瀬戸大橋にはすでに新幹線がビルトインされている
――45年以上前から基本計画はあるのに、未だ実現していないのはナゾです。
山本有二 瀬戸大橋には、建設当初から高速鉄道、つまり新幹線のための鉄道専用部がビルトインされています。このことがわれわれが新幹線整備に動かす大きな理由になっています。瀬戸大橋ができたのは30年前ですが、設計段階の50年前の時点で、当時の関係者が「四国に新幹線を走らせる」と考えていた証だからです。
先人たちは、四国のあり方、日本のあり方について、しっかり考えていたわけです。逆に言えば、その後のわれわれの世代は、それをちゃんと考えることを怠ってきたと言えます。
――四国新幹線整備による効果をどう整理していますか?
山本有二 現在、4県の県庁所在地にある駅から鉄道で新大阪駅に移動する場合、新幹線への乗換のため岡山駅まで在来線(特急)で移動する必要があります。
それと4県から新大阪まで新幹線で直通する場合の時間を比較すると、徳島が1時間35分(現状2時間53分)、高松が1時間15分(現状1時間44分)、松山が1時間38分(現状3時間30分)、高知が1時間31分(現状3時間15分)になります。いずれも時間短縮効果は明らかです。
鉄道局には「四国新幹線を整備したい」親心がある
ーーJR四国の経営も良くなるのでしょうか?
山本有二 そうですね。JR四国の資料によれば、2018年度決算は、収入は262億円、経費が397億円で、135億円の赤字でした。これをベースに新幹線が開業した場合、収入は640億円(380億円増)、経費は540億円(140億円増)で、一転して100億円の黒字となり、収支改善効果は240億円以上になるという試算が出ています。
――国土交通省鉄道局の動きは?
山本有二 国土交通省鉄道局は今、九州新幹線(西九州ルート)を巡る問題への対応に追われています。このルートは、博多〜長崎を結ぶルートとしてスタートしましたが、現在、佐賀県内の区間新鳥栖〜武雄温泉間の新幹線建設が着手できないまま止まっているんです。プロジェクトの優先順位があるので、佐賀県内の新幹線整備がストップしたままだと、四国新幹線になかなか手を付けられません。
でも、鉄道局は「四国新幹線を実現したい」という親心を持っています。四国新幹線の事業費は1.5兆円と試算されていますが、なんとかコストカットできないかということで、いろいろと調査を行いました。
その中で、複線ではなく単線で整備すれば、事業費を約5000億円削減できる調査結果が出ました。岡山から四国中央市までは複線ですが、ほかの路線は単線にするというわけです。5000億円削減すれば、B/Cは1.03より高くなります。
当初は在来線の高規格化(時速160km運転可能な規格)が四国には最適だと考えていました。新幹線のルート(経由地)や駅の設置位置によって四国内での政治争いや不毛な不要論が発生すること、「並行在来線経営分離問題」や「新幹線の有る無しによる地域内格差」を心配したからです。
けれど、(四国以外の地域にも)新たに新幹線を敷くのであれば、「線路が新たに敷設される」という特性を活用して沿線の地方空港経由にしていく。そして将来的に新幹線と地方空港・航空とを連携した交通体系を築くことができ、「地方同士」の交流を促進できます。そのような観点や、山陽新幹線のバイパス・予備機能を備える と言う観点から四国新幹線の必要性を感じるようになりました。
上記で申し上げた、新幹線による地域内格差等の問題を最小限にするためには、「新幹線と在来線がお互いに連携し、長所を組み合わせ・短所は補い合う」という考え方に基づいた経由地・駅の設定を心がけることが必要です。併せて、新幹線と在来線が互いに補い合うような列車の運行体系も必要です。この観点を踏まえた具体的な経由地・駅設定議論を今のうちからお願いします。
なぜかというと、それだけの「熱意」を国や他の地域に見せること、新幹線による地域内格差を最小限にしようとする姿勢を見せることで新幹線事業への不毛な批判や悪意を持ったマスコミによる悪質な印象操作をさせにくくするためです。
なお、
記事では高知方面は四国中央市から直接高知市方面に南下する経由地が出ていましたが、個人的には観音寺駅から阿波池田駅を経由し南下するルートを取ると、上記で申し上げた「新幹線と在来線が互いに補い合う関係」の鉄道路線網が出来上がります。
そして、最後、新幹線実現に最も大事なことを申し上げます。
それは、「他の新幹線誘致地域と協力して各地の新幹線を実現させていく・我が地域だけで無く日本全体の国益を考えた新幹線整備をしていく、という考え方で誘致活動を行なう」
というものです。この考え方に基づいた誘致活動は絶対に忘れないでください。
現在日本の各方面を見渡して見れば、鉄道が通っていない地方は過疎化が進む一方でとてもこの状況を放置すれば、ますます過疎化が進み、日本の国力の低下を招き、先進国からの転落は火を見るより明らかであり、其の上ますます少子化に拍車が掛かり今後の日本社会は暗い社会を迎える結果と成りますので、日本の発展に向けて四国は基より鉄道過疎地の山陰地方とも力を合わせ一日も早く実現させる様ご尽力下さい。
四国新幹線は、是非ともフル規格で実現していただきたい。また、北陸新幹線が東海道新幹線の代替機能を果たすように、四国新幹線は山陽新幹線の代替機能を発揮していただきたい。まず、東端の鳴門市から西端の八幡浜市間に基幹となる幹線を敷き、東は淡路島経由で神戸、大阪へ接続させ、西は佐田岬・国東半島経由で小倉、博多へ接続させてほしい。
この基幹となる幹線から枝分かれする形で4県の県庁所在市など主要駅に接続していただきたい。
本当に四国新幹線(一部単線区間含めた「フル規格」)を実現させたいなら、「整備計画」に格上げしたいなら、まずは
新幹線と在来線が連携・補い合いが出来るような駅の配置・列車の運行体系を築く姿勢
これを誘致関係者や対外的に明確に示すことです。
「並行在来線経営分離問題」(←地域内格差や対立のもと)を最小限にする見地を提唱すると不毛な反対や不要論を抑えられ、機運が高まるからです。
また、在来線もJRで運営できるような駅の位置や列車の運行体系・そして制度の模索する。並行在来線への支援として 駅の新設・より適した場所への移設・各停や快速の充実した運行が出来る費用補助、駅周辺に生活や仕事ができる施設の集約などが考えられます。
次に、
沿線空港を途中経由地に組み込み、新幹線は在来線と沿線空港を結びつけるようにルートをつくっていく。新幹線では地方同士の航空路線就航を促し、東京・大阪以外の地方同士での経済的結びつきを促す考えを内外に明確に訴えることです。
東京・大阪に事業拠点や生活拠点を置かなくても地元で生活できるような経済構造にするためには「地方同士」での経済活動が欠かせない。交通網が整っている地域同士でビジネスも起きる。
今のうちから在来線に乗り、理想的な駅の位置や列車運行体系を考え、提案できるようになってください。
最後に、一番大事なのは
山陰・奥羽・羽越・東九州など他の新幹線誘致地域と協力関係を築くこと、空港経由新幹線開業後はその地域同士の経済交流を図る見地を共有することです。
四国新幹線はまず県庁所在地を結ぶルートと岡山を繋いで、余裕ができたら後で関空がある大阪の方と、九州の方を結んでほしい。
リニアの開業に間に合わせると東京まで短時間で結ばれるから頑張ってほしい。