“暮らす人”全ての味方でありたい
設計の仕事をしていると、よその設計は当然気になります。良いところもそうですが、それ以上に「粗」を見つけ、探してしまいがちです。ついそれを口に出してしまうこともあり、それは私自身も大いに反省するところでもあります。
粗探しなんて、やり出したらキリがありません。ですが、他の設計が気になってしまうのは、職業柄しょうがないことだとも思っています。
しかし、その一方で、実際に設計したことも施工に関わったこともなく、かつ利用者でもない完全な部外者が、建築自体または業界に対して、あれやこれや悪口を言っているのをインターネット上で多く見かけます。
以前、『 インターネットは「愚痴のはけ口」ではない!建築業界の情報発信について考える 』という記事で、インターネットでの発信の危険性について書きましたが、それとは別に、Youtubeの中では、悲惨な事故や事件を紹介する動画が一定のジャンルとして認知され、高い再生数を誇り、多くの動画投稿者が投稿していたりします。
その中でも、建築に関する事故や事件など、センセーショナルな話題を紹介して、建築業界を非難、時に中傷めいたことを述べているものもあります。動画のコメント欄では、不特定多数の人が「やっぱり建築業界は信用できない」「プロの資格、プライドがない」などといった、業界を批判するコメントがあふれかえっています。
事件や事故は事実なので、しっかり反省していかなければいけませんが、批判のコメントを目にすると、気が滅入りそうになることもあります。そんな時は、リュウジさんのあの言葉を思い出すようにしています。
「だったらお前が作ればいいんじゃないのって、だけの話ですけどね。作んない人が言うんですよね、それ。いっつもそういうの否定する人って、作んない側の人なんですよ」
リュウジさんの動画に関していえば、「手抜き」と批判するのは、大体は実際に料理をしない、言ってみれば「部外者」です。実際に料理をしたことがないから、好き勝手なことが言えるのです。
本当に自分が目を向けるべき対象を考えれば、「部外者」の言葉はノイズにすらならない。この言葉がそういう気持ちにさせてくれました。
衣食住は生活に欠かせないものと前述しましたが、その大切な要素である「食」のトップランナーでもある彼の言葉は、「住」の分野に関わるうえでも共感でき、非常に学びがあるものでした。
規模は比較になりませんが、私自身もYoutube(おっちー一級建築士事務所)で建築をわかりやすく、より身近なものにすべく、発信する立場として勇気をもらっています。
リュウジさんはインタビューでこんなことも語っていました。
「僕は男性女性関係なく、台所に立つすべての人の味方であろうといつも思っています」
私たち建築に関わる人間も、”暮らす人”全ての味方でありたい。その自負を持って、これからも建築に関わっていきたいと思っています。