アクションなくしてリアクションなし
前回の記事では、若手の仕事観アンケート調査結果をもとに、建コンで働く若手が悶々と仕事をしている様子、志向する働き方ややりがいある仕事と現状の仕事に大きなギャップがある様子を明らかになりました。
ですが、現状を嘆いてばかりいても何も変わりません。我々は、現状を正しく受け止め、どうすればモチベーション高く働くことができるのか、そのために我々は何をすべきなのか。そのことを考え、行動しなければなりません。
アクションしなければ、現状は何も変わりません。アクションしなければ、成功はありません(失敗もしませんが…)。成功している人は、必ずアクションをしています。
ということで、ここでは、2018年4月に建設コンサルタンツ協会に提言した「若手世代から建コン業界への10の提案と要望」をもとに、若手が思い描く業界のあるべき方向性と、その実現に向けたアクションのいくつかを紹介します。
社会的要請の変化に乗り遅れてはいけない
建コンは、戦後復興期に成立し、近年までのインフラ不足の時代において道路や橋、ダムといった社会インフラを「建設(=調査・計画・設計)」することで社会的要請に応えてきました。
しかし、現在のインフラ充足の時代においては、「建設」することが必ずしも社会的要請に応える行為だとは言い切れません。それは、一時期の公共事業悪玉論や土木バッシングといった厳しい世論が代弁してくれています。
また、最近の報道記事では、建コンの存在に対して「提案はするがその先の事業リスクはとらない。そんな提案にイマイチ信用が置けない」、「自らのリスクで投資して地域で事業を立ち上げた経験など皆無。これでは名ばかりコンサルタント」といった批判も見られます。
我々は、こうした批判を真摯に受け止め自戒しなければなりません(すべてを真に受ける必要はありませんが)。このことは、今の社会的要請と建コンの役割にギャップがあることを指摘してくれています。と同時に、建コンへの期待の裏返しともとることができます。
事業量をみても、建設行為のより上流側の政策提言や案件形成の部分、より下流側のオペレーションの部分で多く予算がついています。
建コンは、これまでの「建設」一辺倒のビジネスモデルから脱却し、複雑化・多様化した社会的要請に応えるような「建設+α」(=事業の多様化)のビジネスモデルへとシフトすべきではないでしょうか。
ビジネスモデルは「建設」から「建設+α」へ
また、「建設+α」へのチャレンジに対しては、PPP/PFI、コンセッション、O&M、指定管理、ソーシャルビジネス、クラウドファンディングなど多様な制度・仕組みが整備されてきており、時代も後押ししてくれています。
そしてなによりも、「社会的意義を感じたい」、「社会に認められる仕事をしたい」という若手世代の強い願いをかなえるためにも必要なのです。
こうした「建設+α」の流れは、徐々に業界内でも拡がりつつあり、決して夢物語ではありません。公園指定管理やレンタサイクル事業、観光事業など、建コン企業自らが出資し事業運営に乗り出している事例が増えてきています。
建コンの社会的使命は、「建設」することではありません。「社会を豊かにする」ことです。であれば、「建設」という行為は”手段”であり”目的”ではありません。
これまでは「社会を豊かにすること=建設」でしたが、これからは「社会を豊かにすること=建設+α」になるはずです。本質を捉えればシフトチェンジは当然のことなのです。
事業を多様化するなら、キャリアと働き方も多様化すべき
それでは、「建設+α」を目指す上で、建コンで働く技術者はどのようなキャリアを歩み、どのような働き方をすべきなのでしょうか?
これまでの技術者のキャリアは、「建設」という社会的要請に応えるために、国家資格である技術士を取得し、管理技術者になり業務を受注するというスペシャリストとしてのキャリアが一般的でした。というより、その単線的なキャリアしかありませんでした。
しかし「建設+α」の時代においては、スペシャリストだけでは不十分です。「建設+α」の時代のキャリアには、「技術士+α」の選択肢が必要です。
これからのキャリアは、スペシャリスト以外にも例えば、イントレプレナー/アントレプレナーやパラレルワーカー、フリーランス、ワークシェアなど、多様な選択肢にもとに自らのキャリアパスを思い描くべきです。
そして、会社は多様な人材を積極的に受け入れ、事業の多様化に対応すべきではないでしょうか。
技術者のキャリアの多様化
働き方においても、現状は極めて画一的です。
「専業」でないとダメなのか。「正社員」でないとダメなのか。「オフィス」で働かないとダメなのか。「9時始業」でないとダメなのか。「休日が日曜日」でないとダメなのか…など、現状の働き方に疑問を持つべきです。
例えば、週3日は会社で働き週2日は地域のNPOで働く。例えば、経験・能力を発揮できるプロジェクトを選別しプロジェクト単位で契約して働く。例えば、勤務時間の20%は興味関心ある研究に費やす。例えば、自宅近くのコワーキングスペースで働く。例えば、妻の子育てを手伝いながら在宅勤務する。例えば、通勤ラッシュを回避し楽な時間に通勤する。例えば、観光地の混んでいない平日に休暇をとる。
といった働き方はできないものでしょうか。
このような問題提起をしている本質的な目的は、何も働きやすい環境を作るべきだと主張したいからではありません。
多様なキャリア・働き方を受け入れ、多様な価値観を持った人材が育ち・集い(ダイバーシティの実現)、個々がフラットに議論することでイノベーションが生まれる。その結果として、社会に新たな価値を提供できる魅力的な業界になるというビジョンがあるからです。
多様性が生み出す効用
これこそが、「建設+α」の時代の社会的要請に応えるために、建コン業界が目指すべき姿なのではないでしょうか。
アクションの連鎖現象を拡大する
偉そうに語らせていただきましたが、冒頭に述べた通り、この内容は建設コンサルタンツ協会に提言したものです。このように業界へ問題提起することで、確かに若手の問題意識をメッセージとして伝えることはできたと思います。
しかし、それだけです。直接的かつ具体的に現状を変えるアクションにはなっていません。「問題提起するだけでは何も変わってないよ」なんて言われちゃうと、ぐうの音も出ません。
なので、若手の会では今、業界や企業を直接的かつ具体的に変える(=社会実装する)アクションにこだわって実践しています。その方法として、積極的に異業種企業とコラボし、そこから学びを得て、建コン業界に応用することに取り組んでいます。
その第一弾として、働き方先進企業であるサイボウズ株式会社と一緒に、「建コン働き方アイデアソン」という勉強会を開催しました(参加者約50名で、2018年10~12月にかけて合計3回開催)。
サイボウズのオフィスにて
勉強会では、サイボウズ社内で実践している制度・ツール・風土を紹介してもらい、建コンにどう応用できるか、問題・課題・対策をアイデア出しする形で進めました。
その期間中、グループウェア上で議論していると、とあるメンバーが自分の会社で提案したアクションが採用され、メンバーと共有しました。
そうしたところ、「うちの会社でもやってみよう」、「こうやればもっとうまくいくのではないか」などの議論がわき起こり、他のメンバーがそれぞれの会社で次々にアクションするという、アクションの連鎖現象が生まれました。
これだ!と思いました。
「1人だけでは、はじめの一歩を踏み出すことに躊躇してしまう。だが、同じ価値観を共有するコミュニティに属し、仲間のアクションや成功体験、失敗体験を共有することができれば、それが自信となり、各自がアクションを起こしやすくなる。その結果アクションの連鎖現象が生み出せるのではないか」
今、若手の会ではこうしたアクションの連鎖現象をより拡大するための仕掛けとして、入退会自由の無料オンラインサロン「建コンアップデート研究所(仮)」を立ち上げ活動しています。
アクション連鎖のプラットフォームの構図
一歩一歩は小さなことですが、その一歩が確実に会社、業界を変えています。
私は、その小さな一歩をどんどん積み重ねていきたい(できない理由だけを並べて、何もアクションしない人がたくさんいますから、余計にそう思います)。
社会実装の中でぶち当たる”若手ならではの壁”
社会実装する中では、新たな問題、壁にもぶち当たっています。若手ならではの壁です。
会社で具体的なアクションをするといっても、若手にその決定権はありません。会社から許可が下りなければ実装できません。そんな事例も多々あります。
しかし、そこでくじけない、あきらめないのが、熱量高いメンバーとつながっている強みです。失敗体験をメンバーで共有し、その解決策を議論するのです。
「個人で提案は難しいが、社内で同調するメンバーを複数集めて再度提案してはどうか」、「この資料では目的が見えにくいので、表現を変えたほうがよいのはないか」、「試行のほうが、本格導入より会社の許可が得やすいのではないか」などなど。
また、オンラインサロン以外でも、若手の会の活動で知り合いになったメンバーが、自社内の若手組織を引き連れて、会社単位で情報共有する動きも出てきつつあります。
そこでは、各社での制度や仕組み、社員の反応などについての情報交換をしています(もちろん情報開示できる範囲内で)。
これこそまさに、オープンイノベーションなのではないでしょうか。会社から個へパワーシフトしている昨今の情勢では、このように個人のつながりから新たな学びを得て、それを会社に還元するというボトムアップ型のアクションが、今後加速していくものと肌感覚で感じています。
若手の力で建コン業界をアップデートする
目まぐるしく変化するVUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代において、建コン業界をアップデートするには、業界内に閉じず異業種の先進事例を積極的に学び、それを建コン業界に応用していくことが必要です。
そして、こうしたアクションは情報感度が高く、フットワークが軽い若手世代こそが先導し、活躍する分野なのではないでしょうか。
若手の会に終わりはありません。将来の主役である若手の力で、建コン業界のビジネスモデルや働き方、キャリアを、今まで紡いできた歴史を大切にしつつも、最新のものに更新(=アップデート)していきたい。
そうした思いを持ち、アクションし続けることができれば、必ずや自分たちの世代で業界変革が成し遂げられると信じています。
施工管理技士です。率直にいって全部ではないですが、わからなくもないです。それに自身の考えをもっているのは好きです。ただ、技術士の方はやはり実務経験、および施工管理をもう少し学んだ方がいいと思います。個人的主観ですが、維持管理系の設計はあまりにいい加減なものや、物理的に不可能な設計が多すぎます。しわ寄せが、施工管理技士の技術者に集中している現状をしってもらいたいと思いました。ただ自分とは違う角度からの考えを知れるのでこれはこれでよかったです。次の記事もたのしみにしております。