猫の”生態と行動”を意識した住まいづくり
――業界の動向は?
清水さん 近年の猫ブームもあり、ここ2〜3年の間に、大手のハウスメーカーが「猫と暮らす住宅」の企画を打ち出してきています。猫用品を作り始めた建材メーカーなども増えました。戸建てや賃貸住宅などの建築、不動産業界は人口が減っていく中での生き残り戦略として、ニッチな分野に進出しようという動きがあります。
ペットとの共生住宅以外にも、ピアノ演奏者やバイカー向けのマンションなどが事例にありますね。しかし昔から猫を飼っているから、猫好きだからと「キャットウォークを付ければ猫共生」と安易な考えで設計をしてしまう業者も増えてきています。
ハウスメーカーや工務店から「どう施工したらいいのか」といった相談や、セミナーの依頼なども増えています。セミナーや直接事務所に聞きに来た場合は、「猫に幸せになってほしい」という思いが第一にあるので、基本的なノウハウや猫の生態・行動はオープンで教えています。ニッチな分野で「私にしかできない」と抱え込めば、業界における猫専用住宅市場の広がりがありません。
――猫のための住環境を考える上で大切なことは?
清水さん 安心できる場所をつくるということです。人間でもそうですが、最終的に落ち着ける場所、定住できる場所が非常に大切だと思っています。また、猫が屋外で活動しているのと変わらないくらい、生き生きと活動できるようなつくりも、意識する必要があります。
私が影響を受けた事例として、北海道旭川市の旭山動物園があります。坂東園長とは知り合いなのですが、そこでは行動展示といって、限られた空間の中でも動物の生態を学んで、動物本来の行動ができるような生活環境になっているんです。
外にいる猫の場合半径200m~500mをハンティングテリトリーとして見廻ることを毎日しています。完全室内飼いの猫でも範囲は室内で狭くなりますが、室内のテリトリーを廻る行動をします。ですので家のつくりも一方通行だけではなく、キャットウォークや家具などを利用して廻れるようなつくりを意識するといいですね。
ペットを通したまちづくりを
――これから取り組んでみたいことは?
清水さん 住宅のみならずまちづくり全般に関わりたいと思い、様々なアプローチをしています。現在は大手企業が主導する次世代型都市構想や過疎対策の町興しなど様々な取り組みがあります。
これらに対して、自分の得意分野のペット関連で何か貢献できればと考えています。新しいシステムをつくる上で、老人や障害者、外国人、ペット、以上四つに対する配慮が見逃されがちですが、決して外してはいけないことだと思います。
とりわけペットは言葉を話せませんから、自分からどうしてほしいとは言えない存在です。環境的な影響を一番受けやすく、一番弱い立場のペットのことを考えて取り組めば、自ずとバリアフリーや化学物質汚染など、あらゆる諸問題への対策に波及し、人間の生活や地球環境もより良いものになるに違いありません。
――仕事をする上で心がけていることは?
清水さん 本心からやりたいことか、楽しいかどうかを重視しています。独立して仕事がなかった時期でも、継続して受託できる下請けなど自分の自由に使える時間がない仕事はあまりやらないようにしていました。後で本当に自分が手掛けたい仕事の依頼が来た時に、手一杯になってしまうからです。
猫関連の仕事をして最初は依頼もなく収入も少なかったですが、「楽しいから」「飼い主さんが喜んでくれるから」「何といっても猫が生き生きと生活してほしいから」という思いで続けてきました。今でこそ猫専門建築士として認知もされてきましたが、どんな仕事でもやり始めると深み・面白みがわかってくるんです。何かやりたいことを見つけて、続けていけるのは幸せなことですね。
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