高さ30m! 阪急電鉄が進める「淡路要塞」ってなに?
阪急電鉄京都線・千里線が通る淡路駅周辺(延長7.1km)で連続立体交差事業(高架化)が行われている。高架化のポイントは、近くで交差する東海道新幹線などをまたぐため、高さ30mの2層式を採用していることだ。
巨大なコンクリート構造物がそそり立つ様は、一部鉄道マニアから「淡路要塞」と呼ばれている。2008年に工事着手したが、事業完了は2027年度の予定で、その事業期間も長い。
高架化の概要、進捗などについて、発注者である阪急電鉄の担当者に話を聞いてきた。
安全運行に最新の注意を払いながらの難工事
奥田 晃弘さん(阪急電鉄株式会社 都市交通事業本部技術部(土木技術担当))
――奥田さんは、ずっと高架化に携わっているのですか?
奥田さん 私は入社6年目になります。入社してから、6ヶ月ほど保線の仕事に携わりましたが、それ以降は淡路連立事業の担当をしています。今は大阪梅田にある本社で、主に発注業務や事業主体の大阪市さんと協議を担当していますが、昨年度まではグループ会社である阪急設計コンサルタントに3年間ほど出向し、淡路連立工事の施工管理の仕事をしていました。
――今回の高架化は阪急電鉄としても、規模の大きな工事ですか?
奥田さん 淡路連立工事は、7.1kmの延長を8つの工区に分けて、工事を進めています。最近だと、2017年度に阪急京都線の洛西口駅付近の高架化事業が完了しましたが、こちらは全3工区、延長は約2kmでした。それらと比較すると、かなり規模の大きな工事になります。
――全体の進捗はどうなっていますか?
奥田さん 8つの工区があって、進捗はそれぞれバラバラですが、全体としては半分ぐらいです。2020年1月時点で、3工区の進捗率は85%と全8工区で一番進んでいますが、まだ数%の工区もあります。高架橋の施工が可能な個所から粛々と工事を進めています。
――電車が運行している中で、作業を行うのは大変でしょう。
奥田さん 私たち鉄道事業者の使命は、安全運行です。工事が原因で電車の運行を止めるようなことがあってはなりません。工事は細心の注意を払って進めています。線路近くで行う昼間作業は、電車が通過する間は重機に動作規制をかけるようにして、電車の安全を確保しています。
新幹線路の上を通さないと、鉄道として成立しない
――高架橋はかなり高いですね。
奥田さん 2層構造なので、淡路駅部で地上約30mあります。現在、淡路駅では京都線と千里線は平面対向交差で運行していますが、高架化により2層のうち、上層階を下り線(大阪梅田・天神橋筋六丁目方面)、中層階を上り線(京都河原町・北千里方面)の電車が走るようになります。
2層構造の高架橋には、近鉄の布施駅の大阪線と奈良線が分岐する箇所と、京浜急行蒲田駅の本線と空港線の分岐する箇所で類似の施工事例があります。
――新幹線をまたぐ工事には着手しているのですか?
奥田さん 新幹線交差部前後の橋脚の構築に取り掛かっています。新幹線上空に架かる橋梁の施工に関しては、新幹線及び阪急電車の安全運行のため、現在JR東海さんと両社で協議中です。
工程管理が今後の課題
――沿線住民などへの対応策は?
奥田さん 除却される踏切に事業PR看板を設置したり、地元小学校の児童を現場見学会に招いたりして、事業にご理解いただけるよう努めています。
――ご意見とかは?
奥田さん 鉄道工事では安全運行のために、どうしても電車の運行がない夜中に行う作業が発生します。近隣住民の皆様には、昼夜に渡り大変ご迷惑をお掛けしております。
騒音対策については、防音シートや防音パネルを使用し、工事音の拡散を防ぐように努めております。今後も周辺環境に最大限の配慮をし、早期に工事が完了できるよう努めてまいります。
防音シートが続く淡路湖駅高架化の工事現場。向かいには、小さな通りを挟んで住宅などが軒を連ねる。
――今後の課題は?
奥田さん 土木工事以外にも、線路やトロリー線などの新設工事が控えています。これから工事が佳境を迎えると、それらの工事との工程調整が必要になってきます。全体の工程管理が今後の課題になると考えているところです。
――高架化の仕事のやりがいは?
奥田さん 高架化工事では、新しく駅舎をつくったり、線路を新設したり、線路の横で近接作業をしたりと、鉄道工事について様々な経験をすることができます。このような大規模事業に携わることができ、日々やりがいを感じながら、業務に取り組んでいます。
こんなんに携われたら一生自慢できるな