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「アメーバ経営」で、社員の経営者意識の醸成。稲盛和夫氏が地方建設業のアトツギに伝えた教え

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長井 雄一朗
公開日:2022.10.05
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左から、小柳建設株式会社の常務取締役・CSOの澁谷 高幸氏、総務部部長の月岡 良一氏、PR部部長の堂谷 紗希さん

左から、小柳建設株式会社の常務取締役・CSOの澁谷 高幸氏、総務部部長の月岡 良一氏、PR部部長の堂谷 紗希さん

目次
  1. 「会社にはフィロソフィーがなければダメだ」
  2. 1日8時間を濃密なものとし、生産性向上をする
  3. 女性事務員2名が土木技術者にジョブチェンジ
  4. 新潟の建設会会社初の「えるぼし・三つ星」を獲得
  5. 就労制度の向上で新卒採用にも好影響

京セラ創業者で、先日死去された稲盛和夫氏の『アメーバ経営』(日本経済新聞出版)は日本の経営者に与えた影響は非常に大きい。組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、独立採算にすることで、一人一人が採算を考える、柔軟な戦う組織をつくるというものだ。京セラはこれを実践していることで創業した1959年以降一度も赤字がない経営を行い、破綻した日本航空も見事再生させたことはよく知られている。

地方建設業の小柳建設株式会社の小柳卓蔵社長が代替わりするとき、前職で勤務していた金融業界と比較して、業務の属人化やアナログな業務フローにより、不安を抱いていたという。小柳社長は、自分は父のようなカリスマ性でけん引していくよりも自分自身に適した経営をしていきたいという思いがあり、多くの経営本を読み漁った結果、「アメーバ経営」に行き着いたという。稲盛和夫氏からも直接、経営の神髄を学び、現在の働き方改革(=DX )の土台となった。

今回、経営の根本にある「アメーバ経営」が小柳建設にどう活かされたか、具体事例を交えて、常務取締役・CSOの澁谷 高幸氏、総務部部長の月岡 良一氏、PR部部長の堂谷 紗希さんが語った。

「DXにいち早く取り組む者が勝利する」 小柳建設は”建設業界のゲームチェンジャー”となるか?

「会社にはフィロソフィーがなければダメだ」

――働き方を大胆に改革できた理由と背景からお願いします。

澁谷常務 以前は地方建設業にありがちで、すべての指示はトップダウンの会社でした。先代はカリスマ性のあるトップで、代替わりで小柳卓蔵社長が新たに就任しました。その際、自分は父ほどのカリスマ性はなく、前職が金融機関で建設業に深い知見がないことや自分自身に適した経営をしていきたいという思いと考えもあり、当時は経営に関する本を読み漁っておりました。

その際、京セラの創業者の稲盛和夫氏が編み出した経営手法「アメーバ経営」に関する書籍と出会い、部下の社員から意見を出してもらうボトムアップで経営を回すやり方であれば、自分に合っているのではないかと考え、「アメーバ経営」を導入しました。

すると、社内から先端的な意見が出て来るようになり、業務も効率的になり、社員の意欲も高まったことで経営や働き方の改革を大胆に展開できました。

小柳社長も、稲盛氏に直接指導を仰ぎたいということで、稲盛氏が創設された「盛和塾」に入会したのですが、一番印象に残ったご指導は「いい経営をするにはどうしたらよいのでしょうか」という問いに対し、「あなたの会社にはフィロソフィーはあるか?」と逆に問いかけられ、会社には哲学や思想が重要であることを学びました。

そして、創業者がつくった経営理念を、「事業を通じて人類・社会の進化・発展に貢献すると同時に、全従業員とその家族の物心両面の幸福を追求し、誇りをもって会社を後世に伝えるものとする」と現代語訳し、さらに会社哲学を作成し、「経営哲学手帳」にまとめることで、社内で価値観の共有ができました。

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1日8時間を濃密なものとし、生産性向上をする

――どのように働き方は変わっていったのでしょうか?

澁谷常務 「アメーバ経営」では、チームに分かれて仕事を進めていくのですが、その分母となるのが時間です。時間あたりでどれだけ成果や生産性を向上できたかがポイントとなるので、時間に対する価値観を高く置いています。

たとえば、法律関係の事柄で社員が悩んで時間を取られてしまうと、成果を上げることが難しくなります。法律関係の悩みは多岐にわたりますので、顧問弁護士に1時間無料で相談できる制度を設けました。また、体だけではなく心の健康診断も年に1回実施して、ケアをしています。すべては1日8時間をより濃いものとし、成果を上げてもらうことを主眼としています。

――「アメーバ経営」を行うと現場のありようも通常とは異なりそうですね。

堂谷部長  通常、建設現場では現場所長のほか、現場担当技術者など複数人で現場管理を行うわけですが、たとえ本人の作業が早めに完了しても現場で待機するのが一般的なスタイルです。ですが、アメーバ経営であれば、別の忙しい現場があった際にスムーズに応援に行くことができるので、現場の全体最適が可能になる”文化”が構築されていると考えています。

また、昨今、広まりを見せているDXについても、当社では単にIT化やデジタル化をするということではなく、「文化を変えること」と捉えています。今ある技術を活用して、働き方を改革し、より生産性の高い状態を、社員全員が理解し、実行していく姿を”DX”と呼んでいるわけです。デジタル技術は活用しつつも、紙やホワイトボートにメモし、ディスカッションしたほうが生産性が高い場合は、そちらを選択する場合もあります。それを含めてDXです。

もちろん、個々のデジタル化の取組みについては積極的に進めており、発注者との協議もオンラインで行っていますし、竣工検査も遠隔臨場で実施しています。当社が開発したソリューション「Holostruction(ホロストラクション)」や「Microsoft Teams」など各種サービスを用いて全5拠点をつなぎ、竣工検査を遠隔で完結した事例もあります。

「Holostruction(ホロストラクション)」を使って、竣工検査の遠隔臨場を実現

「Holostruction(ホロストラクション)」を使って、竣工検査の遠隔臨場を実現

安全管理についても、2018年からパトロールアプリやWEBカメラ活用によりパトロールの質と量を向上させることを目指してきました。コロナ禍以後、遠方の建設現場の安全パトロール実施が困難となりましたが、かねてからの取組みにより、遠隔での安全パトロールの効果も発揮しています。パトロール回数の37%増加、安全管理における移動時間の18%削減に加え、2021年度(2021年6月~2022年5月)には、業務災害における不休労災ゼロを達成しています。2022年4月には、建設業労働災害防止協会から新潟県内では2例目となるコスモス認定を受け、現場労働災害・事故ゼロに向けた安全管理体制を構築し、現場における危険源への対策の徹底を図っています。

女性事務員2名が土木技術者にジョブチェンジ

――今回、事務員2名が技術者にジョブチェンジされていますが、アメーバ経営の影響が大きいのでしょうか。

月岡部長 ええ。アメーバ経営によって、チャレンジする文化を醸成できたことが大きいととらえています。社員も自分自身の付加価値を高めていくために、できることを増やしていきたいという考えも持っています。

こうした背景のもと、数年前から女性社員の目線での衛生環境パトロールを展開していく中で、徐々に現場の環境が向上していくにつれ、「この環境であれば、私も現場で働いてみたい」と前向きに考える女性も出始めていました。

そこで会社側も前向きな社員のチャレンジを後押ししたところ、今回2名の女性事務員が、土木の女性技術者にジョブチェンジしました。2人とも、この春から現場代理人としてステップアップしています。

新潟の建設会会社初の「えるぼし・三つ星」を獲得

――女性が活躍できる企業を認定する、女性の活躍推進企業「えるぼし」の最高位・三つ星を獲得されていますね。

月岡部長 当時、新潟県内に認定を受けられている建設会社がいなかったのですが、昨年、新潟労働局から表彰を受け、2020年には新潟労働局から子育てサポート企業を認定する「くるみん」も認定され、もともと女性社員が働きやすい環境が整っていたこともあり、「えるぼし認定」の三つ星を獲得することができました。

――えるぼしの認定を受けるには、女性管理職比率や女性労働者の継続就業など高いハードルもありますが。

月岡部長 常時4~5名は管理職に女性がいたので、問題ありませんでした。アメーバ経営では実力主義が原則です。年功や経歴ではなく社員の持っている人格・能力をベースにすべての方にチャレンジする場、管理職の道が開かれているんです。

澁谷常務 今はジェンダーの時代ですから、その仕事をやりたい、あるいはやり遂げたいと意欲を持ち、実力のある方にはポストに入っていただき、チカラをつけてもらうことが望ましいかたちだと思います。実力のある社員が多くいる一方、ポストが不足しているので、今後はより部署を細かくしていきたいとも考えています。

月岡部長 男性の育休取得率についても、小柳社長が人事部長をつとめていた際、子どもを育てる社員が利用できる子の看護休暇を法定以上の有給としており、この看護休暇の実績が積みあがっていたことも大きいですね。また、当社は2021年6月に株式会社ワーク・ライフバランスが提唱する「男性育休100%宣言」への賛同を表明し、トップのメッセージもしっかりと社員に浸透しています。

過去1年間での男性育児休業取得期間は、最低でも2週間、最長で3週間です。3週間の育児休業を取得した社員の中には、現場代理人もいました。

就労制度の向上で新卒採用にも好影響

――一連の就労制度は、採用にも良い影響がありますか?

堂谷部長 ええ。女性活躍、有休取得率、年収アップなどは新卒者が強い関心を抱いている項目ですから。また、当社は、「変化を楽しもう。」というコーポレートメッセージがあるので、それに共感してくれる方も多いです。

また、採用手法についても、リアルで合同説明会を行うことが一般的だったところを、フルオンラインにうまくチェンジすることができました。このおかげで、採用人数も県外からの学生も含めて増えています。

SNSはこれから加速してチカラを入れていきたいです。昨年からインターン生からの意見を受けてTwitterの運用を始め、YouTubeにも注力しています。説明会はリアルでもオンラインでも時間が決まっていることが一般的ですが、学生からの視点では時間もしばられますし、ストレスになる欠点もあります。そこで、会社の紹介、理念、仕事の内容、先輩社員に聞くことをYouTubeで流し、YouTube上から会社説明会に参加できる仕組みをつくっております。

【初公開】新入社員研修2022~受講者からのインタビューあり~ / YouTube(小柳建設)

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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