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不測の事態を乗り越えることにこそ、トンネル屋の醍醐味がある

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四国の犬
公開日:2023.03.07
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藤井 広志さん 鹿島建設株式会社 日下川新規放水路(呑口側)工事事務所所長

藤井 広志さん 鹿島建設株式会社 日下川新規放水路(呑口側)工事事務所所長

目次
  1. 一寸先は闇。そんなトンネル工事の魅力とは
  2. 地質不良区間では迅速な対応ができた
  3. 坑内車両位置検知システムによりスムーズな車両通行を実現
  4. 「現場ロスになるねえ」
  5. 「ありがたい現場」
  6. 最初に配属されたトンネル現場で「トンネルはおもしろいな」
  7. 地質がどうなっているか想像するチカラが必要
  8. キレイじゃない現場はあり得ない
  9. こだわり過ぎると、技術者として進歩がなくなる
  10. 小さな声でボソボソ話すような人間は、現場力があるとは言えない
  11. ビッグプロジェクトに携われる一方、職場の希望も聞いてくれる
  12. 不測の事態を乗り越えるおもしろさ、ドキドキ感

一寸先は闇。そんなトンネル工事の魅力とは

国土交通省(高知河川国道事務所)は、床上浸水対策特別緊急事業として、仁淀川水系の日下川新規放水路(総延長5,368m)の整備を進めている。すでに掘削、覆工は完了しており、2023年3月末の放水路トンネルの完成に向け、カウントダウンの段階にある。

放水路工事の工区は、呑口側、吐口側の2区間に分かれるが、呑口側の区間を担当する鹿島建設の藤井広志さんにお話を伺う機会を得た。今の現場をはじめ、これまでのお仕事を振り返っていただきつつ、トンネル工事の魅力などについて聞いた。

地質不良区間では迅速な対応ができた

インタビューに答える藤井さん

――こちらの現場の進捗はいかがですか?

藤井さん 2021年7月にトンネルが到達しました。それ以降は、覆工、インバートを進めています。覆工はほぼ完成しており、作業坑坑口付近まで来ています。残る作業としては、作業坑のインバート、埋戻し、舗装コンクリート、仮設撤去関係ということになります。2023年3月末が工期ですが、順調に来ています。

――これまでの工事で「これは大変だったな」と思ったことはありましたか?

藤井さん まずは、地質不良区間への対応です。地質不良区間に遭遇すると、どうしても工事の進捗に影響が出てしまうからです。そんな時は、いかに早く補助工法を含めた掘削パターンの選定、対策実施をするかがカギになります。

幸い、国土交通省さんには非常に迅速に対応していただきましたし、業者さんとの連携もうまくいき、資材の調達などスムーズにいきました。その結果、地質不良区間では迅速な対応ができ、工事も止まることなくうまくいったと思っています。

あと、当初工程は非常に厳しいものでしたが、それに加えてここの放水路トンネルの断面は約50m2しかなく、一般的な道路トンネルと比べ、非常に狭隘です。しかも、延長は2.85kmもあります。施工にとって何かと不利な条件が多く、工程も厳しいなか、セントル長を12m×2基(2班体制)にすることで、工程短縮を図りました。これによって、13ヶ月程度の工期短縮ができました。

また、施工方法についても、数々の自動化、ICT化に取り組みました。その結果、将来につながる技術を得ることができ、様々な生産性の向上、効率化という点で、収穫は大きかったと思っています。

この現場は、いわゆる働き方改革が言われ始めたころにスタートした現場だったので、生産性の向上について、いろいろな取り組みをしてきました。社内的にも注目が集まった現場です。

――「湧水」は大丈夫でしたか?

藤井さん 湧水は比較的少なかったです。当初から湧水の存在が懸念されていた区間については地質調査や先進ボーリング等を実施したので、施工方法や工期に影響が出たということはありませんでした。

坑内車両位置検知システムによりスムーズな車両通行を実現

現場(坑口)の様子

現場(坑口)の様子

――安全衛生に関してはどうですか?

藤井さん トンネルが狭くて長いのが、この現場の特徴です。これを考えると、安全衛生管理上、重機などと人との接触が最も大きなリスクになると考えられます。切羽作業時はもちろん、後方のセントルでも車両との接触のリスクが考えられます。そこでわれわれは、このリスクを回避するため、さまざまな対策を講じてきました。

例えば、人が重機に近づくとセンサーを検知して重機が止まったり、警報がなったりするシステムを取り入れたり、重機始動時や車両が通行するときの合図方法、停止時のルールを徹底しました。

その他として、坑内車両位置検知システムの導入です。このシステムは、まさにこの現場で開発したものです。GNSSによる位置検知システムはすでにありましたが、坑内だとGNSSの電波が届かないので、位置の把握が難しいんです。

この点、新たな位置検知システムでは、坑内でもどの車両がどこにいてどちらの方向に走っているか、正確に把握することができます。そのため、車両同士が坑内で鉢合わせになって狭い中を長距離後進するといった危険な状況は一切ありませんでした。

これらのおかげもあって、無事故できています。

「現場ロスになるねえ」

――住民対応はどうですか?

藤井さん 極力現場周辺を回って、ただ言葉を交わすだけでなく、草刈りや掃除なんかも定期的にやってきました。発破時には、できるだけ騒音を低減する方法をとりました。現場の周りには、防音壁などを設置しているほか、必要に応じて、住宅に二重サッシを設置しています。

また、現場近くには保育園があります。大型車両のドライバーに対しては、保育園の前を通行する際は、最徐行で通行するよう指示しています。そのおかげもあって、保育園から感謝のお言葉をいただきました。

この現場の周辺には、発注者は異なりますが、床上浸水対策工事に絡むいくつかの工事現場があります。鹿島を含め、これらの業者が集まって災害防止協議会をつくりました。この協議会では、定期的に集まって、清掃やイベントなどの活動を行っています。

そういった取り組みを通じて、近隣住民の方々にできるだけご迷惑をお掛けしないように努力してきたところです。

そのおかげもあって、とくに苦情という苦情はこれまで出ていません。今ではすっかり仲良くさせていただいており、工事が終わると「現場ロスになるねえ」とおっしゃっていただけたほどです(笑)。

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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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