大規模なプロジェクトは作業工程や進捗管理が複雑になります。ひとつの工程の遅れが、プロジェクト全体に影響を与えてしまうケースもあります。
そんな複雑なプロジェクトの管理に向いている手法がPERT図です。今回は、PERT図の構成要素や使い方について解説していきます。
PERT図(パート図)とは
プロジェクトの工程経路や工数を図式化して、計画を立てる手法のひとつがPERT図(Program Evaluation and Review Technique)です。
複数の工程が入り乱れるプロジェクトでは、ひとつの工程が遅れると、その後すべての予定が遅れてしまう可能性もあります。プロジェクトの中のポイントとなる工程を把握して、最適なプロジェクト管理に活用できる手法がPERT図です。
ここでは、PERT図の特徴について解説していきます。
PERT図の基本形
PERT図は工程を四角形で書き、四角形を矢印で結んで流れを表します。工程には所要工数や納期といった時間に関わる情報も加えます。
以下は、チャーハンの作り方をPERT図で作成したものです。卵関連とごはん関連、具関連の3つの工程を並列して行うことがわかります。また、どの工程がどの段階までに終わっていないといけないのかもわかります。

チャーハンの作り方をPERT図で作成したもの
必要工程や工数を確認できる
チャーハンの作り方の図で示したように、プロジェクトの工程が矢印で示されているため、必要な工程や全体の流れが把握できます。また、所要工数も記載することで、より視覚的にプロジェクトの流れが把握できるようになります。
ただし、あくまでもネットワーク図としての表現になるため、各工程の進捗状況を把握できるわけではありません。進捗状況は別の方法で把握する必要があります。
進捗管理のポイントを把握する手法
PERT図の特徴は、プロジェクトを進めるうえでポイントになる工程や作業開始時刻を把握できることです。工程の経路とともに、工程ごとの所要工数がわかるため、ポイントになる工程が把握できます。
また、所要工数から作業開始時刻を算出できます。そのため複雑なプロジェクトであっても、最適な工程を導き出すことが可能です。
ガントチャートとの違いは
プロジェクト管理でよく使われる手法のひとつに、ガントチャートがあります。PERT図とガントチャートでは図式が異なり、把握できるものも違います。
ガントチャートは、棒グラフで各工程の時間を表すため、進捗状況の確認ができます。しかし、工程経路は図になっていないことから、工程の関係性を把握することはできません。
PERT図では工程の流れを、ガントチャートでは進捗状況を把握するというように、2つの手法を使い分けることで精度がより上がります。
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PERT図の構成要素
複雑なプロジェクトでは、ひとつの工程が遅れることで、他の工程に影響を及ぼすことがあります。納期までにすべての工程を終わらせるためには、以下の4つの構成要素を把握することが重要です。
- 最早結合点時刻
- 最遅結合点時刻
- 余裕日数
- クリティカルパス
構成要素を把握することで、重点的に進捗管理が必要な工程がみえてきます。ここでは、それぞれの構成要素について詳しく解説していきます。
最も早く作業を開始するタイミング
最も早く作業を開始することができるタイミングのことを、最早結合点時刻と言います。最早結合点時刻を知ることで、最短のプロジェクト完了日を把握できます。
最早結合点時刻の算出方法は、ひとつ前の工程の最早結合点時刻+所要工数です。
例えば、ある工程の最早結合点時刻が10/21で所要工数が2日とします。その場合、その次の工程の最早結合点時刻は10/23です。
最も遅く作業を開始するタイミング
最も遅く作業を開始するタイミングのことを、最遅結合点時刻と言います。最遅結合点時刻を知ることで、納期に間に合うギリギリの作業開始時刻を把握できます。最遅結合点時刻に作業開始が遅れてしまった場合は、納期に間に合いません。
最遅結合点時刻の算出方法は、ひとつ先の最遅結合点時刻-所要工数です。
例えば、ある工程の最遅結合点時刻が10/23で所要工数が3日とします。その場合、前工程の最遅結合点時刻は10/20です。最終工程の最遅結合点時刻は、納期-最終工程の所要工数で算出します。
どれだけ日数に余裕があるか明確化
各工程が持っている作業開始までの余白時間のことを、余裕日数と言います。ビジネスシーンにおいては、バッファと呼ばれることも多いです。最早結合点時刻と最遅結合点時刻の差が余裕日数です。
例えば、ある工程の最早結合点時刻が10/20、最遅結合点時刻が10/23とします。その場合、余裕日数は3日です。最早結合点時刻で作業開始できた場合、作業完了が3日遅れても納期には間に合うことになります。しかし、最早結合点時刻が遅れるほど、余裕日数は減っていくため注意が必要です。
プロジェクトに影響を与えるクリティカルパス
プロジェクトの中で、最も工数が掛かる工程経路かつ、他の工程を短縮してもプロジェクトが先に進めない工程経路のことをクリティカルパスと言います。つまり、クリティカルパスに該当する工程の所要工数の合計が、プロジェクトの全体工数です。
クリティカルパスとなる工程経路が遅れると他の工程が先に進めないため、プロジェクト全体の進捗が遅れます。そのため、クリティカルパスに該当する工程には余裕日数がありません。
PERT図の注意点
PERT図は、プロジェクトの工程や工数を把握することができる手法です。ただし、PERT図に工程や工数を書くだけでは複雑な進捗管理はできません。
作業が遅れてはいけないポイントや必要な日数、そして工程の順番を考えることで、はじめてPERT図を活用したことになります。
ここでは、PERT図を活用してプロジェクト管理をする際の注意点について解説していきます。
遅れてはいけないポイントに注意
PERT図の構成要素のひとつ、クリティカルパスを把握し、該当する工程を重点的に配慮することがプロジェクト管理の重要なポイントです。
クリティカルパスに該当する工程が遅れることで、プロジェクト全体の進捗が遅れます。逆に言えば、クリティカルパスさえ押さえておけば、プロジェクトが遅れる可能性は少ないとも言えます。
ただし、クリティカルパスは1個とは限りません。複雑なプロジェクトであるほど、クリティカルパスの数は増加します。クリティカルパスに該当する工程に関しては、人選やリソースを配慮することが、複雑なプロジェクトを管理するポイントと言えます。
必要な日数や工程の順番に注意
PERT図に記載した所要工数が間違っていた場合、プロジェクト管理は困難です。所要工数については、経験だけでなく過去の実績を基に算出し、現実との乖離が少なくなるように気を付けましょう。
また、工程の順番や関係性にも注意してください。これを間違った場合、特定したクリティカルパスも間違うことになり、プロジェクトの進捗が遅れることにつながります。マニュアルの確認やシミュレーションを実施するなど、しっかり確認しましょう。
PERT図を使って複雑なプロジェクトを管理しよう
PERT図はポイントになる工程や必要工数を把握できるため、複雑なプロジェクト管理に有効な手法です。
ただし、PERT図を作れば管理がうまくいくわけではありません。PERT図を基に重要な工程を押さえ、その工程に対して対策を打つことで、複雑なプロジェクトを管理することができます。
まずは、単純なプロジェクトからPERT図を使用して管理を行い、PERT図に慣れるところからはじめると良いでしょう。