ある一定の基準を満たす業種には、安全委員会・衛生委員会を設置する必要があります。両方を統合した安全衛生委員会を設置する場合も多く、従業員の健康管理を維持するうえで委員会による審議は非常に重要です。
この記事では、安全衛生委員会とは何か、設置する目的や審議内容、構成員などを解説します。委員会の設置は、労働安全衛生法により義務付けられており、違反すると罰則を科される可能性があるためしっかりと把握しておきましょう。
施工管理者を採用したいけど、どうしたらいいか分からない…[PR]
安全衛生委員会とは?
労働安全衛生法によって、一定基準を満たす会社は安全委員会と衛生委員会、または両者の機能を併せ持つ安全衛生委員会の設置が必要です。
安全委員会は、危険性の高い業種に設置する必要があり、危険防止や安全管理、労働災害対策に重点を置いています。
一方、衛生委員会は、従業員の健康維持のために設置されており、対象は全業種です。危険性の高い業種に関しては、衛生委員会に加えて安全委員会の設置が義務付けられており、さらに安全衛生委員会の設置も認められています。
安全衛生委員会をおこなう目的と機能
安全委員会、衛生委員会および両委員会を統合した安全衛生委員会の目的は、従業員の安全や健康を守るために必要な審議や調査です。安全衛生委員会の会議により、企業側の意識向上に加え、健康管理に関する問題点や対策への認識を一致させることができます。
健康状態が悪い従業員が増加すると、会社全体の生産性・モチベーションの低下、外部からの悪いイメージなどさまざまな影響を及ぼすでしょう。従業員を健康障害や危険から守るために効果的な取り組みを実施するには、各委員会の設置が非常に重要です。
安全衛生委員会の審議事項
安全衛生委員会では、従業員の危険や健康障害を防止すべく、さまざまな審議をおこないます。しかし、審議内容は自由に決められるわけではありません。安全衛生委員会の審議事項は、労働安全衛生規則により定められています。その内容を一部ご紹介します。
安全委員会
- 安全に関する規定の作成に関すること
- 危険性または有害性などの調査およびその結果に基づき講ずる措置のうち、安全に係るものに関すること
- 安全に関する計画の作成、実施、評価および改善に関すること
- 安全教育の実施計画の作成に関すること
衛生委員会
- 衛生に関する規定の作成に関すること
- 衛生に関する計画の作成、実施、評価および改善に関すること
- 衛生教育の実施計画の作成に関すること
- 定期健康診断などの結果に対する対策の樹立に関すること
- 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
- 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること
さらに、衛生委員会ではストレスチェックに関する調査審議もおこないます。その他、安全衛生委員会の審議事項についてより詳しく知りたい方は、厚生労働省のホームページをご参照ください。
安全衛生委員会のルール
安全衛生委員会には、以下のルールが設けられています。
- 毎月1回以上は委員会を開催する
- 委員会の内容を労働者に周知する
- 議事録を作成し、3年以上は保存する
災害時や緊急時の会議は、臨時開催も求められます。審議内容を労働者に周知する方法としては、掲示板や書面による配布など、労働者にわかりやすく伝わる工夫が必要です。
安全衛生委員会を設置しない場合
安全委員会・衛生委員会はともに、労働安全衛生法によって設置が義務づけられています。設置基準を満たしているにも関わらず設置しない場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。
設置に対して罰則はありますが、構成メンバーの選定や開催頻度については特に罰則はありません。しかし、不備が発覚すると労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があるため、各委員会を設置するだけでなく、きちんと機能させる必要があります。
安全委員会と衛生委員会の違い
安全委員会と衛生委員会は、どちらも労働災害防止のために設置されている点では同じです。しかし、設置基準や構成員などは異なります。
危険を伴う業種に設置する安全委員会と、すべての業種に設置する衛生委員会には、どのような違いがあるのでしょうか。両方の機能を併せ持つ安全衛生委員会を理解するためにも、安全委員会と衛生委員会の違いをきちんと把握しておきましょう。
安全委員会の設置基準
安全委員会の設置基準は、業種により人数が異なります。
従業員が50人以上で、次の業種に該当するもの
①林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、 金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、 港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
従業員が100人以上で、次の業種に該当するもの
②製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、 水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
以上が、安全委員会の設置が義務づけられている業種です。
衛生委員会の設置基準
衛生委員会の設置基準は、安全委員会と異なり業種が決まっておらず、従業員数が50名以上の場合に設置が必要です。衛生委員会と安全委員会の設置基準を満たす場合は、2つの委員会を設置しなければなりません。
安全委員会および衛生委員会の両方を設置しなければならない場合、それぞれの委員会を統合した安全衛生委員会を設置できます。
安全衛生委員会の構成員
安全委員会や衛生委員会の構成員は、労働安全衛生法により以下のように定められています。
- 安全委員会:総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者(1名)と安全管理や、安全に関する経験のある労働者
- 衛生委員会:総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者(1名)と衛生管理者、産業医、衛生に関する経験のある労働者
総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者以外の構成員は、企業側と労働者側(労働組合がある場合は組合からの推薦者、ない場合は従業員の過半数の代表による推薦者)が半数ずつになるよう選出しなければいけません。
安全衛生委員会を設置する流れ
労働安全衛生法により、安全委員会・衛生委員会の構成員は定められていますが、正しく選定できなくても罰則はありません。とはいえ、委員会を正しく機能させるには委員をきちんと選出する必要があります。
安全衛生委員会の構成員は、どのようにして選出されるのでしょうか。では、安全衛生委員会を設置する流れを紹介します。
安全衛生委員会設置の流れ
安全衛生委員会を効率よく設置するには、以下のような流れでおこなうと良いでしょう。
- 労働安全衛生法に基づき委員を選出
- 安全衛生委員会規程を作成
- 年間計画を立てる
- 委員会を開催
- 実施状況を確認
委員を選出する際、統括安全衛生管理者は議長の役割を担うため、他の構成員の意見を促し、まとめる能力がある人材が好ましいでしょう。また、職場で責任のある立場の人材を選任することで、委員会での決定事項を職場に広めやすいです。
安全衛生委員会での議題のマンネリ化を防ぐ工夫が大切
毎月開催する委員会では、次第に取り上げる議題がなくなり、マンネリ化する場合があります。安全委員会の目的や機能を十分に果たすためには、議題のマンネリ化を防ぐ工夫が大切です。
公的機関や民間企業では、健康経営のセミナーを開催している場合があるため、積極的に参加してみると会議のテーマが見つかるでしょう。
安全衛生委員会から職場改善を進めよう
この記事では、安全衛生委員会とは何か、設置する目的や審議内容、構成員などを解説しました。
委員会の審議を通し、職場環境を改善できれば、従業員の健康増進や労働災害の発生防止など、企業全体の生産性やモチベーションを上げる効果を期待できます。
委員会で審議した内容を従業員に伝えることは義務であり、職場環境を良くするために非常に重要です。