ドローン測量の大きなハードル “対空標識の設置”とは?
――KLAU PPKシステムとは?
山内 オーストラリアのKLAU Geomatics社が開発した、UAVによる写真測量技術です。PPK(Post Processing Kinematic)と呼ばれる技術により、高精度な測量が可能となっています。この技術の日本語化と日本の測地系への変換機能の実装を弊社が手掛けています。
PPK とは、後処理キネマティック方式というもので、取得した情報を後処理することで対空標識(GCP)を使用せずに、XYZ方向±3cm以内の誤差に抑えた高精度な測量が可能になります。 これにより、 現場での対空標識の設置数を大幅に削減することができ、 現場作業の効率が大きく改善されます。
――対空標識とは?
山内 そもそもドローン測量では、撮影した写真に自機に搭載されたGPSで取得した位置情報をひも付けることで、座標データを持った写真を作成します。そして、その写真をSfM(Structure from Motion)と呼ばれる技術で、写真から対象の形状を復元する処理をすることで3Dモデルを構築するわけです。
ですが、大抵のドローンに搭載されているGPSでは、正確な位置情報を取得することができません。誤差にして、水平・垂直方向に5~10mほどのズレが生じます。このままでは精度の低い3Dモデルとなってしまいますよね。そのため、これまでは精度を高めるに測量士が従来の測量手法で座標を示し、マーカーとなる対空標識(GCP)を現場に設置し、これを基にドローンの位置情報を解析・補正する必要がありました。
この対空標識は、公共測量においては4haの測量ですと14点設置する必要があります。これまでドローン測量においては、この対空標識の設置作業がかなりの手間となっていて、広域な現場ではこの設置作業に1日掛かったりするんですね。また、山岳部や河川、港湾、被災地などの現場ですと、作業環境上、そもそも対空標識を設置すること自体が不可能だったりします。
つまり、せっかくドローンで作業効率化を図ろうとしているのに、本来必要のなかった別の労力が掛かるという本末転倒な状況だったんです。そのため、ドローン測量というのは、この対空標識の設置作業をいかに減らしていくのかが大きな課題として長らく圧し掛かっていたんです。
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国交省マニュアルに採用で、PPKは一般化するか?
――KLAU PPKでは、なぜ対空標識を設置しなくて済む?
山内 KLAU PPKでは、全国約1300箇所に設置されている、国土地理院が定める測量の基準点(電子基準点)の補正情報を元に自らの位置を補正し、限りなく誤差を抑えることが可能となります。そのため、現場での対空標識の設置が必要なくなるんです。
これを可能としているのが、まずカナダ NovAtel社の高精度なGNNS受信機を搭載している点にあります。また、シャッター信号の計測も高速で、GNSSを受信して記録するまで、タイムラグが1/1000秒となっています。これはシャッターを切ってから記録するまで、4m/秒の飛行速度ですとわずか4mmのズレとなります。
さらに、ドローンでは世界測地系(WGS84)に基づく緯度経度が使用されますが、KLAU PPKのソフト内では日本の測地系(JGD2011)に変換することが可能です。
この変換機能により、別ソフトを使用する手間がなくなり作業効率があがり、日本の地図上に基づく正確な位置情報を記録することができます。
最後に、弊社では高さ方向の精度も±3㎝とUAV測量の運用基準内に抑えるため、独自のレンズキャリブレーションを行っております。
レンズは個体ごとに歪みが異なりますので、製品毎に歪み情報を入手し補正する必要がございます。弊社では、保有しているフィールドに3級基準点を設置し検証点と使用しており、実際にフライトを行って歪み情報を取得、補正データを算出しご提供しております。
こういった、KLAU社が開発したユニットなどメカ部分と国の電子基準点の補正データ、更に弊社独自のレンズキャリブレーションとの合わせ技で、KLAU PPKは±3㎝を実現しております。
上原 KLAU PPKの後処理ソフトは、上から順にボタンを押していくだけで完了するようなシンプルなUIに設計しておりますので、現場の方でも使いやすくなっています。
2020年3月には、国土交通省の『空中写真測量を用いた出来形管理要領(土工編)(案)』の改定に伴い、KLAU PPKシステムが「カメラ位置を直接計測できる手法」の一つとして追記されたため、同システムを採用する場合には標定点の設置が義務ではなく任意となりました。
つまり、国からお墨付きをもらったわけですが、今後は公共工事をはじめ国内の様々な現場で、普及していくことに期待しています。
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