主任技術者の資格取得の要件とは?監理技術者との違いも徹底解説

建設業では、工事現場の規模によって配置すべき有資格者が法律により定められています。主任技術者も配置が決められていますが、元請けと下請けでは配置条件が異なるため注意が必要です。

この記事では、主任技術者の役割や監理技術者との違い、資格要件を解説します。法律によって配置が義務付けられているため、しっかりと理解しましょう。

主任技術者とは?

主任技術者とは、建設業法に基づいて配置する、工事現場の施工・技術を管理する技術者を指します。

建設業許可を受けたものが工事を施工する場合、元請や下請、請負金額の大小に関わらず、技術者(主任技術者または監理技術者)をすべての工事現場に配置しなければなりません。

主任技術者は、元請けと下請けのどちらにも配置しますが、元請けの場合は下請金額が4,500万円未満(建築一式工事の場合は7,000万円未満)の工事に配置します。建設業許可を受けている業者の場合、500万円未満の工事であっても主任技術者の配置が必要ですので、注意しましょう。

しかし、一部例外もあります。2020年10月の建設業法改正で主任技術者の配置義務が見直されたことにより、下請金額が4,000万円未満の「鉄筋工事」と「型枠工事」については、一定の要件を満たす場合、主任技術者の配置は不要となりました。

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主任技術者と監理技術者の違いは「工事規模」

主任技術者と監理技術者はともに、工事現場に配置される技術者です。大きな違いは、関わる工事の規模で、小規模な工事や下請け工事の現場には主任技術者を配置します。

元請けの場合、下請金額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の工事では、主任技術者に代えて監理技術者の配置が必要です。監理技術者を配置した場合、その現場に主任技術者を配置する必要はありません。

監理技術者は、主任技術者より大規模な工事を管理することになるため、高度な知識や施工に関わる技術者の指導を担わなければなりません。

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主任技術者の資格取得の要件は2種類

主任技術者の資格を取得するには、学歴・実務経験年数に基づく要件と、資格の有無による要件の2種類があります。

さらに、2018年4月1日以降には、登録基幹技能者であれば主任技術者要件を満たす者として認められることとなりました。登録基幹技能者とは、登録基幹技能者講習の修了者を指し、主任技術者と同等以上に認定された場合において、主任技術者の要件を満たすものとして位置づけられます。

では、主任技術者になるために必要な要件を見てみましょう。

実務の経験年数

学校で指定学科を学習してから主任技術者になる場合、学歴によって実務経験年数が異なります。

  • 大学(短期大学含む)の指定学科卒業者:3年以上
  • 高等専門学校の指定学科卒業者:3年以上
  • 高校の指定学科卒業者:5年以上
  • それ以外の学歴の者:10年以上

建設業には29種類の業種があり、業種ごとに指定学科が決まっています。

許可を受けようとする建設業 指定学科
土木工事業
舗装工事業
土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下同じ。)都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科
建築工事業
大工工事業
ガラス工事業
内装仕上工事業
建築学又は都市工学に関する学科
左官工事業
とび・土工工事業
石工事業
屋根工事業
タイル・れんが・ブロック工事業
塗装工事業
解体工事業
土木工学又は建築学に関する学科
電気工事業
電気通信工事業
電気工学又は電気通信工学に関する学科
管工事業
水道施設工事業
土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科
鋼構造物工事業
鉄筋工事業
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
しゅんせつ工事業 土木工学又は機械工学に関する学科
板金工事業 建築学又は機械工学に関する学科
防水工事業 土木工学又は建築学に関する学科
機械器具設置工事業
消防施設工事業
建築学、機械工学又は電気工学に関す学科
熱絶縁工事業 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
造園工事業 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科
さく井工事業 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科
建具工事業 建築学又は機械工学に関する学科

国土交通省 指定学科一覧より引用)

複数業種の経験者に必要な実務経験

建設業29種類の業種のうち下記10業種であれば、複数業種の仕事をおこなってきた人も主任技術者になることが可能です。

定められている要件を見ていきましょう。

許可を受けようとする建設業 実務経験
大工工事業 1. 建設工事業及び大工工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、大工工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務経験を有する者
2. 大工工事業及び内装仕上工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、大工工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
とび・土工工事業 1. 土木工事業及びとび・土工工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、とび・土工工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
2. とび・土工工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、とび・土工工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
屋根工事業 1. 建築工事業及び屋根工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、屋根工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
しゅんせつ工事業 1. 土木工事業及びしゅんせつ工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、しゅんせつ工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
ガラス工事業 1. 建築工事業及びガラス工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、ガラス工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
防水工事業 1. 建築工事業及び防水工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、防水工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
内装仕上工事業 1. 建築工事業及び内装仕上工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、内装仕上工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
2. 大工工事業及び内装仕上工事業に係る建設工事に関し、12年以上の実務経験を有する者のうち、内装仕上工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
熱絶縁工事業 1. 建築工事業及び熱絶縁工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、熱絶縁工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
水道施設工事業 1. 土木工事業及び水道施設工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、水道施設工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
解体工事業 1. 土木工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
2. 建築工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
3.とび・土工工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者

国土交通省 複数業種に係る実務経験を有する者より引用)

必要な資格

資格を取得することで、主任技術者になる方法もあります。建設に関わる各種工事の技術検定や職業能力開発促進法に基づく技能検定、登録基幹技能者講習が主任技術者になりうる資格です。

職業能力開発促進法に基づく技能検定では、主任技術者の資格取得ができるほか、施工管理技術者検定の受験資格も得られます。ただし、検定や資格によって実務経験も必要になるため、資格取得を検討中の方は必ず事前に確認しましょう。

主任技術者になるための代表的な4つの資格

主任技術者になれる代表的な資格は、2級施工管理技士・二級建築士・第二種電気工事士・技能検定(技能士)です。なかでも、施工管理技士の試験は建設工事に関わるさまざまな業種によって分かれています。

建設業の主任技術者になるには、建築工事業・土木工事業・大工工事業などの施工管理技士の合格証が必要です。では、主任技術者になるための代表的な4つの資格を紹介します。

2級施工管理技士

1級施工管理技士と2級施工管理技士は、ともに主任技術者になれる資格です。2級の第一次検定のみであれば、17歳以上から受験が可能です。施工管理技術検定は、第一次検定と第二次検定があり、業種によって合格率も異なります。

「施工管理」の資格について詳しく読む

二級建築士

建築士とは、建築士法に基づく資格で、建築物の設計および工事監理などの業務をおこなう技術者として証明できます。二級建築士になるには、二級建築士試験に合格し、各都道府県知事から交付される免許証が必要です。

受験するには、建築に関する学歴を有するもの・建築設備士の資格保有者は実務経験は必要ありませんが、該当しない場合は7年以上の実務経験年数が求められます。

「建築士」の資格について詳しく読む

第二種電気工事士

電気工事士は、電気工事の欠陥による事故防止を目的とした、電気工事の従事者に求められる資格です。工事内容によっては、電気工事士の資格がないとおこなえない場合もあります。

第二種電気工事士は、一般住宅や事業所などの600V以下で受電する場所の配線や、電気使用設備などの電気工事作業が可能です。第二種電気工事士になるには、第二種電気工事試験の合格もしくは経済産業省の第二種電気工事養成施設を修了する必要があります。

技能検定(技能士)

技能検定(技能士)は、職業能力開発促進法に基づき、技能と地位の向上を図ることを目的としています。技能検定試験は、建設関係だけでなく、園芸や半導体製品製造などさまざまです。

技能検定では、1級・2級・3級・単一等級に分かれており、学科と実技試験に合格しなければなりません。主任技術者の資格が得られるのは、1級・2級・単一等級の合格者です。2級の場合は、技能検定合格後に1年以上(平成16年度以降の合格者については3年以上)の実務経験が求められます。

主任技術者の資格を取得する際の注意点

主任技術者には、いくつかの注意点があります。主任技術者は、建設工事が正しく実施できているか、施工の従事者の技術向上を促す指導などが役割です。

建設会社が責任を持って、知識と技術を有する主任技術者を配置するため、主任技術者と建設会社は直接的で恒常的な雇用関係になくてはなりません。主任技術者には、以下のような注意事項があります。

アルバイトや派遣は認められていない

建設会社と直接的で恒常的な雇用関係が必要な主任技術者は、第三者が介在しない雇用関係である必要があります。そのため、アルバイトや派遣のような雇用関係での、主任技術者の配置は認められていません。

資格証や健康保険被保険者証、住民税特別徴収税額通知書を提示すると、直接的な雇用関係であることを証明できます。

工事の兼任はできない(一部例外)

公共性のある施設や工作物、利用者が多い施設や工作物の建設工事では、主任技術者・監理技術者とともに専任である必要があります。つまり、他の工事を兼任しておらず、常時継続的に担当する工事の職務に従事する人でなくてはなりません。

下請企業の主任技術者は、下請け工事が実際に施行されている間が専任期間です。ただし、密接な関連がある2つ以上の工事を、同一企業が同じ場所あるいは隣接した場所で施工する場合などは、主任技術者の専任要件の緩和措置があります。

主任技術者の資格を取得し、キャリアアップしよう

この記事では、主任技術者の役割や監理技術者との違い、資格要件を解説しました。元請け・下請け関わらず、主任技術者の配置は義務付けられています。

主任技術者と監理技術者はともに、工事現場に配置される技術者ですが、大きな違いは関わる工事の規模です。

建設業界でキャリアアップを目指すなら、主任技術者から目指すと良いでしょう。主任技術者になるには、実務試験もしくは資格取得が必要なため、早めに準備を始めることが大切です。

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