【実録】建設業界を憂うオッサンたちの居酒屋トーク「役人と業者が飲んで何が悪い!」

酒に酔った中年たちによるぶっちゃけトーク

ある日、都内某所の居酒屋に入ると、なにやら熱い議論を交わしている中年4人組がいた。近くの席に座り、聞き耳を立てていると、いずれも土木の関係者らしく、本音トークを炸裂させていた。

「これは使える」ということで、密かに録音を開始した。禁断の「飲み屋ぶっちゃけ話」だが、彼らの話しぶりには切実な響きがあった。それが私の心を掻き立てた。彼らの思いを一人でも多くの人に知ってもらいたいという思いが募った。

ここに、物書きとしての良心を添えて、その一部をここに公開する。


ちゃんとした教育ができているのは国交省と自衛隊だけ

A 日本には、国全体を長期的、広域的にシステマティックにものを考える研究機関がない。経済学は経済、政治学は政治しかやらない。世の中を俯瞰的に見て、どうにかしようという学問は、土木以外にはなくなってしまった。かろうじてそれに近かった教養学部もなくなってしまった。日本ももう終了だなあ。

B 国土交通省は全国隅々まで現場を持っている。だから、地方の声、現場の声をどんどん吸い上げて、政策に反映させられる。

A そんな省庁は他にない。防衛省ぐらいかなあ。

B そうだな。

A 国土交通省と自衛隊だけだよ、ちゃんとした教育と人材育成ができているのは。

C いや、やはり土木のほうが多くの人材を全国に送り込んでいる。

A 世の中を救うのはやっぱ、土木なんだよなあ。

B ゼネコン、コンサルなどいろいろなところに人材がいるので、土木はすそ野が広い。

A こういう常識がもっと日本にあれば、もっと強い国になれるのだが、そうなっていない。土木が最後の砦みたいになっている。海外を見れば、土木は普通に市民権があるのに。

B 一番ありがたがられる業界だよ。

A 土木を虐げることは、日本にとって自傷行為に等しいってこと、どんだけの国民がわかってんだろうなあ。

B 日本では「建設業」=「悪」になっているね。

A いつからそうなってしまったのか。不可逆的な過程に入ってしまっているよなあ。

B たまに汚職事件があるけど、一過性のものに過ぎないよな。

役人と業者が一緒に飲んで何が悪い!

D なにか不祥事があるたびに、縮こまって「なにもするな」という空気が業界に蔓延する。

B 最近の若い職員は、仕事が終わったあと飲み歩かなくなった。組織の中だけにいると、やはり発想が浮かばない。建設業界だけでなく、他の業界の人たちと酒を傾けながら、いろいろ話をすることで、新しい発想のヒントが得られる。役所の中で真面目に仕事をするだけが、官僚の仕事ではないのだが、萎縮してしまっている。

A だいたい良い仕事をするには「不真面目さ」も必要だなんて、常識だよなあ。「シャバ」という世界には、何通りもの解き方があるから、役所目線の角度だけでは、問題は解けない。そんなの、当たり前なのに。

B 自分の組織の中には答えはない。

A 本当に良い仕事がしたいなら「外でいろんな奴と一緒に飲め!」だ。これは、官僚に限らず、あらゆる職業に当てはまる。一つの角度だけで物事を見るのが、いかに不真面目なことなのか。この見識を復活させない限り、日本に未来はない。

B だから、部下には「ドンドン外に出ろ」と言っている。外に出ないと、将来の人材育成にならない。

A それだとAIに勝てない。

B 機械に置き換え可能な仕事になってしまう。技術者でなくても、事務屋でもできる仕事になってしまう。技術者ならではの仕事をしないとダメだな。

A エンジニアは本来そういう職業だ。エンジニアリングデザインとは、シャバの忖度、斟酌などあらゆるものを含めて、最適化、オプティマイズを視野に入れながら、現状を少しでもベターにすることだ。

C そもそも組織が内向きになる原因はなんだ?

B やっぱりマスコミから叩かれたからだろ。

A たしかに組織防衛としては仕方ない側面はあるよなあ。

B 一回叩かれると、「余計なことはするな」となる。飲み歩くのもダメになる。

C 飲み歩くこと自体ダメになるのかあ。

A 飲むことのメリットより、デメリットを恐れるようになったんだよなあ。ビビリの男に未来はない。ときどきケンカしなけりゃ、まともな仕事なんてできないだろう。

B 私はそんなの気にしないで、いろいろな業界の人と飲んでいる。一時期、「業界の人と飲んだらダメ」と言われたけれど。

C 意見交換することの何が悪い。

B 業界が困っている話を聞いて、政策に反映するのは当然のことだ。

A そんなの、いわゆる「業行政」としては当たり前の話なんだよ。


すぐに「利権だ!」と騒ぐマスコミはサモシイ奴ら

C しかし、マスコミは「利権が絡んでいる」と騒ぎ立てる。

A 利権は関係ない。ホントにサモシイ奴らだよなあ。

B 私はゼネコンの人たちともよく飲んでいる。なにも悪いことではない。

A マスコミはもっとさもしい。人間関係を見る目が根本的に間違ってるんだよ。

C それだけマスコミのレベルが下がっているということだ。

A その通りだよ。

B 意見交換は必要なことだ。

C ゼネコンの意見も聞かずに、まともな政策は打てないだろう。

B 世の中とかけ離れていくだけだ。国交省も経済産業省や財務省と一緒になる。

A そうそう、国交省も現場と離れてしまえば、机上の空論だけで制度をつくるようになるから、経産省や財務省の様な現場感覚のない愚策ばかりやるようになるだろう。

B 現場の声を吸い上げて、政策に反映させるのがわれわれの仕事だ。

C マスコミは、特定の業者だけの意見を聞いた役人を大きく取り上げる。

B それがすべてのように。

C 今のマスコミはワイドショーみたいになっている。

A 叩きやすい業界を叩いているだけだ。

C どんな業界でも犯罪が起こる。建設業界だけではない。

A そりゃそうだ。だいたい、銀行員が犯罪を犯したからと言って、「銀行業界を潰せ」となるのか、っていったら、絶対ならない。なのにそれが建設業だったら、その犯罪は個人の責任じゃなくて、業界全体が悪いということになる。もうメチャクチャな話だ。

C 役所もそうだ。一人が悪いことをすると、すべての公務員が悪いと言われる。以前に比べて、確かに建設業界全体のモラルは低下しているが。

A だいたい建設業叩きの空気がさらにモラルを低下させているんだよ。例えば、子どもは親が信頼しないとグレる。逆に親が信頼すれば子どもは立ち直る。こういうのは一般に「予測の自己実現」って言われるけど、疑われた人間は悪いことをするもんだよ。

だから、「建設業なんてどうせワルイことしてんだろう」と皆が思えば思うほど、建設業のモラルは低下していくんだ。

C 見えないところでは、悪いことをやっても良いと考えるようになる。

A まさにそう。

C 「バレなきゃ良い」ということになる。どうせ疑われているなら、「見つからなければ良い」と考えるようになる。

スーパーゼネコンは自分たちの利益しか考えていない

A 逆に信頼されてると、「ちゃんとやろう」となる。この単純な心理学がわかってない。今のマスコミは。そもそもゼネコンは真面目にやってるよな?

C 真面目にやってるよ。こんだけボロクソ言われながらも。なにをやってもボロクソ言われるんなら、「金儲けだけ考えよう」と開き直っても不思議じゃない。だけど、それはしない。

A つまり、建設業ってずーっと、濡れ衣着せられた「冤罪」のために咎め続けられているわけだ。ホント、サジでも投げたくなるけど、われわれがサジを投げたら、日本は潰れるから、やっぱ投げられないよなあ。何だか日本っていう人質を取られてるような感じだよなあ。

C 子どもや子孫に負の遺産を残したくはない。

A どれだけ批判されようが、バカにされようがやるしかしょうがない。そもそも日本を守っているんだから。で、そんな風に思う奴らってもう、われわれ以外ほとんどいなくなっちゃったよなあ、今の日本から。

とはいえ、いわゆる「スーパーゼネコン」の経営層ってもはや、自分たちのことしか考えないようになりつつあるよな、昔に比べたら。昔は「建設業界のためになにかしてやろう」という考えが基本だったけど、それがもう、随分希薄になっちゃった。

C パイの取り合いだからな。

A 土木のTV番組とか、真面目に考えたら良いのに、そういうのは全然やらないよなあ。絶対それくらいできる財力あるはずなのに。

C 自分たちだけ儲かれば良いんだよ。


最高に気持ち良く飲んだ後、車にひかれて死ぬなら本望

D 建設業界には、「言いたいことが言えない空気」がある。

B 将来の出世のために良い子ぶる人間はいる。

C 「誰がこう言った」と犯人探しもする。

B 普通の官僚は将来の出世を考えれば、官邸に歯向かうようなことはできない。ただ、私は自分の好きなことをやっている。「エラくなろう」と思ったら、思い切った仕事はできない。「いつクビになっても良い」ぐらいの気持ちでやらないと。仕事は別になんとかなるし。

C それは大事かもしれない。会社にしがみつこうとすると、ボロが出始めるもんだ。

A 地位なんて「うたかた」のもんなのになあ。どうせそのうち皆死ぬんだし、明日だってどうなるかわからない。

B そうそう。この店を出たら、車にひかれて死ぬかもしれない。

C それは良い人生だよね。「最高に気持ち良く飲んだ後、死ぬ」って。

B そう。それはそれで本望だ。いつ死んでも良いように、日々全力で生きてるからな。

A その感覚がないから、皆いろいろなものにしがみつくんだろうな。それで世の中おかしくなっていく。財務省も財界もマスコミも歪んでいく。

C そういう人たちがいるのは仕方がない。ただ、そうじゃない人間は一定数絶対必要だ。

A アメリカや中国などには、自分のことを捨てて国家のことを考える人間が必ずいる。アメリカや中国は別に好きな国でも何でもないけど、彼らの国ではそういう人間はそれなりの力を持っている。それはそれで立派な事だよなあ。

今の日本にはほとんどそういう人間っていない。しかも仮にそういう奴がいたとしても、皆と違うっていうだけの理由で、足を引っ張られてグジグジいじめられる。もう最悪だよな。

ピックアップコメント

業界の一部で不祥事が起これば全体が不祥事を起こしたように報道される。声をあげることが難しい世の中になったなと思う。建築デザインや匠の仕事を紹介する番組はあれど、土木や電気、水道などの基礎にかかわる仕事をないがしろにしているのか。彼らの言う「子供や孫に負の遺産を残したくない」は下っ端で経験も浅い私でも思っていたことだ。

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