国会議員の中では、土木技術者の経験を生かして建設産業の発展に邁進する人物として異色な光を放つ足立敏之(あだちとしゆき)参議院議員。常に現場主義を貫き、見て、聴いたことを課題として整理し政策に反映。インフラ整備、災害対策に必要な予算確保の渦中には常に顔を覗かせる。足立議員に建設業の現状・課題を聞いた。
品確法と担い手3法の成立に寄与
――これまで建設産業のために、自ら取り組んできた政策を教えてください。
足立敏之参議 直接関わって成立させた主な法律としては▽公共工事品確法(議員立法)及び入札契約適正化法など新担い手3法(令和元年6月)▽都市再生法(令和2年6月)▽流域治水関連法(令和3年4月)▽長期優良住宅法(令和3年5月)―などで、建設・住宅産業関連の幅広い主要な分野の法律の成立に大きく貢献してきました。特に、品確法と新担い手3法については、建設産業が働きやすい産業として生まれ変わる大きな転換点になると言えます。
さらに設計労務単価や業務委託等技術者単価について、10年連続のアップに貢献しています。今後、岸田文雄内閣が所得倍増の取り組みを進めていることから、さらに建設産業の給料が向上するよう、様々な施策を組み合わせて取り組んで参りたいと考えています。
「公共工事品質確保に関する議員連盟」では、事務局長代理を務めており、建設産業に関係する様々な課題についてフォローを行っています。最近では、総合評価落札方式での賃上げ加点措置対応や建設資材等の高騰対策について、関係団体の皆さんのご意見を伺いながら、政府へ要望し、場合によっては直接交渉して具体的な対策の実現にこぎ着けています。
事業費確保で建設産業の所得改善
――公共事業費の現状はいかがでしょう。
足立敏之参議 日本の公共事業予算は、平成10年度がピークで、約15兆円程度ありましたが、政権交代に伴い激減し平成24年度には当初予算4.6兆円にまで下がりました。その後、アベノミクスで6兆円規模まで戻し、さらには平成30年度からの「防災・減災、国土強靱化3か年緊急対策」で7兆円規模まで回復をしています。
令和3年度からは「防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策」が始まり、流域治水対策、道路ネットワークの機能強化対策、鉄道・港湾等の耐災害性強化対策、集中的な老朽化対策などに重点的に取り組んで行くこととされており、公共投資は約8兆円規模にまで伸びています。脆弱な日本の貧弱なインフラを建て直し、さらに建設産業の皆さんの所得を改善していくためには、まだまだ増大させていくことが必要だと考えており、令和4年度にも大規模補正予算が必要であると主張しております。
適正な取引価格 民間にも波及
――高騰する建設資材が社会問題化していますが、どのような対策で臨まれているのでしょうか。
足立敏之参議 先月の参議院決算委員会での質疑では、政府が関係閣僚会議で「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を取りまとめたこと踏まえ、深刻さ増す建設産業や関連分野の現状に対する政府の現状認識と対策強化・徹底への取り組みを確認したところです。
公共工事の発注に当たっては、実態を的確に反映した予定価格を適正に定め、物価水準の変動や納期の遅れが生じたときは適切に設計変更を行うことが重要です。地方自治体等の発注工事についても、総合緊急対策を踏まえ、発注者らに対して取引価格を反映した適正な請負代金の設定、納期の実態を踏まえた適正な工期の確保を要請する文書を通知しており、引き続き様々な機会を通じて働きかけを行っています。
民間契約につきましては、公共工事と異なり、品確法などの法律の適用がなされないために”適正な価格転嫁が行われないのでは?”との懸念の声があります。このため昨年12月の「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化会議」において、国土交通大臣が民間発注者団体等に対して直接要請するとともに、その旨の周知徹底を行っています。
――高騰分が工事代金に対して、適正に反映するということでしょうか。
足立敏之参議 4月の総合経済対策に基づき、受・発注者間や元・下請間の契約における、いわゆるスライド条項等の適切な設定・運用や、締結済み契約についても適切な対応を図ることなどを民間発注者や建設業団体に対して要請したところです。具体的には、通常必要と認められる原価未満の金額を請負代金の額とする契約や、同様の著しく短い工期の請負契約締結は、建設業法に違反するおそれがあることも併せて周知徹底を図りました。
今後も価格転嫁相談などを受け付ける「建設業フォローアップ相談ダイヤル」を活用して、現場の実態に耳を傾け、業界者団体とも連携し、価格転嫁等が適切に行われるよう取り組んでいるところです。
特にアスファルト合材については、価格転嫁が適切になされることが重要となっています。このため、総合緊急対策に基づく要請に加えて、ストレートアスファルトなどの原材料費の上昇分を適切に価格に転嫁できるよう、高騰の状況に応じて、当事者間の協議の上、適正な取引価格を設定するなどの対応を図るよう、国土交通省と経済産業省の連名で公共、民間発注者や建設業者団体、アスファルト合材製造業界に対して周知しました。
――公共工事の適正化が牽引し、それを民間工事の是正につながると建設産業の課題解消にもなりますし、建設需要にも良い影響を与えそうですね。
足立敏之参議 令和3年度補正予算で創設した「こどもみらい住宅支援事業」を通じ、子育て世帯等による省エネ住宅関連投資の喚起を継続できるよう、令和4年度予備費等により600億円を措置し、本年10月末までとなっていた申請期限を令和5年3月末まで延長しました。加えて、建築物省エネ法等の改正法案では、住宅の省エネ改修に関し、住宅金融支援機構による低利融資制度を創設するほか、省エネ改修を円滑化するための形態規制の特例許可制度の導入等の措置を盛り込んでいるところです。これらの措置を通じ、民間住宅投資を後押しすることにより、経済回復の軌道を着実なものとしています。
私としては、これらの取り組みを国土交通省と連携を密にして、適宜指導するとともに、必要に応じて国会質問等で明らかにすることとしています。
入職促進には給与アップ、週休2日制
――建設産業の人材確保は喫緊の課題だとされています。どのような対策を打ち出されているのですか。
足立敏之参議 建設分野では、人材の確保が課題です。建設技能者をみると、60歳以上が26%と約4分の1。一方、29歳以下は全体の11.6%と、このままでは建設業は決して未来のある産業とは言えないと思います。文部科学省によると、平成23年度から令和2年度の10年間で、大学の土木建築工学分野の学科の学生数は約2,900人、高等専門学校の土木建築工学科などの学科で学ぶ学生数は約1,700人減少しているとのことです。土木の学生の減少は建設分野にとって深刻な問題です。文科省には学生の枠を拡大するよう求めています。
建設業に入職してくる若者を増やすためには、給与のアップと週休2日の推進などの処遇改善が不可欠です。工事の設計労務単価や測量設計業務などの技術者単価の設定について、10年連続でアップしてきており、かなり改善されてきています。今回の労務単価のアップに見合う給与アップ、これを経営者の皆様にしっかりお願いをしたいと思います。
私が係わりました品確法等新担い手3法に基づく工期の適正化、施工時期の平準化の推進などにより、週休2日の確保に向けた働き方改革を引き続き徹底していきたいと考えます。また、最近、若者が希望をもてる大規模プロジェクトが少なくなってきていると思いますので、それを動かすことができる環境整備も必要と考えています。
“土木技術者の代表”として活動
――災害対策については並々ならぬ努力をされていると聞いております。建設産業の展望も踏まえ、お考えをお願いします。
足立敏之参議 私は現場主義を基本として活動を進めており、災害が発生すると直ちに現場へ駆けつけ皆様の声を聞きながら、現場の状況の把握に努め、必要な政策や予算の確保を訴えるなど政府に働きかけを行い政策の実現に努めています。近年は、台風や集中豪雨、大規模地震など記録的な自然災害が各地で発生しています。昨年は自ら13県の被災地に伺いました。建設・住宅分野の制度づくりや予算獲得に向けて皆様からのご要望を伺ったうえで、政府への働きかけや国会で総理や大臣たちと議論を重ねて、政策実現につなげてきました。
私は建設省・国土交通省で土木の技術者として長年勤務をし、その経験を活かし、建設・住宅産業分野の代表として『建設産業の再生なくして日本の再生なし』を訴えてきました。脆弱な日本の国土を立て直し、貧弱な日本のインフラを立て直すために必要な制度や法律の策定に関わるとともに、公共事業予算の拡大に努めてきました。
今後も公共事業の実施や災害時の緊急対策を担当し、建設・住宅分野の担い手として活躍している建設産業の皆さんの給料アップや働き方改革に取り組み、明るく未来のある建設・住宅産業にすることに全力を尽くしていきたいと考えています。
足立敏之(あだちとしゆき)氏のプロフィール
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