2018年度「i-Construction大賞」の受賞者たち / 国交省

2018年度「i-Construction大賞」の受賞者たち / 国土交通省

【国交省直伝】「i-Construction大賞」を受賞するための”3つのポイント”

すべての建設会社にチャンスがある「i-Construction大賞」

国土交通省が建設現場の生産性革命「i-Construction」を掲げて4年目を迎えた。

ICT施工も土工だけでなく、舗装や港湾浚渫、建築分野まで次々と拡大し、建設現場の生産性は飛躍的に向上。石井啓一国土交通大臣は、2019年を「生産性革命 貫徹の年」に位置付けている。

「i-Construction」を普及促進していくための最大のポイントは、一部の大手ゼネコンだけでなく、地方の中小ゼネコンが取り組みやすい環境を整えていくことにある。

そこで、国交省は2017年度に「i-Construction大賞」を創設。建設現場の革新的な取り組みを表彰することで、地方への水平展開を目指している。

「i-Construction大賞」は、2017年度は直轄工事が対象だったが、2018年度からは地方公共団体等の発注工事や産官学民から構成する「i-Construction推進コンソーシアム」会員の取組みなどに対象が拡大され、計25団体が受賞。その取り組みは着実に全国に拡がっている。

今回、「i-Construction 大賞」の事務局を担当した国土交通省大臣官房技術調査課に、「i-Construction大賞」の意義やメリット、そして受賞するためのポイントについて話を聞いた。


「i-Construction大賞」を受賞するメリット

――国交省が「i-Construction大賞」をはじめた理由は?

国交省 国交省では、建設現場を魅力ある現場に改革していくために、革新的技術の活用などにより、建設現場の生産性向上を目的とした「i-Construction」を実施してきました。

この「i-Construction」のさらなる普及や水平展開をしていくために、2017年度に創設したのが「i-Construction大賞」です。

「i-Construction大賞」は、優れた取り組みを広く周知することや受賞された地方ゼネコンのモチベーションアップが大きな目的です。

石井啓一国土交通大臣(2018年度「i-Construction大賞」授賞式にて) / 国土交通省

――「i-Construction大賞」を受賞するとどういうメリットがある?

国交省 2017年度は砂子組(北海道奈井江町)とカナツ技建工業(島根県松江市)が最優秀賞の「国土交通大臣賞」を受賞しました。

どちらの会社も、高レベルの生産性向上、ものづくりに対する意欲、ICT施工の取組みなどについて新聞社や雑誌から取材を受けたりして、企業知名度が上がったようです。

両社とも引き続き生産性向上について社を挙げて取り組みたいと話しています。

「i-Construction大賞」の評価ポイントは「有効性」「先進性」「波及性」

――「i-Construction大賞」はどうすれば受賞できる?

国交省 「i-Construction大賞」では、ICTを導入した有効性が確認できること、先進的な取組みであること、自社以外の地方ゼネコン等への波及性を評価します。この3点が評価のポイントです。

砂子組は、人材育成を目的に、ICT技術の導入や自社基準の確立を目指して「ICT施工推進室」を設置しています。ICT土工の準備や現場への乗り込みサポート、準備を専門部署に一元化することで、現場へのバックアップ体制を強化した点が大きな評価ポイントです。

また、ICT土工の第1号工事現場として多くの見学会や取材にも対応したことも高く評価しました。砂子組では、計30回もの見学会を開催し、700名の見学者に対応しています。

――カナツ技建工業は?

国交省 カナツ技建工業は、3次元設計・施工データの作成・活用を主体的に実施した点を評価しました。

とくに、地元の測量設計機械土工業者、地域の測量機器取扱業者、専門企業であるソフトメーカーで編成するプロジェクトチーム「i-Conetc隊」を設置し、地元業界のICT活用技術力向上や地域のICT活用普及に寄与した点は評価が高かったですね。


下請けでも「i-Construction大賞」を受賞できる

――2017年度と2018年度では、「i-Construction大賞」の制度に変更はあった?

国交省 2017年度は前年度に完成した直轄工事を対象にし、各地方整備局などからの推薦をもとに決めました。

2018年度は、同じく前年度に完成した直轄工事に加えて、測量などの業務、地方自治体の工事、業務を実施した団体、元請け工事以外の下請けや民間独自の取組みも表彰するために、産官学民から構成する「i-Construction推進コンソーシアム」会員も対象に拡大しました。

――なぜでしょう?

国交省 国交省が旗を振るだけでは「i-Construction」は普及しないからです。

IoT・人工知能(AI)などの革新的な技術の現場導入や、3次元データの活用などを進めるには、ゼネコンに限らず、土木技術以外の技術を保有するIT企業などの民間企業、産業界、地方自治体、学識経験者の協力が必要です。

i-Construction推進コンソーシアムでは、最新技術の現場導入のための新技術発掘や企業間連携促進、3次元データ利活用促進のためのデータ標準やオープンデータ化なども行っています。

――制度が変わった2018年度「i-Construction大賞」は、どんな企業が受賞した?

国交省 2018年度は計25団体が受賞し、そのうち加藤組(広島県三次市)、田中産業(新潟県上越市)、政工務店(佐賀県小城市)の3社が、国土交通大臣賞を受賞しました。

「i-Construction大賞」受賞者(2018年度)

〇直轄工事/業務部門

NO 表彰の種類  業者名  工事/業務名 発注
地整等
1 国土交通大臣賞 株式会社加藤組 国道54号下布野歩道工事 中国
2 優秀賞 宮坂建設工業株式会社 一般国道274号 清水町 石山南改良工事 北海道
3 優秀賞 株式会社佐藤工務店 中野地区道路改良工事 東北
4 優秀賞 水郷建設株式会社 H28西浦右岸大岩田地区築波浪対策護岸工事 関東
5 優秀賞 株式会社小島組 H29 鹿島港外港地区中央防波堤付属施設築造工事 関東
6 優秀賞 国際測地株式会社 平成28年度上尾道路敷地調査他業務 関東
7 優秀賞 共和土木株式会社 平成29年度浦山縦工他工事 北陸
8 優秀賞 中日建設株式会社 平成29年度 庄内川下之一色しゅんせつ工事 中部
9 優秀賞 株式会社おかむら 平成29年度 名古屋港庄内川泊地外浚渫工事 中部
10 優秀賞 株式会社吉川組 精華拡幅乾谷地区橋梁下部他工事 近畿
11 優秀賞 株式会社大竹組 平成28年度 大谷地区改良工事 四国
12 優秀賞 岡本建設株式会社 踊瀬地区道路改良工事 九州
13 優秀賞 株式会社大寛組 平成28年度港川地区改良外工事 沖縄
14 優秀賞 高砂熱工業株式会社 経済産業省総合庁舎別館改修 (16)機械設備その他工事 官庁営繕

〇地公体等工事/業務部門

NO 表彰の種類 業者名 工事/業務名 発注者
15 国土交通大臣賞 田中産業株式会社 一般国道253号(三和安塚道路)本郷サーチャージ盛土(その2)工事 新潟県
16 優秀賞 戸田建設・鹿内組特定建設工事共同企業体 青森空港整備事業滑走路・誘導路改良工事 青森県
17 優秀賞 小川工業株式会社 社会資本整備総合交付金(河川) 工事(護岸工) 埼玉県
18 優秀賞 株式会社正治組 平成28年度[第28-D7313-01号](一)静岡港韮山停車場線防災・安全交付金工事(長塚橋橋脚補強工) 静岡県
19 優秀賞 八木建設株式会社 H28阿土 南部健康運動公園 阿南・桑野他 陸上競技場整備工事(担い手確保型) 徳島県
20 優秀賞 増崎建設株式会社 一般県道諫早外環状線道路改良工事(盛土工10) 長崎県

〇i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門

NO 表彰の種類 取組団体名 取組名 本社
所在地
21 国土交通大臣賞 株式会社政工務店 平成29年度における株式会社政工務店の取組 佐賀県
22 優秀賞 ライト工業株式会社 道路盛土直下の地盤改良工事におけるICTの利活用 東京都
23 優秀賞 株式会社コイシ UAVによる除草工事の出来形管理について 大分県
24 優秀賞 一般社団法人Civilユーザ会 一般社団法人Civilユーザ会のBIM/CIM推進への取組み 東京都
25 優秀賞 フタバコンサルタント株式会社 i-Constructionの取組み 福島県

――この3社が国土交通大臣賞を受賞したポイントは?

国交省 加藤組では、施工管理業務を行っている社員の年齢構成が、20代が16%、30代が24%で、40代・50代・60代がそれぞれ20%となっています。

つまり、加藤組の全技術者のうち、40%が50代以上なんです。これから定年退職を迎える社員が多い一方、若手の技術者は深刻な採用難が続いていました。

そこで、加藤組ではICTにより楽しい現場を創造し、魅力ある建設業界を構築し、生産性向上や新規入職者の拡大につなげようとしています。

加藤組の取り組み事例 / 国土交通省「i-Construction大賞 受賞取組 概要」より

加藤組は建機メーカーと協力して、小規模で作業幅員が狭隘なため、一般的なICT建機では施工が物理的に不可能な歩道工事にも適用できる全国初の3Dガイダンス付きミニショベルを導入しました。

この創意工夫が、国土交通大臣賞を受賞したポイントです。

――田中産業と政工務店は?

国交省 田中産業は、法面整形にICTバックホウを用いて高さ管理を行ったことや、少ない建機で施工した点を評価しました。

田中産業の取り組み事例 / 国土交通省「i-Construction大賞 受賞取組 概要」より

また、政工務店では、ICT建機を積極的に導入し、社内外講習も幅広く実施した点を評価しました。

政工務店が請け負う工事は大部分が下請けですが、18台ものICT建機により業績を上げた新しいタイプの下請けです。まさに、「i-Construction」を自社内外で体現している建設会社と言ってもいいでしょう。

政工務店の取り組み事例 / 国土交通省「i-Construction大賞 受賞取組 概要」より

――「i-Construction」の普及推進のカギは、地方ゼネコンが握っている?

国交省 その通りです。2018年度から国交省直轄工事に加えて、地方自治体などの工事、業務も受賞対象としたのは、「i-Construction」の裾野を拡大するためには地方ゼネコンへの普及が重要であるとの認識からです。


「i-Construction」のモデル事務所を選定

――技術調査課では、「i-Construction大賞」以外にどのような取り組みを行っている?

国交省 積算の見直しを行っているほか、技術調査課から各都道府県に対して「i-Construction」のモデル工事を促しつつ、国から専門家を派遣しながら、地方自治体と地方ゼネコンに「i-Construction」を実体験してもらっています。

――具体的には?

国交省 「i-Construction」の取組みをリードするモデル事務所として、全国10事務所を選定しました。これにより、測量・調査から維持管理までの先進的な3次元データの活用やICT等の新技術の導入を加速化していきます。

「i-Constructionモデル事務所」と3次元情報活用モデル事業の現場は次の通りです。

  • 小樽開発建設部(一般国道5号 倶知安余市道路)
  • 鳴瀬川総合開発工事事務所(鳴瀬川総合開発事業)
  • 信濃川河川事務所(大河津分水路改修事業)
  • 甲府河川国道事務所(新山梨環状道路、中部横断自動車道)
  • 新丸山ダム工事事務所(新丸山ダム建設事業)
  • 豊岡河川国道事務所(円山川中郷遊水地整備事業(河川事業)、北近畿豊岡自動車道 豊岡道路)
  • 岡山国道事務所(国道2号大樋橋西高架橋)
  • 松山河川国道事務所(松山外環状道路インター東線)
  • 立野ダム工事事務所(立野ダム本体建設事業)
  • 南部国道事務所(小禄道路)

このほかにも、工事の大部分でICT施工を適用する「ICT-FULL活用工事」の実施など、積極的な3次元データの活用を推進する「i-Constructionサポート事務所」として全国53事務所も選定しています。

i-Constructionサポート事務所では、地方自治体や地域企業の「i-Construction」の取り組みをサポートする相談窓口を設置しています。

全国のi-Constructionモデル事務所・サポート事務所 / 国土交通省

「i-Construction」で担い手不足は解消できる

――「i-Construction」と担い手確保・育成はリンクするのでは?

国交省 そう思います。「i-Construction」は、建設業のイメージアップにもつながりますし、3次元データの活用やドローンなどの先端機器により、経験の浅い方でも建設業界に入職しやすい環境を目指しているので、まさに担い手確保にもつながります。

土木離れが叫ばれていますが、「i-Construction」を通して若い方にも建設業界に関心を抱いてほしいですね。

――2019年度の「i-Construction大賞」は何か変わる?

国交省 現在決まっていることはありませんが、「i-Construction」が普及促進し、地方により根付かせていこうとする方針は従来通りで変わりません。

2018年度の受賞者は工事部門での取り組みが多かったですが、それ以外の業務部門からも推薦が挙がってくれると嬉しいですね。

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AIに期待しすぎ。建設業を改善するのはAIではない、現場監督だ!
建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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