国道のメンテナンスに初チャレンジ
首都高のメンテナンスに特化した首都高技術が新たに設立されると、安中さんは転籍となり、引き続きメンテナンスの仕事に従事することになった。会社が徐々に成熟していくと国道の定期点検業務を手掛けるようになった。最初の国道業務は、常陸河川国道事務所の橋梁の定期点検だった。当時の社長から「金はかかってもいいから、とにかく高い品質を確保してくれ」と指示されたと言う。
この点検業務は、コンサルタント会社とJVで受注した。工期が非常に短かった。現場作業や報告書作成などは、首都高技術が担当したが、初めての経験だったので、手探り状態で業務に臨んだ。「とにかく工期が短いことと、初めての経験だったので夢中でやった」と言う。業務が完了するとコンサルさんから「お疲れさまでした。よくやりましたね」と声をかけられた。このとき、本当にホッとしたが、内心「首都高技術もやればできる」とも思ったと言う。
その後、首都高技術では、新たに点群データを活用した維持管理システムを構築するという構想が持ち上がり、開発が始まる。これが現在のインフラドクターだ。安中さんは、開発の立ち上げからメンバーに加わることになる。「新しいプロジェクトが立ち上がると、そこに飛び込まされてきた」と振り返る。
インデジ部はベンチャー企業みたいなもの
そんなキャリアを持つ安中さんは今年4月、首都高技術インデジ部の発足とともに初代部長に就任した。インデジ部というセクションについて、安中さんは「ベンチャー企業みたいなもの」と表現する。
「当社の一番の目的は、社会に貢献することだが、インフラドクターとインフラパトロールをビジネスとしても成功させなければいけない」からだ。
インフラDXはまだまだ黎明期
インフラドクターの主な販路は、道路、鉄道、空港、プラントだ。鉄道、空港については、東急株式会社と連携しながら業務拡大を図っている。今のところ、「鉄道がメインになりつつある」と言う。
ただ、コロナ禍によって鉄道会社の収益が落ち込んでいる中で、インフラドクターやインフラパトロールを採用してくれるかは不透明だ。この点、「(コロナ禍前より)消極的になっているのでは?」と憂慮する。とにかく、お客様のニーズに合致した技術開発をすることが重要だ。
「プラントにインフラドクター」と聞くと、少し奇異に感じられたが、「もともとプラントは3D設計することが当たり前の世界。若い頃が懐かしい」ということだ。プラントでは、膨大な3Dデータを扱っている。この3Dデータを管理する仕組みが欲しいというニーズがあり、とあるプラントエンジニアリング会社からインフラドクターに声を掛けて頂いた。現在、プラント用のシステム開発を共同で進めているそうだ。
「インフラDXといっても、まだまだ黎明期だと思う。インフラ事業者の多くは、デジタル化しなくても業務は回っている」と指摘する。
失敗を恐れず、チャレンジしていく
ただ、外販するうえでの大きな課題は「コスト」だ。営業先で「こんな高いシステムは入れられない」と難色を示される。特に地方では、維持管理にコストをかけられない事業者が多く、どんなに良いシステムでもコストが高いと使ってすらもらえない。
インデジ部の外販業務を軌道に乗せるうえで、カギになるのは、やはり人。スタッフだ。
「失敗を恐れず、好奇心を持ってチャレンジしてほしい。周りから『なんでそんなバカみたいなことをやっているんだ』と言われても、この仕事は柔軟な思考と発想力が必要。とにかく前へ、前へ。メゲないでほしい」とスタッフにエールを贈る。
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