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持ち味を変え、ベンチャースピリット×コッテコッテの浪花節からスマートな理詰めへ

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根津 寿子
公開日:2025.09.30
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日本ウェザリングテストセンター宮古島暴露試験場にて(阪神高速技術、セラアンドアースとの共同研究)

日本ウェザリングテストセンター宮古島暴露試験場にて(阪神高速技術、セラアンドアースとの共同研究)

目次
  1. なんで無機?じゃなくて、だから無機!
  2. そして無機形塗料の規格類は整った
  3. 暴露試験も良かった(チラ見せじゃないですが、オタ的なので読み飛ばし可)
  4. コストは結局安くなるのでご支持をいただくんです
  5. おまけ・こういうところで役立っています~経年追跡付き事例集

無機質コーティング協会の会長が平良一夫さんから角和夫さん(日本インシークのシニアエキスパート)に代わった。

平良さんは協会の創設者でベンチャースピリット×コッテコッテの浪花節が持ち味だった。「環境に悪いもんで儲けたらあかん。ほんまもんの商売は社会貢献を目指さんと」。33年前に無機塗料技術に本気で取り組み始めた平良さん。26年前に協会を作ってからの歩みは、環境破壊や温暖化の抑制、健康被害の撲滅など前世紀から高まりつつあった社会の要請が、2015年には持続可能な開発目標(SDGs)という形で整理され2030年までに達成する指標が示されるなど、建設現場でもこれに応える技術の希求が顕在化してきた流れと重なる。

協会の無機塗料技術は、その革新性――それまでトレードオフの関係だったものを克服し、例えば、塗料なのに燃えない、無機材料なのに柔軟、溶剤を使わないのに施工がラクでシンプルな省工程、少人数なのに数をこなせる、環境負荷が極小なのに長寿命、高機能材料なのに材工ではむしろ安い、三種ケレンなのに残錆が進展しない等々――が、特に現場を指揮するエンジニアの関心を集めてきた。はやくから高速道路会社を中心に試験施工を重ねるなかで、職責上彼らに備わる理詰め思考に鍛えられて実際の現場に即した技術へと安定化するとともに論理的な裏付けも固まって成長してきた。「ほんまに厳しい目で真剣に向き合あってくれはりました。感謝しかありまへん」(平良さん)。

角さんも高速道路会社に在籍していた時分に協会の無機塗料技術と出会う。そして近年コンサルタント会社に転職したのを機に、それまで平良さんが情熱を傾けて積みあげてきた施工や経年ならびに暴露試験のデータを、論理的に整理しながら理論的に体系化しつつ無機形塗料の規格とマニュアルにまとめる中心的な役割を担った。

ベンチャーとして始まり33年、上市してきたいくつかのセラシリーズ(無機形塗料)はNETIS登録も経て採用も広がり、もはや新技術とは言えない域まで育ったものもある。リピートが多く「使ってみて、協会の無機形塗料の良さを実感いただけているのかな、と思うとうれしいですわ」(平良さん)。つまりは未採用の潜在客も抱え、「SDGsの取り組みを積極化したいとか、VOC(揮発性有機化合物)対策を促進したいとか、PFAS(有機フッ素化合物)問題で関心を持ったとか、少予算で構造物を長寿命化しなければならずとにかく塗替えスパンを伸ばしたいとか、いろんな理由で無機塗料を使いたいけれど規格が不確定で採用に向けた検討が進まず困っている、無機の協会が責任ある規格を早く整えてほしいという切実なお声をたくさんいただいていました」(平良さん)。

昨年できた規格は、協会のセラシリーズと比較材料をバックデータとしているものの材料指定はしておらず、「無溶剤無機形塗料(有機溶剤を含まず樹脂成分中のオルガノポリシロキサンを90%以上含有する塗料)」と「無機有機複合形塗料(樹脂固型分中15%以上のオルガノポリシロキサンと85%以下の有機樹脂と複合した塗料)」を定義し、それ以外の用語は「鋼道路橋防食便覧」に準拠してまとめている。角さんには、無機形塗料を使いたい社会環境に応えて、無機形塗料を使いやすい技術環境を整え、無機形塗料を標準化するねらいがあった。「発注者さんの協力があって協会で溜めてきた技術的なデータはうちの財産だったのですが、これを規格というみんなで使える社会の財産にまとめてくれた、新会長の角さんには感謝しとります」(平良さん)。

新会長の角さんにいろいろ聞いた。

なんで無機?じゃなくて、だから無機!

――角さんは本四高速、阪神高速、福岡県など発注者側の職歴が長いです。特に長大海上橋の建設やそのメンテナンスに従事してこられました。また、海外案件でも評価の声があり、例えば外国政府に表彰されたときには、私も大使館で取材させてもらったこともありました。グローバルに分厚いご経験を持たれている印象です。なぜ無機塗料技術ですか?

角さん なぜ無機塗料技術なのか?う~ん、なるほど。だから無機塗料技術です!なんですよ。問題意識があって、選択肢もできた、ならば合理性のあるものが選ばれます。

経緯はこうです。まず問題意識から。

1979年に本州四国連絡橋公団(今の本州四国連絡高速道路)へ就職して以来、本四架橋、関空連絡橋、北九州空港連絡橋といった国家的プロジェクトに携わってきました。当時は有機系塗料が主流で、初期には耐候性を重視して上塗りにはポリウレタン樹脂塗料を、のちに来島海峡大橋、明石海峡大橋、多々羅大橋などではふっ素樹脂塗料を採用するようになりました。

ただ、有機系塗料には溶剤あるいは希釈材としてのシンナーが不可欠です。また、高耐候性を期待されたふっ素樹脂塗料も顔料に含まれる酸化チタンの影響により紫外線劣化の一つであるチョーキング(粉化現象)が早期に確認されることとなりました。

そうしたなか、大鳴門橋の塗り替え工事を担当しました。夏場は施工性に配慮して、身体に悪いと分かっていても多量のシンナーを使用し塗料を希釈する必要があります。何とかしたいという思いを抱えての現場となりました。

そして転機は訪れます。選択肢を得たのです。

その後2006年に阪神高速道路に出向していた時に、鋼道路橋塗装・防食便覧が改訂(平成17年版)されたことを受けて、当時は神戸管理部調査設計課長として阪神高速の塗替要領の基準改定を主導しました。塗料に対する理解と関心がさらに深まりました。例えば、本四で想定以上に短期間でチョーキングが発生した経験があったので、チョーキングを抑えられるのはシロキサン結合を主鎖とする無機塗料以外にないこともこの時に知りました。この平成17年版の便覧改定は環境や健康などへの問題意識から鉛などの有害物を塗装に使わないことも盛り込まれたものでした。また、光化学スモッグやPM2.5の原因としてVOCによる環境負荷が社会的に問題視され始めたのもこの頃です。

鋼構造物でもコンクリート構造物でも安全安心を長期間守るためには、鋼構造物の表面やコンクリート中の鉄筋を錆びさせない必要があります。つまり塗装とは、構造物の表面をコーティングすることで、錆の要因となる水分や塩分や炭酸ガスの侵入を遮断しているわけで、その遮断機能は塗装の存在自体の生命線、だから遮断機能が長続きしないのであれば莫大なコストをかけて塗る意味自体の根拠が揺らぐのです。だからチョーキングなどの塗膜の早期劣化は当然避けねばならないし、それに伴う健康や環境の被害も避けたいし、構造物管理者としてはこうした問題の放置は到底受け入れられませんから、いろいろ方策を探しました。当時の発注者の機運もそんな感じだったと思います。そうするなかで出会った一つが平良さんの無機形塗料です。

平良さんの無機形塗料への取り組みは早く、20年近く経っていたので、その頃にはすでに実績を持っていて、そのなかの一つに、無機形塗料を試験的に塗替え塗装に施工させていただいたという瀬戸大橋六間川橋梁(本四、1995年施工)がありました。その当時は塗替え12年後くらいでしたが当然チョーキングはなく、平良さんの無機形塗料以外で施工した個所よりも光沢もあったのです。ちなみに平良さんは発注者の理解と協力を得て各地の自身の現場の追跡調査をして経年変化を記録しているのですが、今年で約30年経ってもチョーキングもなく、光沢もあり健全です。

当時のそうした情勢のなか、チョーキングや環境負荷・健康被害を避けられるものとして注目したのが無機塗料技術でした。無機塗料技術は、原料に無機物を配合した塗料です。無機物とは、石やレンガ、ガラスなど炭素を含まない物質で、紫外線で劣化しないことから半永久的な材料です。

これを機に本格的に阪神高速の現場において無機塗料技術の施工(試験施工含む)が進められました。この取り組みは首都高速などにも展開され、広がりを見せました。高速道路会社、鉄道会社、インフラや住宅関連の民間企業などで協会の無機塗料技術の施工は重ねられ、2018年からは日本ウェザリングテストセンター宮古島暴露試験場で5年にわたる暴露試験も実施しました。

写真-1 日本ウェザリングテストセンター宮古島暴露試験場

その結果は想定以上に良かったです。問題意識が明確で、実際の現場のオペレーションに即した施工方法で、施工品質も良好で、暴露試験の結果も良いのですから、発注者としては選択する妥当性と、採用する合理性を説明できるわけです。

こうした試験施工や暴露試験の実施はコストや労力の面で発注者側も大変です。特に自治体さんは税金ですからご苦労されると思います。なので、これらで得られた知見に、これまで協会に溜まった施工や経年追跡などのデータ類を加えて規格やマニュアルという形にまとめることができれば、これから無機塗料技術を活用しようという発注者にのしかかる労力は少なくて済みます。規格があれば技術も標準化していきます。

ですので、これらの成果をもとに無機形塗料の規格やマニュアルの整備を進めました。土研OBさんや道路会社OBさんをはじめ、道路管理者さんなどの協力もいただきながら、ようやく2024年に「無機形塗料の性能報告書」(規格)と「無機形塗料の設計・施工」(マニュアル)にまとめたところです。

私はまとめるに際し、作業量多めに受け持たせてもらいましたので、世界の趨勢からもカーボンニュートラルは基本で、つまり物を長く大切に使う長寿命化の観点から、「維持管理を考慮した設計」の必要性と手法も随所に入れています。①構造・ディテールを維持管理しやすく設計すること、②可能な限り工場塗装を採用すること、をその基本と考えています。

ちなみに、塗料はVOCが社会問題化して以降、低溶剤型塗料や水性塗料等が開発されました。ただ、水性塗料は「乾きにくさ」という弱点があり、施工工程に影響を及ぼします。夏が来ると首都圏の自治体を中心に、「光化学スモッグやPM2.5の原因となるVOC排出削減にご協力ください。塗料や溶剤を購入する際は低VOC製品を積極的に選びましょう」と動画などでも呼びかけています。このように、光化学スモッグの原因として有機溶剤が問題視されるなかで、有機溶剤に頼らない無機塗料技術は、環境や健康を守りながら持続可能に社会が発展していく観点からも重要なのです。

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そして無機形塗料の規格類は整った

――規格について教えてください。まず、「無機形」として規定している基準は?

角さん 「無機形塗料」として、規格化するに際して、質量ともに整っている協会のデータをベースとしています。試験施工や暴露試験は通常通り、セラマックスシリーズに加え、比較材料としてそれぞれ複数の有機系塗料と無機形塗料を同条件で施工していますので、それらのデータも含みます。

セラマックスシリーズはセラ(セラミック=無機物を加熱処理し焼き固めた焼結体)の良さをマックス(最大限)に引き出して、世の中にマックスに役立てたいという関わってくれた人たちみんなの気持ちを表したネーミングです。そのためには材料に占めるセラの分量もマックスにする必要があるんです。比較材料のなかでもセラマックスシリーズが最も無機成分の含有量が多いです。

なので、結果的に含有成分の定義も試験の結果が最も良かったセラマックスシリーズに倣い「無溶剤無機形塗料(有機溶剤を含まず樹脂成分中のオルガノポリシロキサンを90%以上含有する塗料)」と「無機有機複合形塗料(樹脂固型分中15%以上のオルガノポリシロキサンと85%以下の有機樹脂と複合した塗料)」を定め、それ以外の用語は「鋼道路橋防食便覧」に準拠してまとめています。施工品質を担保するには上記の含有基準を満たす必要があるのです。

図-2 オリゴマーの架橋模式図

オルガノポリシロキサンは無機樹脂主鎖のSi-O結合なので、紫外線で結合が壊れにくく、つまり紫外線劣化しにくいので、紫外線に対する耐久性があります。一般有機樹脂の主鎖・ふっ素樹脂の主鎖であるC-C結合は紫外線で結合が壊れやすく紫外線劣化しやすいのです。紫外線劣化のしにくさでは

無機樹脂主鎖(Si-O結合)>
  ふっ素樹脂側鎖(C-F結合)>
    一般有機樹脂主鎖・ふっ素樹脂主鎖(C-C結合)

ですので、オルガノポリシロキサンの含有量を無機の塗料の規格の指標としています。セラマックスシリーズでは無溶剤無機形塗料がセラマックス#1000AL、セラマックス#2000、セラマックス#3000、無機有機複合形塗料がセラマックスFT30、セラマックスFT70となります。

――それで、この規格のベースとなっているセラマックスシリーズは、どのような基準類を満たしているんでしょうか。

角さん 防食関係では日本道路協会の鋼道路橋防食便覧であるとか、高速道路会社さんが整備している独自の基準類、耐火などでは国土交通大臣認定法、他に土木学会さんによる基準類など、塗装や表面保護工などの材料が満たすべきものに対応しています。

対応というのは例えば、セラマックスジンクリッチペイントは鋼道路橋防食便覧の有機ジンクリッチペイント/無機ジンクリッチペイントと同等規格試験を合格とか、セラマックス#1000ALは同便覧のエポキシ樹脂塗料下塗規格合格とか、セラマックス#2000は同便覧のふっ素樹脂塗料上塗規格合格というように規格試験に合格しているということです。

これらを満たすために、例えばJIS何番の試験のクリアが必須というように紐づいているものにも対応しています。これらの情報は道路管理者さんのニーズも高いですし、項目がかなり多岐にわたりますから、「無機形塗料の性能報告書」と「無機形塗料の設計・施工」を、ホームページに細かく示しています。

道路管理者さんにこうした基準類への対応やNETISの登録状況をお話しすると、「でしたら、材料としてはすぐに使えるわけですね」となって、同時に無機形塗料の材料の扱いはどの施工会社でも可能か、つまり管内の会社さんでもできるのか、ということを気にされます。慣れた有機の塗料でなく、無機という扱いなれない新材料では地元の会社さんで施工可能か?という点です。

セラマックスシリーズは特約代理店にならないと材料を買ったり、施工したりということができない、というようにはしていません。加えて協会員でなくても材料を買って施工することはできます。ただ、一つ厳守していただいているのは、協会員もそれ以外も必ずライセンスを取得してもらっています。ライセンスは取りっぱなしではなく、免許などと同じく研修や講習を伴った更新制です。無機形塗料は施工品質を出すのに特に難しい鍛錬がいるため使い手を選ぶ材料だとか、そういうことはないのですが、慣れた有機とは材料が違いますので、施工上の留意点もおのずと異なってきます。

無機形塗料の性能を発揮して効果を得るには、施工品質は必須ですので、座学での講習と、実技の研修、試験で半日から1日程度のメニューを用意し、参加と合格をしてもらいます。施工品質のために、塗装とは何かという必要な基本部分を最初に座学で確認した上で、そうであれば無機形塗料はこのような特徴があるから、取り扱いはこうで、施工はこうで、その上で実技をして、という手順で身に付けてもらい、最後に試験をしています。また、現場が始まる前にも、道路管理者さんのご要望も高いので、現場研修をしています。こうした講習や研修には、材料を知っておこうと道路管理者さんも同席参加されるケースが多いです。

協会主催の管理士講習はCPDSの認定講習です。

写真-2 管理士・技能士講習会状況(2025年度)

暴露試験も良かった(チラ見せじゃないですが、オタ的なので読み飛ばし可)

――暴露試験データとしては?

角さん 業界の方々はこういうバックデータは大好きなのですが、この章は一般の方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。また、説明が長くなるので、抜粋した記事紹介になりますが、チラ見せしかしないということではないので、もう少し詳しく知りたいとご興味を持たれた方は協会のホームページにもアップしていますし、協会にご質問いただけたらと思います。

無機質コーティング協会HP

性能試験(暴露試験)は、日本ウェザリングテストセンター宮古島暴露試験場(内陸部と海岸部)で実施しました。5年暴露試験ですので2017年3月から2022年2月までのデータを取得し、その結果をとりまとめました。塗装板はMM-ABCの3種類を用意し、主な違いはMM-AとMM-Bはすべてセラマックスシリーズを使い、MM-Cはセラマックスシリーズは使わず防食便覧でいうC-5塗装系です。MM-Cはオルガノポリシロキサン90%以上含有ではない通常の無機ジンクリッチペイントに、エポキシ樹脂塗料(下・中塗り)とふっ素樹脂塗料(上塗り)を使った仕様です。ABは防食下地(通常の無機ジンクリッチペイント)を施工したか(A)、しないか(B)の違いです。

下塗のセラマックス #1000ALと・上塗のセラマックス#2000は「無溶剤無機形塗料(有機溶剤を含まず樹脂成分中のオルガノポリシロキサンを90%以上含有する塗料)」です。

表-1 暴露試験における塗装仕様の例

暴露試験板の5年経過後の状況を写真-3に示します。

写真-3 暴露試験板 5年経過後の状況

また、代表的な試験結果の例を図‐3に示します。

図-3 暴露試験結果(5年間の推移)

1年ごとの数値の変化は表のとおりです。どういうことかといいますと、初期光沢度は、C(通常のふっ素仕様、光沢度77)>B(防食下地無し、標準仕様、同55)>A(防食下地+標準仕様、同52)の順に高くなっています。

暴露5年後の光沢度になりますと、A(光沢度 46)>B(同44)>C(同 17)の順に高くなっています。つまり光沢度保持率(%)は想定通り、A(88%)>B(80%)>C(22%)の順に高くなっています。

違いや変化が出たものは他に白亜化でCは3年(白亜化度1)、5年(同2)で確認されましたが、AとBは確認されませんでした。

塗膜の外観のカット部からの錆汁の流れは、Bのみがあり、AとCは良好でした。この錆汁はジンクリッチペイントの有無が影響したものと考えています。

他はあまり違いや変化はなく、塗膜の外観(さび・はがれ・われ・ふくれ)はいずれも健全でした。

明度差ΔL・色差ΔEは有意差はなく、変退色は少なかったです。

塗膜保持率(%)は有意差はなくいずれも高いです。

付着力試験はいずれも高く良好でした。

これらの結果は、H13.2工業技術会「無機系塗料・コーティング材の開発動向」(図-4参照)講習会資料と同様の傾向です。

図-4 無機系塗料・コーティング材の開発動向

加えて2017年から本四高速・鳴門管理センターと共同で、大鳴門橋5Aアンカレイジ上自動車防護柵試験塗装を実施しています。直近では施工後7年経過した2024年9月に追跡調査をしました。もともとあった既設の防護柵の塗替えとして施工していますので、塗装仕様は本四高速の塗替基準に則っています。

仕様B、C、D(表-2参照)は無機形塗料を使用、Fは有機系(ふっ素仕様)です。使用しているセラマックス#1000AL、セラマックス#2000ALは無機の規格でいうと無溶剤無機形塗料(有機溶剤を含まず樹脂成分中のオルガノポリシロキサンを90%以上含有する塗料)です。補修塗りとは、さび部だけ部分的に塗ることです。

B、 C、Dの違いは、Bが補修塗り+一層塗り、CとDが補修塗り+2層塗りで、CとDの違いはCは#1000AL仕上げの艶消しのシルバー仕上げ、Dは#2000仕上げの 艶ありです。Aはありましたが、膜厚の設定が薄かったため、省略しています。

表-2  自動車防護柵 試験塗装仕様例

また、代表的な試験結果の例を表‐3に示します。

表-3  自動車防護柵 試験塗装結果の例

調査項目は60度鏡面光沢度、目視調査、白亜化です。

7年経過後に確認すると、60度鏡面光沢度は、艶あり仕上げの仕様D(無溶剤無機形)の平均値は41.0、同仕様F(有機系ふっ素仕様)は36.0であり、ほぼ同様な数値でした。一方、保持率を比較すると、仕様D(無溶剤無機形)は129%、同仕様F(有機系ふっ素仕様)は73%でした。仕様D(無溶剤無機形)が保持率100%を超えているのは表面が初期より平らになっているためと思われ、表面劣化は進行していないと考えられます。仕様F(有機系ふっ素仕様)は、光沢保持率が低下しており、表面劣化が始まっていると考えられます。外観は、いずれの仕様も異常は確認されませんでした。

白亜化は、仕様F(有機系ふっ素仕様)は少し確認されましたが、その他の仕様(無溶剤無機形)では確認されませんでした(写真-4参照)。

写真-4 暴露試験 7年経過後の状況

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根津 寿子
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橋の記事を中心に、公共事業の記事を書きます。読んでくださったかたに、お役立ていただける情報発信を心がけています。データサイエンスに関心があります。Master of Business Administration
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