偏愛ポイントを思う存分語る “構造物偏愛のすすめ”
土木構造物に魅了されている人々が静かに増えている。一眼レフカメラを片手に構造物に足繁く通う。そこで撮られた写真には、その構造物の美しく壮大な姿が収められると同時に各々が偏愛しているポイントも映し出されている。
橋・ダム・ジャンクション・道路・下水道・・・構造物を偏愛する土木マニアに偏愛ポイントを思う存分語ってもらう好評連載企画!
「魅力ある高速道路」の条件
「魅力ある高速道路」とは何だろう?思うにそれは、第一に、「構造物」としての魅力―「カーブ」「直線」「車線の数」―があること。そして第二に、高速道路の「見え方」に魅力―「周囲の景色が美しい」「遮るものがない」「眺められる場所がある」―があることだ。仮に、第一の魅力が100%満たされていても、第二の魅力が10%も満たされなければ、「魅力ある高速道路」にはなれない。
無論、高速道路の場合、「分かりやすい花形」として、ジャンクションがあることは重々承知している。しかし、気づいてほしいのは、第一・第二の条件の多くが満たされた時にだけに現れる、この奇跡的な美しさだ!
ここには構造美がある。アップダウンは最小限にして、災害を生じさせぬよう山の斜面を削りすぎず、自然の地形に逆らいすぎぬようなカーブと距離感で、高速道路が周囲の景観を圧迫しすぎぬよう設計(デザイン)されている。また、麓の町から山を見上げれば、高速道路の存在が殆ど見当たらない箇所さえある。
現在、建設されている高速道路の多くは、見た目上は地形を無視するように、より山側をトンネルで貫き、橋で渡すという手段の繰り返しで建設されることが多い。ゆえにこのような規模の高速道路が、周囲の景観と調和するように建設されることは二度と見ることが出来ないかもしれない。ここには日本の稀有で貴重な財産がある。
魅力は、これに尽きない。私は、高速道路が使われているその姿にも惹かれている。多くの車が高速道路を滑らかに走行している姿は、ダムマニアがダムからの放流に感動するのと同様に、交通インフラとしての役目・機能を果たす姿ゆえに、心打たれるのだ。
注意せねばならないのは、こういった高速道路の美しさを鑑賞するための展望台というものは、ほぼ皆無だということだ。ゆえに、道路愛好家が自らの力と情熱で探し出さねばならない。そこで自分が探し出した展望台からの景色が、これらの写真である。東名高速、大井松田インターチェンジを出て車で10分ほど、神奈川県松田町~山北町の間に存在する、とあるスポットだ。
24時間。夜明けから巡航の昼間、逆光の夕暮れから日没のグラデーション。春夏秋冬、それぞれ魅力ある景色を楽しめる。ここならば、十数回通うことも苦痛にはならない。
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のがな あつし 文/写真
幹線国道や高速道路の架設工事などを対象とする「道路写真家」。2014年には初の個展を開催する一方で、「復興ドボク見学会」「道路Day」のイベントも主催する。TV番組「車あるんですけど…?」にも出演するなど多岐にわたり活躍。