権威主義にウンザリした元ナビタイムIT技術者が、あえて土木で起業するワケ

株式会社トラフィックブレインの社長・太田恒平さん

権威主義にウンザリした元ナビタイムIT技術者が、あえて土木で起業するワケ

元・ナビタイムの技術者が語る、土木業界の闇

土木学会若手パワーアップ小委員会の連載企画「土木辞めた人、戻ってきた人インタビュー」。第3回目は、株式会社トラフィックブレインの社長・太田恒平さんです。

太田恒平さんは東京大学工学部社会基盤学科卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修了。ナビタイムジャパンに入社し、ナビタイムの経路探索・交通ビッグデータ分析・交通制御・交通広告を担当したのち、2017年6月に株式会社トラフィックブレインを設立しました。

土木業界のどこに問題があるのか、太田さんに辛口コメントを頂戴しました。土木業界人は必読です。

土木業界は権威主義的で「じんましん」が出る

――土木に興味を持ったきっかけは?

太田 もともとめちゃくちゃ土木が好きっていうより、交通が好きで。中学2年生の時にはアクアラインをテーマに自由研究をしました。で、交通ってどうも土木らしいぞと。それで東京大学工学部の社会基盤学科に進み、学部では家田仁先生の研究室に所属しました。学部時代は不良学生で論文発表も論文投稿もしたことがなくて。大学院は新領域創成科学研究科、空間情報科学研究センターというところで地図の研究をしました。

――もう大学院の時点で、土木からは離れていたんですね?

太田 学部の時点で、土木を続けるってイメージが全然なかったんですね。卒論は「交通事業者はなぜ復旧見込みを出し惜しんだのか」でした。でも、土木の権威主義的なところが自分には合わなくて。家田先生がそうって話では全然ないんですけど、土木って重いなあと。

皆スーツで、「何とか先生!」って感じのパッケージ全体が無理でしたね。そういうのも必要なんだと思いますけど、もっとソフトに出来る話も重い方に引きずられているというか。

――大学で学んだ土木はどうでしたか?

太田 ITは社会人になってもいつからでも学べますけど、土木は大学に入らないと学ばなかっただろうなと思います。世界を知らないままにいたかと。

――確かに、土木の世界はクローズドですね。本来ならどんな業界にも絡んでいけるはずなのに。

太田 最初に土木に行ったのは、たまたまだったですけど、いい経験になったと思うんですよね。そう思わないと、あの権威主義的な場所でじんましんが出ちゃう。

――新領域創成科学研究科は、いわゆる土木工学とは違いました?

太田 そうですね。新しいところなので緩いです。キャンパスも柏ですし。首都圏の中の柏の立ち位置ですよね。その柏ヒラエルキーの中でもメインじゃない場所で(笑)。本郷のあのどっしりとした感じがね、合わなかったんですね。

ナビタイムに就職し、社長の作ったソースコードをC言語でゴリゴリ

――修了後、ナビタイムに就職されたわけですが、ナビタイムを選ばれたのは?

太田 交通とITが好きだったからですね。機械いじりとかも昔から好きでしたし。好きなもので大学まできましたので。嫌いなことじゃ頑張れないですからね。

ナビタイムは競合他社の中でも、一番先進的でした。技術開発を一番自分の言葉で話していた会社でしたね。社長、副社長とも技術者なので、研究テーマをそのまま仕事にしていて、特許も出していて。ナビタイム以外の乗換案内サービスは「駅」がベースなんですが、ナビタイムはカーナビがあるのでもっと広い分野が対象なんです。

――ナビタイムには、太田さん以外の土木出身者はいましたか?

太田 それが他にいなかったんですよね。当時社員が300人くらいで、鉄道オタク、バスオタクみたいな趣味の人とITの人はいたんですけど、交通工学の人はいなかったですね。

それでも意外とカーナビって出来ちゃうんですね。だからカーナビ担当の人に「時間価値」の話をしても通じないんですよ。だからエクストラのナントカ…なんて話にいかなくても、時間価値の考え方だけでもう新しくて。大学での知識は活かされましたね。

――ナビタイムでは、交通工学自体が馴染みのないものでしたか?

太田 そうですね、あまり認識されていませんでしたね。線形和でコストを積み上げるってところから輸入しました。もう世界や文化が違うので、本当に輸入してきたって状態でしたね。

2011年から2012年にかけて、カーナビシステムの置き換えをやったんです。テーマは交通でしたけど、ずっとプログラミングばかりやっていました。社内にひきこもって、もう創業以来くらいの規模で、社長の作ったソースコードを毎日C言語でゴリゴリと。入社2年目ですけど、まあやればできますって啖呵を切って(笑)、良い経路を突き詰めるモジュールを作ったんです。

――2年目からすごいですね。会社自体がそんな雰囲気でしたか?

太田 入社2年目でも創業当時からの、屋台骨であるシステムを任せてもらえるっていうのはITのスピード感ですよね。そもそも新しい領域だと、自分が一番詳しいので、ドンピシャで偉い先生がいない分、好き勝手やれます。先生より私の方がデータ持ってますし、「先生、やったことあります?」って言えるんですよね。

――確かにナビタイムって変な経路が出ないんですよね。走りやすさはどう決めているんですか?

太田 新しいシステムの目玉は、時間と費用と走りやすさの一般化費用を導入したことですね。それまでは時間優先、距離優先で、時間や距離の単一コストモデルだったんです。でも同じ道なら太い方が安心だし、なるべく曲がる回数は少なくしたいですよね。というのを全部コスト化して、総合評価が一番良い経路を決めるんです。その重みのバランスを、無料優先と高速優先で係数が違うようにして、私が「えいやっ!」と決めました。

――そうなんですか!?カーナビの中には、交通工学で学んだ難しい式がたくさん入っていると思っていました。

太田 大学の交通工学って難しいじゃないですか。数式をいっぱい使って、難しい理論を突き詰めて。その頃からもっと簡単に決められるはずだと思っていました。カーナビを作る場合、過去何十年の時間価値の調査なんてしないですね。重み付けは、ほぼ私のフィーリングです。これくらいかなって。決めるのはユーザーさんの声と、自分の体感に沿っているかですね。

――この新しいナビには、業界的にもざわつきましたか?

太田 どうでしょうね。カーナビの中って見えるわけじゃないので。でも、その後、ナビタイムの社内で交通コンサルティングチームを立ち上げたのですが、この経験が交通コンサルティングには非常に役に立ちましたね。経路の出し方で、某道路会社さんは出ないようにも出来ちゃうわけですから。

――交通コンサルティングチームでのお仕事はいつからですか?

太田 交通コンサルティングチームを立ち上げたのは2012年ですね。最初の案件は、広島県のバスの乗継改善の仕事でした。ナビタイムで時刻表を整理すれば、何か見えてくるんじゃないかと広島県の方が考えられて、ナビタイムを含めて検索各社に話がきました。ナビタイムでも社内で誰が出来るの?って話になって、私が「はい」って手を挙げたんですね。それが交通コンサルティングの最初です。事業を立ち上げるより前に案件があったって状態です。

――その後の展開は?

太田 2012年頃のビックデータブームに乗ろうと思いまして。そこで注目したのが「プローブデータ」という車の移動のデータですね。これを売るべく色々な分析パターンを考えたりして。その時のお客さんは国道事務所とか建設コンサルタントさん、あとは高速道路会社さんでした。国総研からも提供できませんかって話があって、つくばに行ったり。部署としては私が辞める時点で10人くらいのグループになりました。売り上げも前年比で倍々の状態でしたね。


「交通をもっと良くしたい」ナビタイムを退職し、独立起業へ

――そして独立して起業されたわけですが。

太田 私は今「トラフィックブレイン」という会社を2017年6月に立ち上げたばかりで、交通のデータ分析とか、そういった仕事をしています。ナビタイムを辞めたのが去年の1月でした。ちょっと自由に働き過ぎたというか、働き方が社会人としては外れすぎていたみたいです。好きな時に来て帰るって状態だったので、自分としてはいいんじゃないって思っていたんですけど、会社側は色々あったようで。

――前職で、仕事で行き詰ったりは?

太田 仕事は順調でした。でも、音楽性の違いっていうんですかね、アプリを作る会社と、交通をよくしたい自分が折り合わないところがあって。交通をよくしたいとなれば多くの人に使ってもらいたいんですけど、有料課金ビジネスだとそうもいかないところがあります。
データを分析したいと思うと、30代でも1,000万円くらい払って優秀な人を呼んでこなきゃいけないんですけど、そういう給与水準でもありませんでした。頭とデータをゴリゴリ使って、世の中に新しいものを提案するってのが、それなりの規模の会社、350人くらいですけど、結構難しかったというのがありました。

――もともと独立を考えていましたか?

太田 キャリアプランは明確に定めていなかったんですけど、3年くらいやったら飽きちゃうんですよ。真面目にやったら普通3年目には飽き飽きしちゃいますよ。部署異動とかもそんな感じですよね。ビックデータを3年、情報提供を3年くらいやったので、交通コンサルも間にはさみましたけど。もういいかなと。

――例えば、交通と頭を使って新しいことをやるなら、国交省って選択もあると思うんですが。

太田 学生の時から、公務員になるって選択は全くなかったです。実際にコンサルティングをやってみて、改めてそれを感じましたね。公務員は誰もいきいきと仕事をしていないし、権威主義的のど真ん中、狭い世界って感じで。

土木学会の行事も面白くない。基本的に、土木の人ってプレゼン能力が低すぎるんですよ。このネタをあえて2017年の今やるのっていう話で。そんな守りに入った結論は求めてないですよ、と思って質問してみると「それは私の口からは言えません」「それは発注者さんの方から…」って。何しに土木学会に来てんのって話ですよね。言えないなら学会なんか来るなよって。

――でも、その権威主義な人達が変わらないと、面白い交通が提案できないですよね。

太田 そうなんですよ。コンサルティングって、行政側に提案するのが仕事ってイメージですよね。事業者や行政がやる気になってくれないと、「いい話を聞いたな~」で終わってしまう。それを5年位やりまして、もううんざりしちゃって。何でこの人達はやればいいってわかっているのにやらないのって。なので、メディアから騒がせていこうと。データをオープンにして、記事をたくさん書いたりして、サービスを作って、普通の人達の方から「こうすればいいのに何でそうしてくれないの!」って行政側に言わせようと。

――なるほど。データといえば、ナビタイムさんのHPに、太田さんの発表資料が載っていますよね?

太田 それは私が発表したので掲載してもらったんです。せっかく発表するならwebでもってことで社内を調整しまして。

――土木では珍しいですね。でもいい宣伝になりますよね。

太田 そうなんですよ。もう呼び水なんですよね。ナビタイム時代も土木計画学研究発表会に一度に3本論文を出したんですよ。これはプロモーションの場だし、やっている案件全部発表しようと。

――確かに市民からアクションがあると、土木も逆に動きやすくなるかもしれないですね。こちらから工事させてくださいってお願いする流れじゃなくなるってことですもんね。

太田 「この工事をしてほしい」と言わせるのは、ナビタイムにいる頃から始めています。2年くらい前から混雑情報を作って、東急に提供しているんです。首都圏のほぼ全路線の、終日の駅間の情報が拾えます。もっとこういう情報を出していくべきです。例えば、不動産会社のHPに載せたりすると面白いと思うんですよ。そういった人の意思決定の瞬間に、ネガティブ情報も含めて提供できればいいと。同じ時間がかかるなら空いてから乗るか、なんて選択ができるようになる。というので行政やインフラ側を焦らせる。中央線、埼京線沿線に住む人は減っちゃうかもしれませんね。

行政を動かすための「警察の通信簿」を作る

――鉄道以外への展開もありますか?

太田 面白かったのは、右折時間の所要時間を全国で集計したデータです。ずっと右折できない交差点ってありますよね。住民の人は、何待ちなのかって肌感覚でわかってるじゃないですか。それで、ここの右折3秒伸ばしてくれればなって思っているような。

これっていわゆる都道府県の警察の通信簿ですよね。沖縄が一番酷くて。次が熊本ですね。この結果は沖縄の案件をまとめるのにとても役に立ちました。今、こういうデータって管理側しか持っていないんですよね。だから外から判断できない。

――最近はオープンデータも増えていると思いますが。

太田 まだまだだと思いますね。税金で取ったデータは全部開示してもいいんじゃないかと。識者のフィルタを通さなくても、生のデータがあれば人は判断できると思っています。もっとフラットな議論をしていきたいですね。世の中をよくする材料ですから。

生のデータを使って判断する経路が、まだまだ社会的に訓練されていないと思いますね。今もマスメディアからの一方通行からは良くなっているとは思いますけど、土木業界はまだまだですよね。例えば、ホテルとか観光地の星いくつなんてよくやられていますけど、今までは行ってみないとわからなかった。それと同じで情報の非対称性が大きかったんですね。

――労力に対して儲からない気がします。今まで公共だから出来ていたことでは?

太田 そうでもないですよ。うちの会社にも仕事がどんどん来てます。そして同じデータを使って、事業者側とメディア側の両方のアプローチが出来ます。今メディアで大きな利益は出ていないですけど、これからだと思いますね。最終的に、事業者側とメディア側が融合すると思っているんです。

行政側でも、市民側でも結局同じことが出来ますよ。先日のバスマップサミットで公共交通とオープンデータについてお話する機会をいただきました。山梨ではバスのデータが公開されているのですが、バスが使いにくいのでどうしたらいいかと。バスって今、全然存在感がないんです。でも本当は便利なんだから何とかできないかと。

で、公開されているデータをもとに、ふた晩ぐらいかけて、バスの本数とバス停の位置を図でわかるようにしたんです。1時間に何本ってのがわかるように。その結果、幹線沿いならバスを主要な交通手段にしてもいいかなと思えるようなデータができました。次に、出発地と目的地のバス停を選択すると、該当するバス停を選択してオーダーメイドな時刻表が出来るようにしたんです。

――バスを選んでもらう決め手を作ったということですね。他の都市でも可能ですか。

太田 データ形式が同じなら、どこでも出来ます。でもまだまだデータがクローズドなんですね。今はデータを作っているジョルダン流、グーグル流以外の使い方が出来ない。局所解にはまっているんですね。でももうデータを囲い込んでいる時代じゃないでしょうよって。それがナビタイムを辞めた理由でもあるんですけど。


土木は意思決定が超遅い

――IT業界と土木業界ってどんなところが違いますか。

太田 全然違いますね。重さっていうか。35歳で定年を迎えかねないIT業界と、基本的に60歳まで同じ仕事をする土木業界では、3倍くらい違うと思うんですよ。スピード感というか、意思決定が超遅い。稟議で20個スタンプラリーするなんて信じられないですよ。15分社長にアポを取るだけですからね。今は起業して自分に決定権があるので、更にですね。
ナビタイム時代は50件くらい案件を持っていたんです。50件くらいないと、向こうの意思決定のペースと合わなくて。

――土木はどんなところが遅いですか。

太田 何かを変える、やるって意思決定が相当に遅いと。現場のルーチンはどんどん自動化されるので、そういう決めることが人間の仕事になっていくわけですね。市場をつくるとか。そういった人間すべきことがとにかく遅いですね。
色々な土木技術者の方とお話する機会があるので、色々と意見交換をして、いいですねってところまでは行くんですが、いざ実行に移そうとすると「でもうち調査課なんで…」って言われちゃうんですね。でも別の子会社が、でもいろんなルールが、でも利益を上げてもダメだからとか。

――意思決定に時間がかかることと、縦割り組織は課題ですね。土木業界でいいサイクルを回すのは難しいですか。

太田 今は壁を可視化するところからだと思いますね。何か行き詰った時に、壁に名前をつけるようにしているんです。部署間の壁とか。問題に名前を付けてイシュー化することですね。

今、そういうのがみんな泣き寝入りになっちゃっているんですよね。言語化して喋って良い空気にする。誰が悪いっていうのじゃなくて、言うなら歴史が悪いってことですから。一緒に良くしていこうって、固定観念をなくそうって言い合えればいいんですよね。

土木に関しては、面白さとは別の軸があると思っています。皆さん、とても利他的なんですよ。土木の人って皆良い人なんですよね。IT業界によくある「俺俺」ではなくて、世の中のために良くしたいってところですね。名前もどんどん出せばいいと思います。現場の一つ一つの取り組みでもなんでも。誇れる仕事をしているなら名前を出していいはずですよね。

――縁の下の力持ちに美学を感じている人が多いんですよね。

太田 そこはもうちょっとイケイケに寄ってもいいと思いますね。

土木にはもっと大きな仕事がある。その仕組みを考えよう!

――太田さんの交通を良くしたいって気持ちはどこから出てくるんですか。

太田 なんか問題があると直したくなっちゃうんですよね。で、あれこれ考えているうちに次第に「何でなんだ!」って怒りに変わっちゃう。やれば出来る課題が放置されていると、直さずにいられない。

――土木の若手って安定志向が多いので、そういった考えの方は珍しいですよね。土木の若手に言いたいことはありますか?

太田 うかうかしていると仕事がなくなっちゃいますよ。同じ仕事が30年後にもあるはずがないんです。生き残るというか、おまんまの食い上げになっちゃいます。同じことをやっていることへの危機感を持った方がいいですよね。
わからないこと、誰もやっていないことに楽しみを見出してほしいと思います。一度やってみたら面白いってわかるはずなんですよ。今、若手を口説いているところなんです。それこそ、コテコテの路線バス会社に行って、そのダイヤ編集担当の若手と週1くらいでやり取りしているんですよ。

――そういう若手にもやる気の芽がありますか。

太田 ありますね。みんな3年くらい経つと、結構会社の常識に早く染まっちゃうんですけど。でも仕事をやっていると何かしら疑問を感じることがありますよね。それが言語化できないだけなんです。偉い人に言うのが怖いと感じて小さくなってしまっている。
でも、それでは楽しくないはずなんですよ。せっかくやるんだったらいいサービスを提供したいじゃないですか。みんなに喜ばれるサービスを作りましょうよ、と言って回っているんですよね。

――すごいですね。太田さんの会社に入りたくなりました。どんな人材が会社に欲しいですか。

太田 社会に必要とされるものを頑張って作りたい人ですね。熱意と、スキルも当然必要です。サービスを具体的に作らないといけないんで。でも、スキルは完璧じゃなくてもいいんですよ。世に出す時に完璧である必要はないと思っています。あと、お客さんを呼び込める能力ですね。私が独立できたのもそれなので。
よく考えることですね。今、目の前でお客さんが色々言っているけど、本当に必要なものはこっちじゃないですか?と言えること。見出して、提案して、誘導できる。

――それは、かなりのスキルが必要ですね。

太田 これはandでなくてorでいいと思うんですよ。私が隙間を埋めるので。現実は変えられると思って変えていきませんか。今のまま、狭い中で仕事をしていて楽しいですかって。

――今の土木が狭いとしたら、どこに広がっていくと思いますか?

太田 オペレーションですかね。今まで土木って作ることを中心に産業が成立してきたと思うんです。でももうこれからの時代は無理な話です。賢く使うって話もありますけど、そういう考え方になりきれてはいないですよね。まだ、供給ありきの考え方になっている。

今、業界の中でも分断されていて、鉄道なんかは15年に一度どーんと計画が出ますけど、15年も放っておいていいのって話です。作った後は事業者の問題になってしまうし。本当はもっとディベロップメントとオペレーションって一体であるべきだと思うんですよ。IT業界では、システムを作る人と、運用・展開していく人が、両方の都合を考えながら協力して進めています。それが今の土木にはない。

それぞれの島の中で仕事しているとそうなってしまいますけど、本当はもっと大きな仕事があると思うんですよ。土木のスキームって戦前そのまんまなんですよね。そのまんまの中で動くんじゃなくて、新しい仕組みを考えようと。だから政治も必要だと思いますね、もしかしたら私もそちらに行くかもしれないですね。

~後記~ 土木学会若手パワーアップ委員会

土木は良くも悪くも「経験工学」です。若手の意見は職場で通りにくいし、そんな組織の中で若手がひとりで戦うのはとても難しい。

だからと言って、じっと耐えて待つのが土木屋としての美徳でしょうか。私たちも若いつもりで、いつの間にか「権威主義」の側になって思考停止してしまうのが怖くないですか。

私たちが今やっている仕事は、確かに30年後になくなっているかもしれません。逆に、今うんざりしている仕事を私たちは30年先の若手のためになくすことが出来るでしょうか。30年後の土木が変わっているかどうかは、今の私たち次第です。

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土木学会100周年を受けて活動を開始した、発足3年目の若い委員会です。 若手同士の技術的な課題共有から、産官学連携、働き方、土木の魅力の伝え方など、各委員が自らの課題認識と好奇心に基づいて多岐にわたって活動しています。
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