「マニュアル化できない」シールド工事の難しさ
――OJTで「土木の経験を伝える」ことについて、どうお考えですか。
荒東 シールド工事の管理方法は、マニュアル化できない部分があると思っています。土質などの条件によって方法が変わったり、土木工事の中でも特殊な部類なので。今まで経験的、感覚的にやっていた作業をできる限り数値などに定量化することは必要ですが、その辺を探りながら、若い人たちに伝えたいとは思っています。
今の現場では、急曲線が27箇所あります。普通の現場では1~2箇所程度なので、非常に急曲線の多い現場です。1箇所でも急曲線の工事をやれば、いろいろ勉強できます。彼女には、いずれ急曲線の工事を任せたいと考えています。
永末 周りからは「大変な現場だね」と言われますが、早く仕事を覚えて、仕事を任せてもらって、やり遂げたい。1日でも早く1人前になりたいです。習得するものが細かく、多いですが、今は期待に応えたいという思いでいっぱいです。
――独学で習得するものもあるのですか。
永末 独学というか、現場をやる上で必要な技術的知識は積極的に得るように心がけています。今は所長から指示のあったことについて、現場の状況を見ながら対処している状況ですが、今後はトラブルが発生したときに、自分で策を考え対処する能力も、今後身につける必要があります。
荒東 シールド工事に関する本などを見れば、どういう工事、どういう機械なのか書いていますが、実際に動いているモノを見た上でないと、施工計画を立てることはできないところがあります。
――3Dの統合型掘進管理システム「SDACS(スダックス)」でもカバーできない?
荒東 スダックスは、施工状況などを理解する手助けにはなりますが、ひとつのツールにすぎないので、それで全てをカバーできるわけではありません。システム上のデータをどう見るか、どう活用するかというところを習得する必要があります。
――シールド工事の難しい部分とは?
荒東 山岳トンネル工事との一番の違いは、切羽が見えないことです。あと、一度つくった設備の補強、増強が難しい。そういう状況の中で、いろいろなものを想像しながらやっていく部分だと思います。見えない部分については、スダックスで視覚化されることによって、想像や判断する上での手助けにはなっています。
ただ、今掘っている地山に対する対処方法などについては、実際に掘りながらじゃないと、人に教えにくい部分があります。一緒にやっていく中で、「今こういう状態だから、こういうする必要がある」と説明して、初めて理解できる部分があるんです。
シールド工事には砂遊びに似た感動がある
――最後に、みなさんにとっての土木の魅力は?
荒東 ゼネコンの仕事は、2〜3年で環境が変化する仕事だと言いましたが、その間になにかが完成しているんです。そこにはものをつくるという感動、感激というものが、毎回あるんです。特にトンネル、シールド工事の貫通というものは、小さい頃の砂遊びに似た、純粋な感動があります。私にとってはそれが魅力ですね。
佐藤 テレビのコマーシャルで「地図に残る仕事」というのがありました。しかし、私がここ30年間に施工してきたシールド工事は、地表面に直径60cmのマンホールの鉄蓋があるだけです。当然地図ではわかりません(笑)。
入社を決めたときには、黒四や佐久間ダムを施工した間組で、ダムをつくることを夢見ていました。実際勤務してみたら、土木の仕事は、鉄道でも下水道でも「ものをつくる」ということでは、各現場ごとにそれぞれ違いがありましたね。
「企業者に喜んで引き取ってもらう」ために、いろんな工夫をして、楽しんでものをつくってきました。土木には「地図には残らない仕事」もあるけれど、自分の心の中にはいつまでも残っています。「土木はいいなあ」とつくづく思います。
永末 入社した頃は「ものづくりがしたい」との思いはとくになかったのですが、実際に何もなかったところに大きな構造物ができるのを見ると、圧倒されました。視覚的に圧倒的なので、得られる感動も大きいところが魅力だと思います。
工種が同じでも、まったく同じ工事はないので、毎日得るものが必ずあります。頑張れば、必ず自分が成長できる仕事だと思います。自分の人生を考える上で、土木は素晴らしい仕事だと思っています。
――ありがとうございました。
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