自分たちの仕事は修繕ではなく予防だと思った
石川 「雨漏りが年に3回ぐらい漏って、今回、天井が落ちてきたので修理をお願いします」という電話がありました。それってこちらとしてはすごく衝撃で、年に3回漏って、さらに天井落ちるまでほっとくのが普通なのかと驚いたのを覚えています。自分の感覚なら1回雨漏りしたら即電話するものだと思っていました。
「1回なら生活に支障ないし、たいした雨漏りでもないから害も無いでしょ」という感じです。しかもそれが一人ではなく、他の人も、ほぼ皆さんがそんな感じで話されていたので、これはヤバいと思いました。
予防やメンテンナンスをしないと屋根は当然傷むので、早いですが10年に1回はメンテナンスをするのがこちらは普通だと思っています。ですが、一般の人は「30~40年はほったらかしで問題ないでしょ」となり、酷い雨漏りさえしなければOKというのが普通の感覚なのです。
これは自分たちが仕事したいということではなく、単純にお客様がそう思っていると、よからぬことばかりが起るのでお客様が損をします。なので、こういったこと(雨漏りはほっとかずに、1回目から対処することで結果的に家にかかるコストは抑えられるということ)は知っておくとお客様が得できる、というか損はしない。
――そうですよね。
石川 雨漏りしてから修理するよりも、自分で計画的にメンテナンスをして予防することが経済的にも安心です。だからその方がいいと思って、予防のことを伝えていこうと思いました。
お客様のニーズとして「雨漏り修理」があったとしても、現状だと「それってほんとに良いことしてるんだっけ?」と思います。少なくともお客様は損しているわけですから。
――そうですよね。それ以上の情報が無いとそういうものだろうと思います。
石川 業者側としても、お客様に「雨漏りしているので修理してください」っていわれて「じゃあ100万です」っていって「わかりました」って修理できれば楽ですよね。言って通るなら(業者が)ほんとに楽です。
ただ、全部が全部そうなっているとは言いませんが、業者の言いなりになってしまっているお客様にたいして業者が甘えている。変な話、災害待ちになっていて、災害がくると屋根屋が儲かるってなってしまうとダメで、そうなってしまうと誇れる仕事なんかじゃない。
災害による被害が起らせないようにしないといけなくて、それが仕事として美しいと個人的には思います。
――災害になって喜ぶなんて、屋根屋が存続している意味って何だったの?とか、そんなことのために仕事しているの?という感じになりますね。
石川 もちろん、災害復旧そのものを悪いことをしているなんて全く思っていません。他の地方からわざわざ来て、現場に事務所を構える屋根屋さんもいるので、そういうことを否定するわけではないです。
――そういうことではなく、もっと平時の時にできたことがあったってことですよね?
石川 できたと思っています。そういったことを地元でやっていくのが本来の屋根屋の仕事のあり方じゃないのかなと。
屋根屋を憧れの仕事にする
石川 色々考えた時に、屋根屋の仕事って何の意味があるのだろうって。この先、続けて良いのかみたいなことを考えていました。今でもこれっていう結論は出ていないですが、屋根を守ることはとても大きな意味があると思っています。
そもそも、一軒家の役割って家に雨漏りをさせないというのが一番大事な機能です。そしてそれを屋根が担っているということは、屋根が家を守っていることになり、では家が守るものは?となったら「その中の家族」を守っていることに繋がる。
その数が増え、街が安定して大きくなると考えたら、屋根屋の仕事というのは「街作り」をしているのかもしれないと思うようになりました。
――すごいですね。屋根をしっかり作ることで街を作っていると。
石川 街を作っているというかは、街を守っているということかもしれませんね。ただそういうことなのかなと思って、その時にやろうと思ったのが「屋根で困っている人の役に立つ」と「地元の役に立つ」という2本の柱です。
そうして地元で予防に取りかかった時に、例えば自分の地元の戸越銀座で、1,000戸の一軒家が、大きな台風で一件も被災しないとなったらそれは屋根屋として「最高の結果」です。それこそ誇れることではないかと思っています。
そしてそれを僕たちだけではなく、他の屋根屋さんもやってくれたらその屋根屋さんがいる町も被災しなくなる。それが、本来の屋根屋の仕事なのでは?ということを模索し続けています。
――なんかカッコイイですね(笑)
石川 (笑)。根本的な理由は「屋根屋カッコイイ」といわれたいと思っているだけです。
なんていうか、子どもから「お父さんって仕事何しているの?」って聞かれた時に「屋根屋」っていったらと「おお!すげーマジで!」みたいなことですね。儲かっているだけではなく、医者やIT関係の社長やっていますというレベルで屋根屋が認識されて欲しいと思っています。
そんな風になったら、例えば僕も三代目なので、四代目が自分の意思でやりたいといってくれるかもしれない。また、僕に限らず屋根屋の後継者問題はあるので、他でも「屋根屋の息子に生まれたなら超ラッキーだよね」ってなったらいいなと。
そんな個人の願望を叶えるためにやっているだけなので、全然すごいことではないと思います。
――共感して「俺らも街を作ろう・守ろう」と思ってもらえるかもしれませんよ?
石川 他の屋根屋の皆さんも、既に考えていると思いますので僕だけではないと思います。
※この記事は、『石川商店ブログ』の記事を再編集したものです。
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