八代白百合学園JKが立野ダム工事現場を撮る
以前、土木写真部と八代白百合学園高校・写真部の座談会記事を公開した。その際、現在建設中の「立野ダム(熊本県南阿蘇村)で工事現場写真を撮ろう」という話で盛り上がった。
その後、土木写真部・熊本支部長の阿部成二さん(国土交通省九州地方整備局立野ダム工事事務所長)から「現地で写真撮影会をやりますよ」という連絡が入った。
国家公務員のものとは思えないフットワークの良さに感動を覚えながら、指定の日時に立野ダム現場入りし、JKの撮影の様子などを取材してきた。
JKにダム工事現場はどう映ったのか。彼女たちの作品とともに、レポートする。
八代白百合学園高校写真部のJKたちと顧問の中西琢也先生(中央左)。中央右は阿部成二・土木写真部熊本支部長(九州地方整備局立野ダム工事事務所長)。真ん中にあるのは立野ダム周辺の立体模型。
JKが激写したダム現場写真
八代白百合学園写真部一行は、マイクロバスで現地集合場所となった旧立野小学校に到着。九州地方整備局担当者と合流し、立野ダム建設現場に向かった。
撮影現場では、担当者から簡単な工事概要の説明などの後、2つのグループに分かれ、撮影に入った。写真撮影会当日は、あいにくの曇り模様で、気温も肌寒い感じ。撮影のコンディションとしてはイマイチだったが、JKたちは果敢に撮影に挑んだ。
なにはともあれ、まずは彼女たちの作品を見てもらおう。各作品ごとに写真部顧問の中西琢也先生からのコメントも掲載している。
「バックオーライ」(井川恵里さん)
中西先生コメント「画面いっぱいに重機を入れた構図で迫力があります。現場の状況はわかりませんが、写真としてはよくできていると思います」
「プロフェッショナル」(上田友香さん)
中西先生コメント「写真とタイトルが一致していない気がします。現場の状況はよくわかりますが、人の姿が小さく表情も読み取れないので、伝わりにくい写真になっています」
「安全第一」(早川怜那さん)
中西先生コメント「写真としては、文字を大きく入れることに関しては、肯定的ではありません。やはり、写真として勝負するなら、働く人の表情などで勝負してほしいです」
「仕事の仲間」(古閑晴菜さん)
中西先生コメント「明るい表情で話をしていることから、人間関係が良いことを感じられます。人物が重なっている部分がありますが、顔は重なっていないので、良いと思います。
「静寂」(坂田葵寿弥さん)
中西先生コメント「現場の雰囲気を静寂と感じてこの写真になったと思います。実際に働いている方々と感じ方は違うと思いますが、これが個性だと思います」
「相談中」(中村美晴さん)
中西先生コメント「口が動いていないので相談しているかわからない気がします。現状報告写真としては成り立つかもしれませんが、作品としてはもっと人物中心にしたほうが良いです」
「男の背中」(嶽本ありささん)
中西先生コメント「背中で勝負するのはかなり難しいです。その先に現場の様子がわかるようなものが写っているのであれば写真として成り立つと思いますが、この状況では難しいです」
「未来のために」(植田英愛さん)
中西先生コメント「奥行きをだして、そこに写っているもので状況がわかります。残念なのは重機が動いていないということです。タイトルに合わせるには動きが必要です」
「自分の仕事」(吉田まこさん)
中西先生コメント「画面全体がまとまっていないので、わかりにくい写真になっています。画面を整理して、シンプルにする必要があります」
構造物のカタチではなく「雰囲気」「臨場感」が大事
今回の撮影会の意義について、中西先生はこう話している。
「私を含め、生徒たちにはダムの建設現場がどのようなものなのか全然分かっていませんでした。まず、実際に現場を見て、どんな人々がどんなことをしているのか知るだけでも勉強になると考えました。
建設現場の雰囲気を写真でどこまでうまく表現できるかは、生徒たちにとってチャレンジングなことだとも考えました。そういうことで今回の撮影会の企画に乗ったわけです。
これからダムの本体工事に入ると聞いています。今回限りの撮影会ではなく、今後の流れも記録に残していかなければいけないかなと思っています。ダム完成となると、今の生徒たちはみんな卒業してしまうので難しいところですが、とりあえず本体工事に入ったところまでは撮影を継続して、一つの記録写真として残したいと考えています。
土木関係の方々が写真を撮るときは、構造物などのカタチそのものを重視するところがあると思いますが、われわれは、建設現場の雰囲気、臨場感といったものを大事に考えています。
だから、完成した構造物があったとしても、必ずしもそれ全部を写真に入れる必要はないんです。その一部分を撮影したとしても、その迫力を十分に伝える写真を撮ることはできます。土木の方々とわれわれには、そういう違いがあると考えています。
今回の撮影に際し、生徒たちには事前に何も言っていません。来て、見て、感じたものを撮影する。それだけでした。生徒に先入観を与えるのは、良くないことだからです。
工事現場の裏側を撮影したJKたちのホンネ
当のJKたちはどういう感想を持ったのだろうか。
井川さん 初めて工事現場を撮影しましたが、迫力があり、とても驚きました。とくに、地下での撮影や、実際にクレーンやブルドーザーで作業しているところでは、とても迫力のある写真を撮ることができました。この日撮れた写真をコンテストなどにも生かしていきたいです。
上田さん ダム建設現場に立ち、とても驚くことがたくさんありました。コンクリートの地下がとても印象に残りました。良い体験ができて、とても良かったです。
早川さん ふだん見ることのできないところを撮影できたので、すごくいい経験になりました。お仕事を頑張られている姿を撮ることができて良かったです。
古閑さん 工事現場で使うものなどを見ることができ、とても貴重な体験ができました。
坂田さん 今回の撮影で貴重な体験ができたのでよかったと思います。ふだん見ることのできない工事現場の裏側を見られた気がしてドキドキしました。
立野ダム工事事務所職員とJK
中村さん 機械が多くあり、多くの作業員の方がいて、驚きました。なかなか撮れないような貴重な瞬間を撮ることができ、良い体験ができました。
嶽本さん 私たちの生活の安心・安全を守るためにたくさんの方の力が関わっていることを改めて感じました。なかなか撮れない貴重な写真を撮ることができて良かったです。
植田さん 建設現場に初めて入りました。地下での作業や岩を削る作業、壁を登りながらの作業などを近くで見ることができ、作業中の方の様子がとてもはっきり見えました。一生懸命お仕事を頑張るところを撮影することができました。
吉田さん ダムがどのようにできているかなど、撮影を通して知ることができたので良かったです。人生で見ることのできないものが見られて良かったです。
土木を知らない人は、現場のどこに魅力を感じるのか?
土木科でもない普通のJKが建設現場を訪れるケースは、かなり少ないと思われる。写真撮影するとなれば、なおさらだ。
この思い切った企画を実施した立野ダム工事事務所は、今回の撮影会の意義をどのように考えているのだろうか。阿部所長はこう話している。
「われわれが安全・安心・快適に暮らす上で土木構造物はなくてはならない物ですが、日頃の生活の中では『当たり前に存在するもの』として見過ごされていることから、これら構造物の魅力を発信することで、土木への関心や理解を深めてもらうのがわれわれの活動目的です。
今回は、土木技術者や構造物マニアである部員ではなく、『まったく土木のことを知らない人が現場でどんなところに魅力を感じるのか? その視点が、われわれが土木の魅力を知ってもらいたい方々に最も近いのではないか!』と考え、「立野ダムのcoolを切り撮れ!」と題して企画しました。
また一方では、土木構造物の建設や維持管理を通して地域の安全・安心を確保しているのは地域の建設業界であるものの、将来の担い手不足などの問題を抱えており、これによる業界の存続の危機は地域の安全・安心の欠如に繋がる重要な課題です。
今回及び今後も継続していく多様な方々による撮影会の作品が、これら課題解決の一助になることも大いに期待しています。
立野ダムとは?
立野ダムは、熊本市内を流れる白川の洪水被害を防ぐことを目的に、南阿蘇村大字立野及び大津町大字外牧に建設中の洪水調節専用ダム。ゲートの無い放流孔を有し、川の水量が少ない場合には流水の貯蓄をしないダム。
堤高約90m、堤頂長約200m、堤体積約40万m3で、洪水調節専用ダムとしては国内最大級の大きさを持つ。2022年度完成予定。事業費は約900億円。