやっていますよね?

そのあとにみんなでダァーーーっと施工して、ドーーーンって終わるはずです。

「今回の現場楽勝だったなー」なんて気楽に言ってませんか? それはすべて段取りが良かったからなんですよ?

デキる監督の現場ってホント楽ですよね? それは全てが水が流れるように段取りされているからなんです。

職人仕事も同じなんです。段取りできない職人は、親方になれませんし、給料も上がりません。

給料を上げたいのであれば、全ての段取りが出来ることです。

55歳以下の職人は多能工を目指すべし

今後、法面の職人だけで大丈夫でしょうか?

今のところは大丈夫でしょう。

しかし、これからは絶対に単能工では活躍できない時代に入っていきます。

単能工も必要な部分です。それだけを突き詰めていくことを否定はしません。

しかし、若い彼には多能工をオススメしました。若いからこそチャレンジしたほうがいい。相談者が55歳以下であれば、私は多能工をススメます。

なぜ、多能工なのか? 簡単に現場監督目線で言えば、便利なんです。

仮に、1現場にA工法とB工法の2工種あるとします。

X業者に発注した場合、A工法は出来るがB工法が出来ない。すると、B工法だけ出来るY業者も呼ぶ必要があります。

しかし、Z業者にはA工法もB工法も施工出来る職人がいる。それならZ業者に発注します。2業者にお金を支払うよりも1業者に若干高く出したほうが施主も得なわけです。簡単なことです。

しかも、打合せもその後の工程計画も楽に進んでいきます。

そういった業者を使うと、現場監督はとにかく工程や調整が楽なので、施工管理が良くなります。そして、業者へのストレスもかなり軽減されます。良いこと尽くめです。

しかし、私はこの業界に25年いますが、これが出来るのは私が知っている限りでもホンの一握りです。

だから、私は彼に多能工をススメました。

法面やりつつ、アンカーもやる。ロックボルトもやる。出来れば写真も撮る。施工管理の資格も取る。ここまですれば給料が高くて当然です。しょうがないですよ、デキるんだから。

しかし、障壁もあります。

年配の方はなかなか簡単に教えてくれません。削孔を覚えるのに、プラントを3年やってとか、手元を何年以上やってとか言い出します。

そうなってくるとかなり厳しいので、多能工を目指す方は他社に行くか、教えてくれる会社に行きましょう。それしか無いです。

法面を2年やったらアンカーを2年、とやっていけば10年もすれば完璧に多能工です。それ以降は全部を広く浅く仕事していけば、確実にベテランになっていきます。

将来に不安があれば、多能工になるべきです。


多能工になれる職人の資質

多能工は誰でもなれるでしょうか?

なれる可能性はあります。

とくに、なれる可能性が高い人は、視野が広い人です。

施工の中で大事なことは全体を見渡し、全体をある程度把握する能力。空間認識能力ってやつです。現場の状態や関係性を把握出来るかどうか? コレは非常に大事です。

コレは常に意識することで鍛えることが出来るので、現場の状況を常に確認する癖を付けてみて下さい。

そしてもう一つは、全ての現場の責任を負える人です。

多能工になれる人はほぼ親方です。親方は現場の責任者です。その現場でのミス、部下のミスの責任を負う必要があります。

部下のヒューマンエラーも全て上司の責任。こういう風に思える人はホンモノの親方です。

じゃあ、全て親方の責任かというと、実際は会社の責任です。会社の社長の責任です。

それが組織という縦社会の責任構造だと私は思っています。

だからこそ、親方が責任と勇気を持ってガンガン会社に利益をもたらしてくれる。その素晴らしい親方に若い職人がついていく。この構造が一番健全なような気がします。

多能工は全体を把握でき、かつ責任感のある人がなれる。

こんな話も、私と彼の間で繰り広げられました。

単能工では多能工に勝てない

そして、うちの話をちょっとだけしました。

うちの場合、吹付からアンカー、ロックボルト、ロープネット工事まで全てうちで完結出来ます。今はそれが売り(笑)。

当然、施工計画から完成書類、建設CALSの全てにおいての施工管理も出来ます。各種機械もほぼ全て揃っています。そのうち、それが当たり前になると思います。

が、今はまだ法面班、アンカー班、ネット班、施工管理で分かれている状態です。

しかし、これからは多能工の時代です。全てが完璧に出来なくとも、ある程度まではこなせる職人が求められています。

単能工も必要でしょうけど、圧倒的に多能工には勝てません。今はこれが最強だと思っています。

単能工が多能工になれば、とりあえず最強になれるんです。

みんながみんななれることは無いでしょうが、若い方にはチャレンジしてほしいです。

出来る環境に無ければ、チャレンジできる職場に行けばいいんです。そういった会社がこれから増えていけば良いなと私は思っています。

今回は若者との話の中で、私も非常に学びになりました。

給料アゲアゲでガンガンの職人になりたい!

まだいるじゃん!そんな本気で職人になりたい若者が!!!

自分の目をしっかりもって、そういう彼らを応援できる会社にしていきたいと改めて思いました。

※この記事は「新エンタの法面管理塾」の記事を一部編集して掲載したものです。

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大手法面専門建設会社に就職後、32歳で独立。あまりの暇さに「新エンタの法面管理塾」というブログを開設し、法面のノウハウを公開しています。
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