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「やっと完全無機にちかい塗料ができたでぇっ!」 鳴かず飛ばずだった構想、春秋を経て革新的技術に

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根津 寿子
公開日:2024.07.09
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協会事務所での打ち合わせ。右が平良さん。その視線の先の左が小川さん。

協会事務所での打ち合わせ。右が平良さん。その視線の先の左が小川さん。

目次
  1. 数十年持ち続けたそれぞれの思い、気持ちが通じたら3年で製品に
  2. 一人勝ちではダメ。みんなにハッピーな商売に
  3. 環境負荷、社会的負荷のより少ないものを選ぶ世の中に
  4. インフラだけじゃない。世界中のバスタイムをハッピーにしますのや

(一社)無機質コーティング協会の平良一夫会長から電話があった。「やっと完全無機にちかい塗料ができたでぇっ!」

すごくうれしそうだ。「塗装の無溶剤・完全無機」は平良会長の悲願だ。そこには、完全無機塗料の開発を封印してきたもう一人の存在があった。知人関係の二人はそれまで、自身の夢を語り合う機会には恵まれなかった。

「こんなおっちゃんらが、『自分はこんな社会貢献を実現するために頑張りたいねん』なんてにわかには語り合わへんしな。知ってからは急展開やな」。3年で完全無機にちかい塗料は事業化し、革新的技術としてインフラ管理者や住宅関連、そして「世の奥さまがた」の熱視線をあびている。

数十年持ち続けたそれぞれの思い、気持ちが通じたら3年で製品に

――とうとう塗料を完全無機にちかくできたんですね。協会発足から25年、急展開があったんですか?それとも、じわじわぁ~と進捗していたということですか?

平良さん ゆっくりと、そして急に、緩急両方ですわ。小川さんが3年前に技術部長として加わって急展開できたわけですけれども、その長足の進歩があったのは、若い頃から私は無機の会社と協会を作って取り組んできましたし、小川さんも無機の構想を持っていたことがとても大きいです。

私がまだ若い頃、子どもたちのシンナー中毒が社会問題になっていて、現場でも普通に塗装の溶剤にシンナーが使われていて、作業員にも周辺住民にも良い影響はありませんし、なにより子どもたちが簡単にシンナーを手に入れられるような状況を無くしていきたいと、溶剤にシンナーを使わない塗装の開発を決意しました。当時、子ども会の活動に加わりだしたころで、思いを強くしました。

「シンナーを使わずに塗膜の施工品質を出す塗料材は無機材料だ、無機はそれ自体環境負荷も少ないから社会のためになる」と開発に邁進したけれど、そこからはとにかく大変で、こんなおっちゃんでも心が折れまくり。でも、キレイごとではなく、ほんまに周りに恵まれて助けられて製品開発や施工品質のレベルアップができるようになった。ほんまに感謝しかない。新技術に熱心な発注者さんがヤードの協力をしてくれて、そしてニーズやリクワイヤメントへの対応の出来不出来や改善点を厳しい眼で評価してもらいながら、トライアンドエラーを重ねてきました。こうした進め方は、我々が”現場の困った”というニーズに対応する製品開発に注力するきっかけというか原点で、今でも大事にして続けています。

こうした成果で、溶剤のシンナーは早い段階で不要にできました。でも完全無機はどうしても難しくてできない。我々がいま見舞われている環境問題や社会問題の解決に無機は必ず役に立つと粘り強く取り組むものの、なかなか完全無機で施工性や塗膜品質で太鼓判を押せるまでには届かない。そこに小川さんの構想が舞い込み、発注者さんに協力をいただきながら協会が積み重ねてきた知見とシナジーが出て、やっと完全無機にちかい塗料が実現したんです。小川さんとは数十年来の知人やけど、いいおっちゃんらが、「自分はこんな社会貢献を実現するために頑張りたいねん」なんてにわかには語り合わへんしな。知ってからは急展開やな。

――小川さんの構想ってなんですか?この話ってこれから「風の中の~♪」みたいな展開になりますか?

小川さん 実際に開発したんはこの直近3年やから、そんなん技術大河めいてもおらへんわな・・・。ただ、どんな現場もそれぞれそれなりなドラマは必ず持ってはるんちゃいますか?

若い頃、無機材料は社会のためになると着目して、珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤の構想を練ろうと思ったんですよ。でも、環境より利幅の商慣習が席巻しとった時代やからまったく見向きもされへんし、研究も開発もなにもでけへんかった。封印ですわ。それからはずっと売れ筋で開発をしてきました。ただ、珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤は社会のためになるという思いはずっと持ち続けてた。

そのうちにさまざまな環境問題が顕在化してくるなか、その思いは一層強くなっていました。そして今、その製品化が「珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤W10番」として実現し、環境問題・社会問題の解決に寄与する革新的技術として、インフラの管理者や住宅関連などの多くの方々から関心を集めるようになったのです。何十年もなんもできひんかったけど、気持ちを持ち続けて良かった、そう思うてますのんや。

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――その珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤って何ですか?小川さんが開発した物質ですか?どのへんに革新性があるのでしょうか?特許とかもあると思うので、差し支えない範囲で教えてください。

小川さん 珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤は前からあった材料で、僕が開発したわけではないです。良い材料です。ですが、耐水性が悪くて雨が降ると流れてしまう。これが弱点でした。ここを克服できればさらに良い材料になると思ったんです。常温乾燥する無機系の耐水、耐候性の良い水性塗料の技術は人類の永遠のテーマでもあったんですよ。

そしてもう一つ。無機材料は無機ゆえに硬いので、割れないよう追従性を持たせようとすると樹脂などの有機材料を混ぜなければならず、完全無機とはなりません。つまりトレードオフの関係です。なので実験室内の材料でなく、実社会で施工して使用するには完全無機は難しいのです。だから、世の中の無機塗料は有機材料も入っているほか、施工においても塗膜の接着剤に樹脂などの有機材料を使っています。無機質コーティング協会でも、今般の珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤W10ができるまでの商材は「業界最少」の10%程度入れてきた歴史があります。

そこで、平良さんと研究開発を始めるときに、珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤を、耐水性を良くすることと、有機材料を使わずに追従性と接着性を持たせることで、実社会で重宝される完全無機塗料に仕上げようと。つまり、トレードオフを克服するわけですから、競争優位が成り立つわけです。そして、その施工に際しても省工程で簡便に、講習をすることで誰でもできるようにしようと、製品設計の目標を定めました。施工性の良さと施工品質の良さ両方がないと、普及していきませんし数もこなせませんから、結果的に何の社会貢献にもなりませんからね。材料だけできたっちゅう話で終わってまう。

そして普及に大事なのはもう一つ、利幅の商慣習ですわ。環境に良いし、余計なコストは省かれるから利幅もある。発注者側も施工者側も消費者側にもハッピー。近江商人も言わはる「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」。それに環境にも良いから「未来よし」。京都市長だった門川大作はんも「四方よし」いうてはりましたやろ。商いは一人勝ちはダメ。どこかにしわ寄せがいって悪影響が出てしまう。みんなにハッピーな商売にしないと。この思いも平良さんと一緒だったんですわ。そうしたら、人手不足でもあるから、間接費が省けるようにしようと、だから省工程で簡便な施工で品質が良くできるようにと。

それで、珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤に耐水性と樹脂のような柔軟性・接着性をもたせた完全無機にちかい塗料「珪酸ヒドロゾル系常温硬化型完全無機質コーティング剤W10番」ができましたんや。組成はノウハウそのものやから、メディアでババっとつまびらかにはできひんけど。もうすでにいろいろなインフラでテスト施工をさせてもらって、反応もすごく良いです。インフラ以外では浴槽のリニューアルも反応がすごく良いですね。ほかに建築も良いです。

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橋の記事を中心に、公共事業の記事を書きます。読んでくださったかたに、お役立ていただける情報発信を心がけています。データサイエンスに関心があります。Master of Business Administration
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