“異業種への人材流出”を”異工種へのキャリアチェンジ”へ
造園とは「石・砂・木・草などを適当に配置して庭園をつくること。また、庭園公園・動植物園などをつくること」(『精選版 日本国語大辞典』より抜粋)とあるが、その造園技術は公共土木でも発揮されている。
埼玉県川口市にある共栄造園有限会社の中里社長と主任技術者の梅野氏にお話を伺った。梅野氏は建築から造園への転職入社で、景観という社会価値へ直接施す出来栄えの達成感があるという。
造園業は退職を悩む主任技術者の受け皿になりえるのか? 建設業は「2024年問題」も目前に迫り、人手不足は喫緊の課題。異業種への人材流出を、せめて、“異工種へのキャリアチェンジ”へ誘導できるかを副題にインタビューに伺う。
“17円差”で失注する造園の世界
――まずは、御社の沿革などご紹介いただけますでしょうか?
梅野さん 今の社長(中里氏)が他の造園会社から独立する流れで平成8年に創業しました。最初は庭園の剪定や樹木の診断、屋上の緑化などの王道の造園仕事を担っていました。でも、最近は社長の営業力で緑に関する仕事がたくさんあります。ちなみに、社長の御父さんは東京タワーの建築に携わった方なんですよ。
――施工体制上の御社のポジションは?
梅野さん ほぼ、役所の工事を1次ですね。ときどき、元請けで入ることもあります。私立の学校から直接当社に指名が入ったときはグランドの仕事なんかもやります。
中里社長 大学のグランドを人工芝に張り替えたのとか。学生の運動で荒くなった人工芝を新たに張り替える施工です。大手8社いたコンペにおいて1500万差で勝ちました。
――植栽技術は天然芝と人工芝とでは違いますか?
梅野さん 全然違います。グラウンド屋さんの仕事ですが、天然芝はメンテナンスや管理が大変なので人工芝需要が増えていると思います。造園業の仕事の幅って結構あるんですよ。人工芝もあれば歩道の植栽もありますし、土木的な仕事もやります。ただ、当社が管理で入っている物件で人工芝NGのお客さんもいました。
――芝の管理だけという受託業務もあるのですか?
梅野さん あります。有名な建築士の歴史的建造物に指定された学校にも携わっています。芝にもこだわりがあって、弊社は定期的に天然芝のメンテナンス管理をしています。
中里社長 そういう意味でも施工から管理まで職域の違いもあれば、個人邸から公共工事まで仕事に幅はありますね。
私が独立する前の会社はゴルフ場がメインの造園屋で、グリーン改造が主でした。国立競技場の仕事もありまして、文科省からサッカーのJ1が始まる前に競技に耐えうる天然芝にしたいという案が浮上し、それにも関わりました。ティフトン芝という踏圧に強い西洋芝があるのですが、それを先駆的に手がけたんです。
――役所の工事が大半ということですが、神社仏閣の仕事なんかありますか?
中里社長 お寺はありますけど神社は珍しいですね。関わっている物件としては愛宕神社の改修工事が現在施工中です。都市再生機構(UR)の仕事で地権者が愛宕神社。物件としてはURの発注です。
周辺を開発するにあたり、神社も改修の必要性がでてきて。おそらく地権者である愛宕神社と何らかの調整はあったと思います。その大々的な改修工事を当社の社員が奮闘中です。
――造園工種の入札において低入失格ラインについてお聞かせください。
梅野さん 厳しいです。それこそ何百円単位で失格にもなれば、1,000円の競合幅の中に10社くらい札が入って僅差で失注もします。
たとえば、土木発注なんて大まかじゃないですか。でも、造園の発注だと17円差でお客さんが負けたなんて嘆いてますよ。1円単位なんてよくあります。
――ミリ単位というか、そんな僅差ならくじ引きみたいですね。
中里社長 ひしめいた造園の発注に応札しても円単位でしのぎ削るから各社大変そうです。
それで現在は造園のノウハウで施工可能な修景工事とか土木系の発注へ応札するのがトレンドです。土木系の仕事を含めた下請けができる造園屋ってあんまりいないんですよ。それで当社に相談がくるんです。
――なるほど。造園各社、積算の部署はありますか?
梅野さん 大手なら積算を抱えますけど、その都度、積算委託もありますし、今は積算ソフトを使って弾いています。そうすると、ほとんどみんな一緒の額になっちゃう。
自慢話ばっかだなw