下請けでも「i-Construction大賞」を受賞できる
――2017年度と2018年度では、「i-Construction大賞」の制度に変更はあった?
国交省 2017年度は前年度に完成した直轄工事を対象にし、各地方整備局などからの推薦をもとに決めました。
2018年度は、同じく前年度に完成した直轄工事に加えて、測量などの業務、地方自治体の工事、業務を実施した団体、元請け工事以外の下請けや民間独自の取組みも表彰するために、産官学民から構成する「i-Construction推進コンソーシアム」会員も対象に拡大しました。
――なぜでしょう?
国交省 国交省が旗を振るだけでは「i-Construction」は普及しないからです。
IoT・人工知能(AI)などの革新的な技術の現場導入や、3次元データの活用などを進めるには、ゼネコンに限らず、土木技術以外の技術を保有するIT企業などの民間企業、産業界、地方自治体、学識経験者の協力が必要です。
i-Construction推進コンソーシアムでは、最新技術の現場導入のための新技術発掘や企業間連携促進、3次元データ利活用促進のためのデータ標準やオープンデータ化なども行っています。
――制度が変わった2018年度「i-Construction大賞」は、どんな企業が受賞した?
国交省 2018年度は計25団体が受賞し、そのうち加藤組(広島県三次市)、田中産業(新潟県上越市)、政工務店(佐賀県小城市)の3社が、国土交通大臣賞を受賞しました。
「i-Construction大賞」受賞者(2018年度)
〇直轄工事/業務部門
NO | 表彰の種類 | 業者名 | 工事/業務名 | 発注 地整等 |
1 | 国土交通大臣賞 | 株式会社加藤組 | 国道54号下布野歩道工事 | 中国 |
2 | 優秀賞 | 宮坂建設工業株式会社 | 一般国道274号 清水町 石山南改良工事 | 北海道 |
3 | 優秀賞 | 株式会社佐藤工務店 | 中野地区道路改良工事 | 東北 |
4 | 優秀賞 | 水郷建設株式会社 | H28西浦右岸大岩田地区築波浪対策護岸工事 | 関東 |
5 | 優秀賞 | 株式会社小島組 | H29 鹿島港外港地区中央防波堤付属施設築造工事 | 関東 |
6 | 優秀賞 | 国際測地株式会社 | 平成28年度上尾道路敷地調査他業務 | 関東 |
7 | 優秀賞 | 共和土木株式会社 | 平成29年度浦山縦工他工事 | 北陸 |
8 | 優秀賞 | 中日建設株式会社 | 平成29年度 庄内川下之一色しゅんせつ工事 | 中部 |
9 | 優秀賞 | 株式会社おかむら | 平成29年度 名古屋港庄内川泊地外浚渫工事 | 中部 |
10 | 優秀賞 | 株式会社吉川組 | 精華拡幅乾谷地区橋梁下部他工事 | 近畿 |
11 | 優秀賞 | 株式会社大竹組 | 平成28年度 大谷地区改良工事 | 四国 |
12 | 優秀賞 | 岡本建設株式会社 | 踊瀬地区道路改良工事 | 九州 |
13 | 優秀賞 | 株式会社大寛組 | 平成28年度港川地区改良外工事 | 沖縄 |
14 | 優秀賞 | 高砂熱工業株式会社 | 経済産業省総合庁舎別館改修 (16)機械設備その他工事 | 官庁営繕 |
〇地公体等工事/業務部門
NO | 表彰の種類 | 業者名 | 工事/業務名 | 発注者 |
15 | 国土交通大臣賞 | 田中産業株式会社 | 一般国道253号(三和安塚道路)本郷サーチャージ盛土(その2)工事 | 新潟県 |
16 | 優秀賞 | 戸田建設・鹿内組特定建設工事共同企業体 | 青森空港整備事業滑走路・誘導路改良工事 | 青森県 |
17 | 優秀賞 | 小川工業株式会社 | 社会資本整備総合交付金(河川) 工事(護岸工) | 埼玉県 |
18 | 優秀賞 | 株式会社正治組 | 平成28年度[第28-D7313-01号](一)静岡港韮山停車場線防災・安全交付金工事(長塚橋橋脚補強工) | 静岡県 |
19 | 優秀賞 | 八木建設株式会社 | H28阿土 南部健康運動公園 阿南・桑野他 陸上競技場整備工事(担い手確保型) | 徳島県 |
20 | 優秀賞 | 増崎建設株式会社 | 一般県道諫早外環状線道路改良工事(盛土工10) | 長崎県 |
〇i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門
NO | 表彰の種類 | 取組団体名 | 取組名 | 本社 所在地 |
21 | 国土交通大臣賞 | 株式会社政工務店 | 平成29年度における株式会社政工務店の取組 | 佐賀県 |
22 | 優秀賞 | ライト工業株式会社 | 道路盛土直下の地盤改良工事におけるICTの利活用 | 東京都 |
23 | 優秀賞 | 株式会社コイシ | UAVによる除草工事の出来形管理について | 大分県 |
24 | 優秀賞 | 一般社団法人Civilユーザ会 | 一般社団法人Civilユーザ会のBIM/CIM推進への取組み | 東京都 |
25 | 優秀賞 | フタバコンサルタント株式会社 | i-Constructionの取組み | 福島県 |
――この3社が国土交通大臣賞を受賞したポイントは?
国交省 加藤組では、施工管理業務を行っている社員の年齢構成が、20代が16%、30代が24%で、40代・50代・60代がそれぞれ20%となっています。
つまり、加藤組の全技術者のうち、40%が50代以上なんです。これから定年退職を迎える社員が多い一方、若手の技術者は深刻な採用難が続いていました。
そこで、加藤組ではICTにより楽しい現場を創造し、魅力ある建設業界を構築し、生産性向上や新規入職者の拡大につなげようとしています。
加藤組は建機メーカーと協力して、小規模で作業幅員が狭隘なため、一般的なICT建機では施工が物理的に不可能な歩道工事にも適用できる全国初の3Dガイダンス付きミニショベルを導入しました。
この創意工夫が、国土交通大臣賞を受賞したポイントです。
――田中産業と政工務店は?
国交省 田中産業は、法面整形にICTバックホウを用いて高さ管理を行ったことや、少ない建機で施工した点を評価しました。
また、政工務店では、ICT建機を積極的に導入し、社内外講習も幅広く実施した点を評価しました。
政工務店が請け負う工事は大部分が下請けですが、18台ものICT建機により業績を上げた新しいタイプの下請けです。まさに、「i-Construction」を自社内外で体現している建設会社と言ってもいいでしょう。
――「i-Construction」の普及推進のカギは、地方ゼネコンが握っている?
国交省 その通りです。2018年度から国交省直轄工事に加えて、地方自治体などの工事、業務も受賞対象としたのは、「i-Construction」の裾野を拡大するためには地方ゼネコンへの普及が重要であるとの認識からです。