非住宅にもCLTを推進へ
――御社の建築分野はマンションに強いイメージがあります。
高畑 「マンションが強い」というイメージになったのはバブル崩壊が転機です。バブル崩壊前は、マンションよりも法人営業が主流で、オフィスや倉庫建築を手掛けていました。バブル後は建築市場がシュリンクしたため、パイを確保するためには住宅分野に注力する必要があり、ピークは建築分野の8割が住宅でした。一方で、建築営業は7~8年前から事務所ビル、ホテル、倉庫、工場などの非住宅にもシフトしています。
――建設中の高齢者住宅にもCLTを使う動きがあるようですが。
高畑 兵庫県でシニアマンションを建設中で、販売も開始しています。この物件については、高齢者向け分譲マンションのパイオニアであり、近畿圏の半数以上のシェアがあるハイネスコーポレーション株式会社と共同で、新会社『マスターズコンフォート株式会社』を設立しました。
この物件は分譲住宅ですので将来的に瑕疵の問題が発生すると予想されますから、居室ではなく共用部分の一部でCLTを採用することを計画しています。新会社でのシニアマンションの開発は一号物件ですから、まずはこれを完成させて成功すれば、二号物件も木材の利活用も狙い、その際には使う範囲も拡大していきたいと考えています。
また、賃貸マンションは分譲と比較して将来的に瑕疵の問題は大きくないため、2021年2月に竣工した当社子会社が保有している賃貸マンションにMEC Industry社の配筋付製材型枠「MIデッキ」を導入していますが、賃貸系住宅の天井には今後も積極的に導入していきたいと思いますし、工場や倉庫などでも木材活用が進められるのではないかと検討しています。
――CLTはスパンをかなり飛ばせますから、工場に向いていますね。
高畑 CLTは板としても強く、鉄骨のブレースに代わるものとして、CLTを耐震壁に入れるほか、空間を飛ばすために屋根材・床材に使用するなどの試みもありますから、様々な使い道があります。
工場については、鉄骨造、CLTさらに木造トラスを組み込んだハイブリッド構造を検討しています。こうして構造を考えていると、ワクワク感がありますね。
三菱地所のMEC Industry社にも出資
――そんな中、三菱地所ら7社が出資した「MEC Industry社」にも参画していますが、その経緯は。
高畑 最初は、三菱地所が製材型枠の製品開発することになり、施工検討などのお手伝いをしていました。ちょうど同じタイミングで弊社が技術研究所建設を計画していた関係で、研究所の1階の天井部分、2階の床に「配筋付製材型枠」を実用化第一号として採用させていただくことになりました。
このような関係から、後日、新会社を設立するにあたりお声がけをいただきました。今後開発が予想される新建材について、当社の設計・施工物件にも取り入れて、利用拡大の側面からご協力できると考えたこと、また木造建築が今後とも増加するという当社の思いとも共通する点があり、将来的に木材の流通価格が下がるということにも共感し、新会社に出資しました。今回のCLTの材料も、出資会社の1社である山佐木材株式会社とMEC Industry社から仕入れています。

製材木板に鉄筋を配筋したコンクリート打設用の型枠・配筋付型枠MIデッキ

配筋付型枠 MIデッキの天井仕上げ
――こうしたお話を聞くと、全社的にイメージがガラリと一変しますね。
高畑 当社はまだ大型の土木構造物、建築であればマンション建築の色の濃い会社です。時代の急速な変化に合わせて、各ゼネコンも木構造の専任部署を立ち上げ、専従者を置くケースがかなり増えました。当社も体制整備を進めていますが、いまは助走段階であり、これから本格的に始動していきますのでご期待ください。
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