「ロハスの舗装」ってなに?
――「ロハスの舗装」の研究もやっているようですが。
前島さん 日本大学工学部では、「ロハス工学」を教育研究方針に掲げています。それでロハスに特化した舗装構造物をつくってみようということで、研究しているところです。
郡山市は盆地なので、夏は非常に暑く、冬は、雪はそれほど積もらないのですが、凍結します。道路凍結の防止は、雪を溶かすのに比べれば、より少ないエネルギーで済みます。融雪にも一定の効果が見込めます。
ロハスの舗装とは、屋外に設置したタンクの水を舗装内に循環させるという、シンプルなシステムです。その特長は、特殊な装置を必要とせずに、舗装に水を通すことで、低エネルギーかつ安価に凍結、融雪できる点にあります。夏場であれば、路面温度を低く抑えることができるので、歩行者にとっても優しい舗装になります。単純なシステムですが、実際に実験してみると、非常に良好な結果を得ることができました。
――すでに実装されているのですか?
前島さん まだ実装はされていませんが、福島県の飯舘村にある公民館のような場所で、試験的に運用しているところです。
――ロハスの舗装は、道路会社と共同で研究しているのでしょうか?
前島さん そうです。日本大学工学部とNIPPO、高田地研との共同研究です。ロハスの舗装の研究はもともと、ボクがNIPPOに在籍していたときに始めたものです。最初はNIPPOの社員として、ロハスの舗装の研究に関わっていました。大学に戻ってからも引き続き研究を行っているということです。
日本大学は、路面温度を評価したり、数値解析したりしながら、どういう温度で水を流すと効果的かなどについて分析しました。NIPPOや高田地研は、日本大学が行った分析をもとに、最適な舗装構造をどうつくるかについて検討しました。
「すぐに実務に使える研究」をしたい
――そのほかにはどのような研究をされているのですか?
前島さん 非破壊検査手法に関する研究も行っています。アスファルトは熱可塑性材料で、温めると柔らかくなり、冷やすと固くなります。そのため、気温が異なる夏と冬では、計測結果にばらつきが生じます。
これまでの検査装置は、アスファルト混合物の弾性波速度の影響を考慮していないからで、バラツキをなくすためには、温度変化に伴う弾性波特性を補正する必要があります。
研究では、実物大の舗装フィールドを設置し、健全な舗装からいくつかのコアを採取し、各温度の弾性波速度を測定するという実験を行いました。その結果、空港滑走路の場合、温度が10度のとき、弾性波速度は4000m/s程度ですが、温度が60度になると、1000m/s程度まで低下することがわかりました。その上で、実験結果をもとに評価式を構成し、路面温度と舗装内部温度の関係、各層の振動モードを考慮した精緻な評価モデルを構築しました。
――非常に実践的な研究をされているという印象を持ったのですが。
前島さん それはその通りです。ボクは「すぐに実務に使える」研究をしたいと考えてやっています。これは、NIPPOの研究所に2年間いた経験が非常に大きいと思っています。
――「実務で使える人材を育てたい」というお考えもあるのですか?
前島さん その通りです。そもそもボクが大学に戻った最も大きな理由は、「人を育てたい」からということでした。研究だけやるなら、NIPPOの研究所にいたと思います(笑)。
「珍しい研究者」として、舗装の魅力を発信していきたい
――今後の研究活動のビジョンは?
前島さん もともと橋梁やコンクリートを研究していた人間が、舗装分野に飛び込んだというのが、ボクの経歴です。ボクの得意分野を合わせたカタチになるのが、コンクリート舗装の研究ということになります。あと、橋梁の研究も引き続きやっています。
コンクリート舗装とアスファルト舗装の両方を得意とする研究者は、全国的にも少ないです。ボクはその両方に加えて橋梁も専門分野としています。この3つの分野を得意とする研究者は、かなり珍しいと思っています。そういう「珍しい研究者」として、今後も活躍していきたいと考えています。
――舗装のPRについてどうお考えですか?
前島さん 日本道路協会内部に、若手の舗装技術者が集まる「舗装未来検討会」という会議体が発足しました。ボクも、大学の研究者としては唯一、この検討会に参加しており、舗装の魅力発信ワーキンググループに入り、活動しているところです。このワーキンググループでは、舗装分野の担い手確保のためには、誰に向けてなにをどう情報発信していくかについて検討し、実行していくことを目的としています。
ボクとしては、まずは、舗装、道路、アスファルトという単語などに興味をもたせることが必要だと考えているところです。対象は大学生を想定しています。具体的には、講義で使う資料などに道路会社の企業名を大量に入れるということを実践しているところです(笑)。あとは、アスファルトに実際に触る実習を講義に入れるということもやっています。
一般的な舗装工事のイメージは、道路を通行止めにして、煙を立てながら、作業着を着た人が作業しているぐらいしかないと思います。実際はそうではなくて、もっと奥深い魅力があることを発信していきたいと考えています。
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