コミュニケーションの達人Tさん
3人目は、現場に来るとずっと喋り倒しているTさん。仕事の話が20%、残り80%は世間話なので、職人さんにとってはたまに面倒なこともあるらしい(笑)。それでも気さくに声をかけながら現場を回る。当然、一服や昼ご飯なども一緒にするし、何やらいつも楽しそうな雰囲気だ。
「施工管理はどんな人が向いているのか?」という質問に対して、「コミュニケーションが取れる人」という回答をよく聞くが、これを体現したような人がTさんだ。
これは施工管理なのか?と思うこともあるが、確かに施工管理の実務とは少し違う。お喋りの目的は、「情報収集」だったり「信頼関係づくり」だったりするわけで、実はこのお喋りがピンチな時に役に立つものだ。
そもそも、職人の世界と施工管理の世界とでは流れる時間も違うし、現場で見ている視点も違う。同じ現場にいながら全然違う。例えば、最近で言えば、物価が高騰している状況だが、職人さんは材料費や資材、副資材費の高騰に嘆く。それでも職人は材料を買わなければ仕事ができない。
施工管理はそういう状況でも、本来なら1円でも発注金額を抑えたい。似ているようで対極にある二者。そこで必要になるのは、お互いに歩み寄っての交渉だ。それを円滑に進めるためには、日頃から「信頼関係づくり」のためのコミュニケーションが欠かせない。
また、物価高騰と言っても、「正しい情報収集」は一般ニュース、ネットニュースだけではない。結局、真実を掴むには不十分なので、ニュースを見た時は「へぇ。。。そうなんだぁ。。。」とアクビをしながら聞いているくらいで充分だろう(笑)。
私たちが一番知りたい真実は、自分たちの取引先に打撃が及んでいるか?ではないだろうか。取引業者にヒヤリングして、今どんな状態に陥っているのか?本当に影響を受けているのか?影響を受けているなら回復に向かっているのか?まだまだ天井が見えないのか?などリアルな声を生で聞いていくと、良くも悪くも世間のニュースと違っているところが見えてくる。
現場から情報収集するのが最も早く、しかも有益な情報であることは言うまでもない。Tさんは施工管理でありながら、”情報屋”として80%世間話、20%仕事話で大事な情報を収集し、会社の行く末を左右する情報提供と対策を常に社内に提示している。
施工管理がコミュニケーションを取るべき理由は他にも様々あるが、こういった視点も非常に重要だ。
自分の得意を伸ばし、個性ある施工管理者に
代表例として先輩3人を挙げたが、他にも、「労災事故ほどもったいないものはない」とKY運動に力を入れている施工管理者や、IT化で現場の効率化を図っている施工管理者など、施工管理の人たちは十人十色で、実に個性的だ。
もちろん得意不得意もある。ただ、やはりプロなわけで、施工管理の四大管理を疎かにしてはならない。不得意は克服して、基本的なことはしっかり身に付けたうえで、自分の強みを伸ばして特化していくことは施工管理として非常に大事だ。
全てパーフェクトを目指す必要はない。「あの人はここが少し弱いけど、あれはピカイチだよね!」と言われれば良いのだ。自分の得意なことがわからないという人もいるかもしれないが、施工管理は業務が幅広いので、きっと自分の強みを発揮して突出できる業務が見つかる。
自分が施工管理としてどんな風になっていきたいか、という目標を膨らまして日々の業務に勤めることで、施工管理の楽しさも変わってくるのだと私は信じている。